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カモとねぎ

1968年、東宝、松木ひろし+田波靖男脚本、谷口千吉監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

飛んでいるカモと、大きな手をデザイン化したアニメ仕立てのタイトルがまず軽妙。

競艇場の海の中、アクアラング姿の男がレース直前のボートのスクリューを細工している。
海上には中年男が一人乗った漁船が一隻。
双眼鏡で競艇場の客席にいる一人の男を覗いて、無線で連絡している。
客席の男は指示された通りの券を買って、見事適中、300万円の賞金を受け取るのだった。

三人の男達は詐欺の仲間であった。

中年男は、マンションで一人贅沢な暮らしをしているキャップこと石黒信吉(森雅之)。
残りの二人は、そんなキャップに使われている女好きの久平(高島忠夫)と、機械いじりは好きだが女嫌いの洋介(砂塚秀夫)であった。

手下の二人は打ち合わせ通り、手に入れたばかりの300万入りの鞄を持って、先に帰宅していたキャップのマンションへ戻って来るが、開けてビックリ、鞄の中身は若い女性の服にすり代わっていた。

久平らはすぐに、競艇場を出たところで洋介に近づいてきた怪しい女の仕業に違いないと察しをつける。
洋服に付いていた店の名前から、彼女の正体は、ぼったくりキャバレーに勤めている麻美(緑魔子)と判明。
さっそく彼女のアパートを突き止めた二人は、彼女をキャップのマンションへ連れて来る。

女に事情を問いただすと、警察に留置されていた夫の保釈金としてすでに300万は使ってしまい、手元にはもうない上に、保釈された夫は他の女といなくなってしまったというのであった。

その言葉をにわかには信じられない三人は、彼女をキャップの部屋に軟禁する事になるが、彼女の方から、自分も多少は腕に覚えがあるので仲間に入れてくれと言い出す。

さらに、彼女は同じ部屋に住むようになったキャップを誘惑しようとするのだが、キャップは何故か、長い髪の女性にしか興味を示さず、ショートへヤーの麻美には目をくれようともしなかった。

そんな麻美が耳にしたのは、千葉のある東西油脂という会社の敷地内に不発弾が埋まっているという噂であった。
その情報を元に、キャップは会社内の金庫から大金を奪う計画を考案、さっそく現地に向い作戦を決行するが、意外にも金庫内には大した金は入っていなかった。

その代わり、金庫から発見したのは、自社の公害の事実を隠ぺいする資料と、アメリカからの依頼を受け、秘かにベトナム戦争用のナパーム弾を製造している事を示す秘密書類であった。

キャップは、この書類を元に、東西油脂会社の社長(東野英治郎)を脅迫する作戦を実行する事にするのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「スパイ大作戦」や「ルパン三世」などを彷彿とさせる詐欺&犯罪コメディ。

何といっても、名優、森雅之がこうした軽いタッチの娯楽作品に出ている事自体に驚かされる。
基本的には、終始、渋い中年男という設定ではあるが、劇中、色々、変装して別人に成り済ますというサービスを見せてくれる。

時代を反映した「公害問題」「ベトナム戦争特需」「ピンク映画と風紀問題」など、社会風刺ネタを元に話が組み立てられているのが特長か。

脇役陣も多彩で、東西油脂の専務役で今や人間国宝の桂米朝師匠、公害に苦しむ親の面倒を見る健気な娘に桜井浩子(「ウルトラマン」のフジ隊員)、麻美が勤めていたキャバレーの支配人に藤村有弘、ボーイに吉本新喜劇の桑原和男、キャバレーの歌手にロミ山田、キャップに詐欺用の小道具類を貸し与えている怪し気な男に小沢昭一、そして、若々しい山岡久乃が地域の風紀運動に熱心な堅物の女性を演じて笑わせてくれる。

騙し、騙され…と、この手の映画のパターン通りの展開ではあるが、最後には大人の映画らしく、なかなか洒落たエンディングになっているのが見所である。