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風林火山

1969年、三船プロダクション、橋本忍+国弘威雄脚本、稲垣浩監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

同じ浪人仲間から、いつも金をせびりに来られていた山本勘助(三船敏郎)は、その相手に、武田晴信(中村錦之助)を補佐する板垣信方(中村翫右衛門)を襲う芝居をしないかと持ちかける。

勘助本人がその場に助けにかけ参じて、信方に取り入ろうとする作戦と気付いた浪人ものは金になると踏んで承知するが、現場では、口封じのため、勘助から無惨にも斬り殺されてしまうのだった。

天文12年(1543)春、無事、信方の家臣となっていた勘助は、駿府から甲斐の国に単身やって来る。
彼が立ち寄ったのは一件の農家。
そこの主人は、後に勘助の家来となる、槍持ちの畑中武平(緒方拳)であった。

初対面の晴信にもその大いなる野望と、明晰な頭脳を気に入られ、さっそく勘助は武田家に召し抱えられる事になる。

天文13年、晴信は諏訪へ進出をはかる。
しかし、途中の御射山にて、勘助はすでに我が方は勝ったも同然、今こそ、自分が晴信の義兄弟関係に当たる諏訪頼茂(平田昭彦)と和議を結ぶべく使者となるといい、相手方の城へ出向いて行く。

そして、無事、和議は成立。
その城内で、勘助は頼茂の美しき娘、由布姫(佐久間良子)を見初めるのだった。

しかし、勘助は、その後、度々武田家を訪れるようになる頼茂を晴信と相談し暗殺してしまう。

さらに、諏訪の城に攻め入った際、自害せずに生き残っていた由布姫を武田の館に連れ帰って来る。

勘助の野望は、諏訪と武田の両者の血を引く後継ぎの誕生であった。
父殺しの相手の妾になる事などできぬと、最初は強く拒否した由布姫であったが、結局、恥辱に耐え、生き残る事を選択した彼女は、妊り、後に勝頼(中村勘九郎)を出産する。

その誕生を、誰よりも喜んだのは勘助であった。
彼は、勝頼の本当の父親は自分だと言い放つ。
彼の野心の結晶であったからだ。
由布姫も、そんな勘助に独特の感情を抱くようになって行く。

やがて、天分14年、武田軍は笠原清重(月形龍之介)の戸石城を攻め始める。
勘助の野望は、やがては越後も獲得し、日本海から大平洋に繋がる大きな国を建設する夢になっていく。

天文20年、晴信のあまりの女関係のだらしなさを憂えた勘助の進言により、晴信は頭を丸め、信玄と戒名する。

一方、越後の長尾景虎も同じように入道となり、上杉謙信(石原裕次郎)と名前を変えていた。

信玄と謙信は、やがて雌雄を決する場所となる川中島の決戦に立ち向かうべく、互いに時を待つ事になるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

途中休憩を挟み、3時間近い大長編になっている。

別会社のスタ-が共演できなかった五社協定に風穴を開けるように作られた「黒部の太陽」(1968)に次ぐ、独立プロダクション制作の大作である。

「黒部〜」で三船と共演した裕次郎は、本作では特別ゲスト扱いだったのか、謙信役で登場するもののセリフなどは一切ない。

大作らしく、多くの俳優が出演しているが、武田信茂役の田村正和などは、よほど意識して観ないと分からない程、今とは印象が違っている。

有望な若手だった頃の緒方拳が、どこかひょうきんな槍持ちという役所を演じていたり、太り気味で声変わり前の勘九郎が、子供ながら見事なセリフ廻しを披露するのが、今となっては貴重な映像というべきだろう。

「スターウォーズ/エピソード1」の戦闘シーンなどには、一般的に黒澤の「影武者」の影響があるといわれているが、同じ素材を扱っているとはいえ、本作の方がイメージは近いように感じる。

なかなか見ごたえ感のある作品である。