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エノケンのどんぐり頓兵衛

1936年、P.C.L.、波島貞原作、江口又吉脚色、山本嘉次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

蝦蟇の油売りを熱演するどんぐり頓兵衛(榎本健一)、しかし、膏薬を買ったのはサクラで仕込んだ仲間ばかり。

さっぱり売れない商売に方向転換をはかった頓兵衛、今度は、長い刀を一瞬にして引き抜く技や、南蛮渡来の唐金をその長刀でまっぷたつに斬ってみせるという見せ物を始める。
唐金とは、最初から二つに割れた瀬戸物である。

その見せ物芝居の腕を本物と勘違いして、杉平藩で召し抱えたいと頓兵衛を誘いに来たのが、鬼熊八十郎(如月寛多)。

早速、二人の子分(二村定一、田島辰夫)と一緒に、城で侍達相手に大ぼらを吹き捲くる頓兵衛。

その時、離れにいたのが、家老の美しい娘、梢(高尾光子)であった。
彼女は、乳母のお玉の方(清川虹子)に問われるまま、恋する相手がいる事を打ち明けるのだった。

彼女が指差す先には頓兵衛と城の侍達。
しかし、お玉の方は、梢の示した相手を頓兵衛と勘違いしてしまう。
気を利かしたつもりでお玉の方が連れてきた頓兵衛に、障子越しに相手も確かめず、うっかり付け文を渡してしまった梢。

その後、梢の本当の相手、宮沢文之丞相手に剣の勝負をさせられた頓兵衛は、瞬時に本当の実力がばれてしまい、そのまま城の外に追放に…。

しかし、20年間、一度も女にモテた事がなかったのが自慢だった頓兵衛は、梢からもらった付け文を真に受けて、一人城に忍び込むが、当の梢はおろか、父である家老にまで相手にされない事からもみ合いになり、家老は、自ら抜いた刀で自身を傷つけ死んでしまう。

城主殺しの汚名を着せられた頓兵衛は、スタコラ国を逃げ出した後、遠州屋という旅籠で、生き神様と名乗って、今度は怪し気な宗教を始める。

そんな頓兵衛を、今度は顔が売り二つの殿様、出目井玉ノ助と間違った家臣達が別の城へと連れて行ってしまう…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

唄が満載、時代劇オペレッタともいうべき作品になっている。
広い草原に散らばった幾組みもの若い男女が相合い傘で歌うシーンは、さながら海外のミュージカルシーンのよう。

後半は、エノケンの二役パターンで見せる。
合成もあるが、二人のエノケン殿様がくんずほぐれず取っ組み合うシーンは見事というしかない。(一人は、そっくりさんだと思う)

頓兵衛を父の仇と追い掛けてきた梢と文之丞、目指す頓兵衛に再会し、往来のまん中で衆人監視の中、仇討ちを開始するが、身重だった梢が急に陣痛を起こしてしまい、敵であるはずの頓兵衛が、その出産準備に奔走するというクライマックスはバカバカしくも微笑ましい。

まさに「動く漫画」といった観のある、エノケンの面目躍如たる一編。