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銭形平次('67)

1967年、東映京都、野村胡堂原作、田坂啓+山内鉄也脚本、山内鉄也監督作品。

1966年から始まり、その後、888回放送という長寿番組になる大川橋蔵主演のテレビ時代劇「銭形平次」の劇場版。当然、本作の主題歌もテレビ同様、舟木一夫歌う有名な「♪おと〜こだったら〜、一つに賭ける〜…♪」である。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

たまたま同じ賭場にいたため、突然の手入れで捕まってしまった三人の不良たちが、各々牢で名乗りあう。

一人は、目明かしだった父亡き後、鳶政(河野秋武)に育てられながらもぐれてしまった平次(大川橋蔵)、賭場でその平次のきっぷに惚れ、子分にしてくれと頼み込むガラッ八こと八五郎(大辻伺郎)、そして、平次とは幼馴染みだった事を打ち明ける辰之助(小池朝雄)であった。平次も、子供ながらもしじみ売りをして生活を支えていた貧しい時代の辰之助を思い出す。

そんな平次を引き取りに来たのは、鳶政とその娘お静(水野久美)であった。
夜だったにもかかわらず、平次とお静を先に帰し、一人で別行動を取った鳶政は、かねてより相談を受けていた材木商の上州屋に脅迫状を送りつけていた千里の虎という謎の男の一味に襲撃される。

翌朝、若い女との心中遺体として発見された鳶政を見た平次は、三輪の万七の推理に異義を唱える。

鳶政は殺されたと確信した平次は、父の代より懇意だった与力の笹野新三郎(大友柳太朗)に、自分も目明かしにしてくれと頼みに行く。笹野は、黙って、平次の父親が遺していた十手を彼に引き渡すのだった。

十手を授かった平次は、帰宅途中、さっそく、千里の虎の一味から襲撃される。
そのピンチの最中登場したのは、前髪姿も凛々しい若き侍、橘一馬(舟木一夫)であった。

思わぬ一馬の加勢もあり、ほうほうの態で逃げる一味の中に、平次は辰之助の姿を発見する…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

大映の長谷川一夫主演の平次シリーズとは、基本設定が少し異なっているのが興味深い。
長谷川一夫版では平次は孤児で、目明かしの利助に育てられて一人前の目明かしになる。
一方、後に女房になるお静は水茶屋で働いていた…となっている。

本作でも、まだ、お静と平次は夫婦になっていない。
八五郎との出合いも描かれており、どうやら、この後もシリーズ化を狙っていた節も見受けられる。
ただ、残念ながら、この大川橋蔵版平次の劇場版はシリーズ化される事はなかった。
結果的に、劇場版としての本作が成功しなかったからだと思われる。

映画版と言ってもテレビの感覚に近く、妙に明るく平板な照明、人物のアップの多用、全体的な絵作りのせせこましさなど、映画特有の迫力には程遠い画面になっている。

筋立ても、どうと言う事もなく、すぐに察しが付いてしまう程度の事件で、推理ものとしての醍醐味にも乏しいと言わざるを得ない。

平次とお静が、各々、別の場所にある敵の本拠地に乗り込んだりする所が、一応、クライマックスになるのだが、通俗活劇の域を出るものではなく、特に成功していると言いがたいのが残念。

水野久美のお静というのも意外性はあるが、はたして適役かどうだったかは疑問が残る所だろう。

せいぜい、千里の虎の一味として、川谷拓三の顔が混じっている所などが見所といったか。

やはり、橋蔵版の平次といえば、テレビシリーズにとどめを刺すという事だろう。