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てなもんや幽霊道中

1967年、東宝+宝塚映画+渡辺プロ、香川登志緒原作、笠原良三+沢田隆治脚色、松林宗恵監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

テレビフレームサイズの画面の中に、大阪を旅立ったあんかけの時次郎(藤田まこと)と珍念(白木みのる)、画面が白黒なのに不満を言い出すと、突如画面がカラーになる。

画面もワイドにしようやないかと、まず、時次郎がフレームを左側の黒み部分に飛び出す。

珍念もまねして、画面右側に飛び出そうとするが、一回、テレビフレームにはじかれ、外に出られない。

気を取り直して、もう一度フレームの右側にジャンプすると。今度は黒み部分に無事着地。

左右から二人が中央のテレビサイズフレームを引っ張ると、画面が広がりワイド画面になったので、そのまま二人はその世界に戻る。

二人が訪れていたのは、加賀美百万石の城内。

時次郎の方は、ちょうど通りすぎて行ったきれえなねえちゃん一行に見とれていたが、珍念は先ほど茶屋で食べた団子が一皿二朱もしたので、この藩は異常に物価が高いと嘆き、このインフレ景気では宿代もとんでもなくふんだくられるに違いないと心配し、自分に妙案があるからついてこいと時次郎を誘う。

タイトル

珍念が知る修念和尚(ハナ肇)が住職を務める寿命寺にただで泊めてもらおうと言うのだった。

境内に到着した二人がのんきに眺めていた加賀美藩の城内では、今まさに、長患いで臥せっていた城主加賀美正家(谷啓)が、御典医の淳庵(桜井センリ)に見守られる中、息を引き取る所であった。

その場に居合わせた家老大杉源蔵(遠藤辰雄)は、お世継ぎ問題なども起こるので、当分は、殿の死は秘密だと、その場にいた者達に固く口止めをした後、正家の亡がらを寿命寺に安置しておくよう淳庵に命じる。

その寿命寺に泊めてもらう事になった珍念は、こういうお寺さんと言えばお客さん、つまり新仏が来るかもしれないと、寺と言うだけで怖がっていた時次郎をからかっていた。

そこに、淳庵率いる棺が運ばれてきたので、臆病な時次郎は人魂と見間違ってしまう。

出迎えた修念和尚は、棺が運び込まれる様子を眺めていたそんな二人に、さっさと寝るように命ずる。

寝所に戻った珍念はさっさと寝付いてしまうが、寝付けない時次郎は、寝たばこをしようとタバコ盆を引き寄せるが、火をつけようとするとタバコ盆がひとりでに動いてしまう。

怯えた時次郎は、珍念を揺り起こして事情を話すが、珍念は相手にしない。

実際、その手の現象を全く信じていない珍念が起きている間は怪異は起きないのだ。

そんな事が続いた中、時次郎は尿意を覚えたので、珍念をだしにして一緒に便所に行こうとまた起こすが、時次郎の魂胆を見抜いている珍念は一人で行けとつれない返事をしてまた寝てしまう。

仕方がないので、一人ではばかりに行った時次郎は、その帰り、棺の前で読経を続けていた修念和尚の様子をつい好奇心から覗き見る。

すると、棺の屋根の部分が浮き上がり、その中から正家が顔をのぞかせ、時次郎に向かうとにやりと笑いかける。

肝をつぶした時次郎は寝所に飛んで帰ると、また珍念を起こし、今怒った事を打ち明けるが、珍念は全く信じないながらも、好奇心から和尚の部屋に出向いてみる。

しかし、すでに和尚の姿はなく、棺も何の異常も見られなかったので、がっかりした珍念が部屋に戻ってくると、時次郎が旅支度を終え、こんな所には泊まれないので、今すぐ出立すると言うではないか。

珍念は真夜中であるにもかかわらず、時次郎の後について行くしかなかった。

その頃、加賀美藩の城内では、大杉源蔵に腹心の黒岩平部 (藤木悠)が、亡き正家がかつて腰元に生ませたまゆみ姫を捜しに桂木半太夫(南部彰三)が出立したと報告していた。

翌日、旅を急いでいた時次郎と珍念に、見目美しい娘が福井の城下町に行きたいのだが、道を教えてくれと聞いてくる。

鼻の下を伸ばしている時次郎に代わり珍念が教えると、その娘はあっという間に遠ざかって行った。

やがて、時次郎と珍念は、道に新しい関所、つまり新関ができている事に気づく。

そこに近づこうとした二人に、草陰から先ほどの娘が声をかけてくる。

彼女は、自分は腰元の雪枝(野川由美子)と名乗り、実は、隣の藩に出かけた自分の父親桂木半太夫に、大事が起こった事をすぐに知らせに行きたいのだが、自分は通行手形を持っていないと言う。

新関では、新任の責任者富樫怒右衛門(いかりや長介)が、部下たち(加藤茶、仲本工事、高木ブー、荒井注)に、自分の先祖が弁慶の勧進帳にだまされた逸話を聞かせ、自分たちは決して同じ過ちを繰り返さないように、くれぐれも厳重な検査をするように命じていた。

そこにやってきたのが、珍念、旅烏姿の雪枝、僧の格好をした時次郎の三人。

珍念は、比叡山延暦寺の修復費捻出のために旅をしていると、恩情寺の発行の手形を見せ、雪枝は時次郎用の手形を見せて、何とかその場をごまかせそうな雰囲気になる。

しかし、富樫怒右衛門は関所を抜けかけた三人に声をかけ、もう一人の手形を見せろと迫る。

珍念は、こいつは小坊主だと言い訳し、とりあえず勧進帳を読んでみせろと時次郎に言うが、時次郎が白紙の巻物を読んだのは「てなもんや三度笠」の主題歌。

それに気づいた部下たちが騒ぎだしたので、珍念は、お前の修行が足りぬばかりに疑われたではないかと、その場で時次郎を杖でうち始める。

雪枝も、珍念から勧められるまま、一緒に棒で殴り始めたので、さすがに見かねた富樫怒右衛門は、三人を通過させてやる。

それを見ていた部下(加藤茶)は「血は争えない…」と苦笑いする。

関所を無事通過できたものの、ぼこぼこに殴られてひどい目にあった時次郎は、詫びる雪枝に甘えかけるが、雪枝は珍念に礼を言い残すと、駕篭を拾って一人で先を急ぐ事にする。

その直後、時次郎と珍念に三人の浪人が近づいてきて、白髪の老人武士を見かけなかったかと聞き、二人が知らぬと答えると、礼も言わずに追い抜いて行く。

その頃、駕篭を急がせていた雪枝は、見覚えのある後ろ姿に遭遇、無事、父、桂木半太夫に再会したので、駕篭を降り、殿が亡くなって一大事だと言う事を伝えていた時、後を追ってきた三人の浪人ものが二人に襲いかかる。

三人は、黒岩平部が差し向けた刺客たちだった。

桂木父娘が賊に襲われている最中、遅れて現場に来かかった時次郎たちだったが、雪枝が自分に気がない事に気づいてすねていた時次郎は、二人の助勢をしようとはしなかった。

時次郎がグズグズしているうちに、半太夫は賊に斬られ崖下に落ちてしまい、その直後、娘の雪枝も足を滑らせ崖から落ちてしまう。

珍念は、死んだ雪枝はきっと、助成しなかった時次郎を恨んでいるに違いないと脅かす。

その夜、「すすき屋」と言う宿に泊まった二人は、やけに部屋代が安かったので、やってきた女中に訳を尋ねると、その部屋は10日前に心中者が出たので割引中だと言うし、今日は、ここの宿の女将さんの一周忌だと不気味な事を言い、ますます時次郎を怯えさす。

しかも、坊主の珍念は、それならば自分が女将の供養のためにお経を読んでやろうと、仏壇のある部屋にさっさと出向いてしまう。

後は嵐になっていた。

気味の悪い部屋に一人にされた時次郎は、布団をかぶって震えていたが、その時、閉まった雨戸の外から、「ここを開けてください」と頼む女の声が聞こえる。

そこに珍念が戻ってきたので、時次郎が震えながら訳を話すと、珍念は、またしても呆れながら雨戸を開けてみる。

すると、まさしく、庭先に髪が乱れた雪枝の姿があるではないか。

驚いた珍念は、ようやく幽霊を見る事ができたとうれしがりながら、彼女を部屋に招き入れるが、雪枝は、自分は幽霊ではないと言いながら、着物の裾をまくって足を見せる。

しかし、それを見た珍念は幽霊に足があると気絶してしまう。

一方、現金なもので、雪枝が生きた人間であると知った時次郎は、布団から出てきて、にやけながら雪枝を歓迎する。

翌朝、その雪枝を伴い、まゆみ姫が昔預けられたと言う中山藤兵衛(平参平)の家まで同行した時次郎と珍念だったが、藤兵衛の話によると、まゆみ姫なら10里先の油谷と言う宿へ養女に出したと言うではないか。

その頃、城に戻っていた三人の浪人たちに、大杉源蔵は、殺した二人の口からまゆみ姫の行方を聞いたかと問いただしていた。

しかし、黒岩平部が、その事を三人に命じ忘れていた事を知ると、大杉は不機嫌になる。

自分の娘を、やがて城にやってくる松平源三郎の嫁にしようと画策していた大杉は、まゆみ姫が戻ってきて、その座につく事を願って画策している近藤一派の動きを警戒していたのだった。

大杉は黒岩に、後5万両偽金を作らないと自分たちの横領がバレると命じる。

大阪に戻る予定の時次郎と珍念は、油谷宿に向かう雪枝と分かれる事になるが、時次郎の方は雪枝と行動を共にしたい様子。

その時次郎の片思いを迷惑がっていた雪枝は、その時偶然、近藤清之進(田村亮)とばったり出会ったので、父親が大杉一派に殺されたと説明した雪枝は、さっさと彼と共に油谷へ向かう事にする。

完全にふられてしまった時次郎は気落ちして珍念とともに旅を続ける事にするが、その時、美しい歌声を響かせる娘芸人を乗せた旅芸人の荷車とすれ違い、珍念が近くの村祭りに来たのだろうと言うので、時次郎は急に元気づく。

その村に寄る事にした二人は、顔なじみのネズミ小僧(南利明)とばったり出くわす。

先ほどの「博多小蝶一座」の小屋の前では、地元のすっから勘兵衛親分に挨拶をしないとはどういう事だと、子分らしき二人組、あなごの金太(横山フック)とうなぎの八兵衛(横山パンチ)芸人たちに因縁をつけていた。

みかねた時次郎は、そんな二人の子分たちを痛めつけて追っ払ってやる。

小蝶(恵とも子)の姉で座長の博多小春(久保菜穂子)は感激し、時次郎と珍念を楽屋に招き入れると礼を言う。

そこに、先ほどの二人が戻ってきて、時次郎に顔を貸せと外に誘う。

悠然と外に出た時次郎だったが、待ち受けていたのは、十手持ちのすっから勘兵衛(横山ノック)率いる一軍だった。

心配して出てきた珍念も加勢し、二人は大暴れを始める。

そこに馬で駆けつけた役人が仲裁する。

十手を取り上げるぞと言われた勘兵衛は、すぐに頭を下げ帰って行く。

実はその役人三鬼武十郎 (財津一郎)、たまたま一人で娘歌舞伎をこっそり見に来ただけだった。

やがて、娘歌舞伎の舞台「番長皿屋敷」が始まる。

その芝居に夢中になりすぎていたのを見透かされた三鬼は、隣に座ったネズミ小僧からけしかけられ。つい芝居と現実の境が分からなくなり、舞台に上がると、小蝶をいじめていた芸人をその場で成敗すると刀に手をかける。

芝居の邪魔をされた客たちは沢めきだすが、やがて、その客たち全員が財布をすられている事に気づき大騒ぎになる。

一緒に芝居を観ていた時次郎、珍念たちも財布がない事に気づき、笑いながら小屋を抜け出そうとしていたネズミ小僧の仕業と察し、後を追いかける。

屋根に登って逃げかけていたネズミ小僧は、持っていた財布をすべて二人に投げ与える。

自分は、御上の用のために財布の中身が本物の金かどうかあらためただけのであり、言わば公務執行中、金が目当てではないと言い残し去って行く。

意味が分からないながらも、財布の中身はそっくり入っている事が分かった二人は、その財布を持って芝居小屋に帰ると、みんなに取り戻してきたと返す。

しかし、ただ一人、三鬼の財布だけは見当たらなかった。

その頃、村はずれのお堂の中で公義隠密森山忠之助(玉川良一)と落ち合っていたネズミ小僧は、役人が持っていた財布の中身だけが偽金だったと、持参してきた財布を示しながら報告していた。

一度ならず二度までも窮地を救ってくれた時次郎と珍念への感謝のしるしとして、小春や小蝶は彼らに団子と酒を振る舞うのであった。

一方、お堂に呼び出された三鬼は、身分を明かした森山から偽金の出所を聞かれていた。

三鬼は、悪びれる風もなく、金は賄賂であり、半分は目明かしのすっから勘兵衛 、後半分は、蛇谷大権現の偽行者たちからもらったのだと教える。

その頃、芝居小屋の楽屋では、すっかり酔った時次郎と珍念が上機嫌で歌っていた。

その後、博多小蝶一座と別れて旅を続けていた時次郎たちだったが、日が経つにつれ、時次郎の小蝶を思う気持ちはつのって行った。

そんな二人は、あの雪枝と近藤清之進にばったり再会する。

時次郎の方は、ふられた事もあり、雪枝にはもう関心がないようだったが、珍念はその後の経過が気になるからと二人に近づき、事情を聞く事にする。

すると、二人が探し求めていたまゆみ姫は油谷宿にもおらず、何でも、女歌舞伎の一座に渡されたらしいのだと言う。

それを聞いた珍念はピンと来て、その女歌舞伎とは博多小蝶一座ではないかと言い当てる。

そして、遠くで待っていた時次郎に駆け寄ると、また小蝶さんに会えるぞと、珍念は事情を教えるのだった。

雪枝と近藤清之進を連れ、芝居小屋に戻ってきた珍念たちだったが、小屋の前には村人たちが集まっている。

何かあったのかと聞くと、女芸人たちが全員姿を消したのだと言うではないか。

去年も、水芸人の女たちが消えた事件があり、蛇谷権現様のたたりではないかなどと怯えている。

小屋に入ってみると、一座の男衆たちが皆惨殺されていた。

そして、柱には「女たちを、蛇谷権現様の生け贄に連れて行く」と書かれた張り紙が貼られてあった。

小蝶たちを助けに行こうと出発した時次郎一行は、途中で森山忠之助とネズミ小僧に出会い、くれぐれも注意するようアドバイスされる。

大権現へ向かう山道は、途中で「表参道」と「裏参道」の二手に分かれていたので、時次郎と珍念は裏を行き、雪枝と近藤は表の道を行く事にする。

時次郎と珍念は、いつの間にか墓にたどり着いていた。

怯えて足がすくむ時次郎は、珍念がいつものようにへいちゃらでさっさと先に通り抜けてしまったので、一人取り残される形になる。

そんな時次郎は、人魂を目撃し、さらに幽霊が出現したので悲鳴を上げて、その場を駆け出し、後ろを向いていた小坊主を珍念だと思い込み声をかける。

ところが、振り向いたのは一つ目小僧だったので、時次郎はその場に気絶してしまう。

珍念が心配して戻ってくると、時次郎が倒れていたので、驚いて助け起こす。

すると、いきなりゴジラの声が響く。

目を覚ました時次郎が後ろを振り向くと、そこにはゴジラもどきの恐竜のような化け物が出現!

さらに、その後ろにはもう一匹の化け物が…

時次郎がまた気絶しようとすると、「今、怪獣ブームだからよ」と聞き覚えの声がゴジラもどきの中から聞こえてくる。

はりぼての中から顔を出したのは、ネズミ小僧、もう一匹の怪物の中身は森山だった。

二人が言うには、先ほど、時次郎を脅した幽霊な一つ目小僧は、この近くにある偽金作りをごまかすためのものであり、化けていたそいつらはもう自分たちが捕まえたと言う。

珍念は森山に、まゆみ姫は今、小蝶と言う芸人としてここに捕まっているらしいと伝えると、ネズミ小僧と森山は、捕まえておいた敵二人に偽金作りの場所の入り口を聞き、それが石灯籠の下だと分かると、二人をその場で気絶させ、時次郎、珍念を従え、中に入って行く。

地下では、まさしく偽金が作られていた。

さらに人声が聞こえるのでそちらの部屋に忍び込むと、そこでは、黒岩平部が酒を飲みながら、さらってきた小蝶たち娘芸人たちに踊らせていた。

その姿を目撃した時次郎は、思わず「小蝶はん!」と呼びかけてしまい、黒岩らに気づかれてしまう。

仕方がないので、時次郎は刀を抜き、ネズミ小僧や森山らとともに、黒岩とその配下たちと戦い始める。

そこへ、別のルートから到着した雪枝と近藤清之進も加わり、地下基地内は大立ち回りとなる。

しかし、その騒ぎに乗じて、黒岩は、どんでん返しの秘密の通路から一人逃亡してしまう。

戦い終わり、雪枝と近藤清之進は、小蝶の本当の名前はまゆみ姫であり、今すぐ城に戻ってほしいと願い出ると、さすがに小蝶は驚く。

小春からも説得された小蝶は、それなら、時次郎にも一緒に城についてきてくれれば…と条件を出す。

それを聞いた雪枝らは一瞬困惑するが、それも敵の目をくらますため良いかもしれないと考え直すと、時次郎と珍念にも城に同行してほしいと頼む。

城に戻った黒岩平部は、大杉源蔵に事の次第を報告するが、そんな平部を大杉はその場で斬り殺してしまう。

善後策を打ち合わせするため、寿命寺に戻ってきた時次郎、珍念、まゆみ姫、雪枝、近藤清之進らに、修念は、まゆみ姫帰還に際しての計画と各人の役割を説明するのだった。

珍念に、お経を読んで霊魂を呼び寄せろと命じた修念の言葉を聞いていた時次郎は、そんな事ができるはずがないとバカにするが、ふと庭先を見ると、そこににやりと笑う正家の幽霊が立っているのが見えたので、また気絶してしまう。

その夜、寝所で寝ていた大杉は、斬り殺した平部の悪夢にうなされ目を覚ます。

すると、腰元がやってきて、立った今、まゆみ姫がやってきたと言うではないか。

大杉が一人謁見にうかがうと、まゆみ姫の両脇には、顔の長い奇妙な腰元と、正装した小坊主が控えているではないか。

大杉は、まずまゆみ姫であると言う証拠を見せろと迫る。

すると、まゆみ姫は、亡き殿から赤ん坊の頃渡された金の鈴があると見せる。

しかし、そんなものは、いくらでも偽物を作る事ができるので証拠にならないと大杉が突っぱねると、横にいた珍念が、それではもっと確かな証拠をお目にかけようと、お経を読み始める。

すると、御簾の奥に、死んだはずの正家が出現し、その娘こそ、自分が18年前、腰元の楓に生ませたまゆみ姫に違いないと証言する。

それを見た顔の長い腰元、つまり女装していた時次郎はまたまた気絶。

大杉もさすがに狼狽し暴れかけるが、部屋の外に控えていた近藤清之進ら護衛陣が入ってきて、大杉を取り押さえる。

御簾から出てきた正家は、実は、御典医の淳庵は自分の味方で、大杉から命じられていた暗殺用の毒薬を病床の自分に飲ませる代わりに、栄養剤を飲ませてくれていたのだと打ち明け、大杉に切腹を命ずる。

正家の死自体が、大杉の悪事を暴くための芝居だったのだ。

そんな説明をしている最中も、腰元に化けた時次郎だけは気絶したままだった。

翌朝、時次郎と珍念は、まゆみ姫や雪枝らに見送られながら城を後にする。

時次郎は、ひょっとして城に残っていたら、自分はまゆみ姫と結婚できたかもしれないのに…と悔しがるが、それを聞いた珍念は、あにいが殿さんになって、わいが大人になってしまったら「てなもんや」はさっぱりやと返し、時次郎も納得するのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

往年のテレビの人気番組「てなもんや三度笠」をベースに1963年に東映で2本、1967年に東宝で3本作られた映画版の最後を飾る作品。

タイトルから想像すると、お化けや妖怪がたくさん出てくる「東海道お化け道中」のようなファンタジー展開を予想してしまうが、観てみると、これがそうではない所がミソ。

やはり、超自然的なものを入れてしまうと、「てなもんや」の世界観が変わってしまう事への配慮だったのかもしれないが、怪異現象には、ほとんど説明がつけられるような設定になっている。

唯一、謎解きがないのは、寿命寺に泊まった時次郎が見るタバコ盆の移動のみ。

これも、臆病な時次郎が見た幻覚と言う解釈なのかもしれない。

当時の人気者としてマンガトリオが出てくるが、横山パンチこと後の上岡龍太郎が、きまじめと言うか、妙に醒めたような無表情な顔で芝居をしているのがおかしい。

当時はまだ新人だったので、あがっていたのだろうか?

田村亮も印象が弱く、彼だと気がつかない観客も多いのではないだろうかと思えるほど。

とぼけた持ち味も出せる藤木悠だが、今回はまじめに悪役を演じている。

まゆみ姫を演じ、歌も披露している恵とも子は、今でこそあまり馴染みのない顔だが、当時は人気モデルだったらしい。

個人的には、あまり彼女に関する記憶がない。

玉川良一がまじめな役を演じているのも珍しいような…

劇中、時次郎や珍念は「バハハーイ!」と言っている。

着ぐるみキャラが活躍する人気テレビ子供番組「ケロヨンの冒険」の主役ケロヨンの言葉であり、この年の流行語になったもの。

同じく、劇中、ネズミ小僧役の南利明が「今は怪獣ブームだからよ」と言っているので、この年が、「ウルトラマン」(1966)「ウルトラセブン」(1967)などのテレビ特撮が引き金役になり、空前の怪獣ブームが起こった年であった事も分かる。