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てなもんや大騒動

1967年、東宝+宝塚映画+渡辺プロ、香川登志緒原作、笠原良三+沢田隆治脚本、古沢憲吾監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

元治元年、今日の街には、剣劇の響きが轟いていた。

そこにやって来たあんかけの時次郎(藤田まこと)は、時を知らせる鐘の音が聞こえたとたん、今まで戦っていた役人たちが急に剣劇を止めて帰って行く様子を見て、役人はだめだなとがっかりする。

やがて、その時次郎がやって来たのは、今聞こえた鐘をついていた珍念(白木みのる)のいる近江国の円城寺。

今世間で噂の勤王党に入って一旗揚げたくなったので、大阪から夜通し歩いてやって来たのだと時次郎は説明し、これからは、珍念の言う事は何でも聞くから、京都を案内してくれと言う。

それを聞いた珍念は、それならちょうどこれから、大僧正の使いで京都の証城寺に今月分の給料を届けねばならないのでついてこいと返事をし、時次郎は素直にそれに従う事にする。

タイトル

京都に向かう道すがら、時次郎は、そもそも勤王党と言うのはどういう一派かと珍念に聞くと、徳川幕府を尊敬する人たちに対し、天子様を崇める一派の事だと呆れながら説明した後、一体兄いは、どういう意味だと思っていたのかと逆に聞くと、時次郎は、勤王党に入ったら、金がもらえて芸者にもてるとばかり思い込んでいたので、違うんだったら、もう帰ろうなどと言い出す始末。

そんな時次郎の考え違いを叱った珍念は、男やったら、一度決めた事は最後までやり遂げろと説き伏せる。

やがて、目的地の京都の証城寺に到着した二人は、ちょうど庭掃除をしていた住職円念和尚(平参平)に頼んで、しばらく寺に逗留させてくれと願い出る。

快くその願いを聞き入れてくれた円念和尚は、自分が持っていた箒を時次郎に渡すと、庭掃除を命じて珍念と寺の中に入る。

その直後、祇園の駒菊と名乗る美しい娘(野川由美子)と連れの女が、この寺におられる坂本龍馬さんにお会いしたいと訪ねてくる。

円念和尚にその事を伝えに行くと、離れの書院を貸しているのだと言う。

一緒に聞いていた珍念は、坂本龍馬と言えば、勤王の志士と言われる人物ではないかと驚き、ちょっと挨拶して来ようと、時次郎について離れに向かう。

ところが、駒菊の事を聞いた坂本龍馬(財津一郎)は、会いたくないとつれない返事。

それを聞いた駒菊は、それでは、この手紙を渡してくれと時次郎に託すと帰ってしまう。

ラブレターだと思い込んだ時次郎は、やはり勤王党は芸者にモテるんだと感心する。

その手紙、実は、料亭の請求書を受け取った坂本龍馬が目の前で握りつぶして袂に入れてしまったので、すっかり心酔してしまった時次郎は、自分を弟子にしてくれと頭を下げる。

すると龍馬は、弟子にしてやっても良いが、入門料10両いるぞと言うではないか。

時次郎は、天王寺親分からもらった金がちょうど10両あったので、それを龍馬に渡してしまうが、その結果、旅費が全くなくなってしまう。

受け取った龍馬の方は、勤王党のアジトに行くと称して、勝手に一人で出かけてしまったので、残された時次郎は、当座の仕事探しをするはめになる。

街に出てみると、新撰組が組員募集をしているとの立て札が出ていた。

そこに、近藤勇(芦屋雁之助)率いる新撰組が歌を歌いながら行進してくる。

その新撰組の背中に書かれた文字は「誠(まこと)」の一文字と聞いた時次郎は、どこかで聞いた名前に親しみを感じ、すぐさま組に入ろうと決意すると、組の門の所にいた二人(加藤茶、荒井注)に声をかけ、自分は宮本先生直伝(実は、宮本源蔵先生)の剣の腕と、金を持っていると嘘を言い、試験会場に入る事に成功する。

しかし、剣の腕を試された土方歳三(いかりや長介)にあっさり負けてしまい、入門失敗と思いきや、そこに突如暴れ馬が乱入、それを時次郎がなだめてしまったのが認められ、急遽、馬屋番見習いとして採用される事になる。

その後、給料をもらった組員たちが、麻雀で稼ごうと相談し合っているのを聞いた時次郎は、それよりさいころ賭博で遊ばないかと誘いかけ、厩で勝負を始める。

まず、二人(高木ブー、仲本工事)が負け退散、さらに買った二人(加藤茶、荒井注)に花札勝負を持ちかけた時次郎は、まんまと全員の金7両2分を巻き上げてしまう。

新撰組のはんてんを着て、うれしげに寺に帰って来た時次郎を見た珍念は、新撰組と言えば、勤王党の敵やと呆れる。

知らなかった時次郎は、珍念に黙っていてくれと頭を下げる。

さらに、懐が暖かくなったので、これから祇園に繰り出そうと言う。

珍念は、自分は未成年だし仏に仕える身だからと断って、さっさと布団を敷こうとするが、饅頭をおごってやると言う時次郎の誘いにはあっさり承知してしまう。

駒菊がいる「白梅」にやって来た時次郎と珍念は、一見さんお断りと言う女将に、自分たちは坂本龍馬の弟子だと名乗り、まんまと座敷に上がり込んでしまう。

白梅の別の座敷では、近藤勇や土方歳三らが、浮かれていたが、女将から、龍馬の仲間がやって来たと聞くと、すぐに時次郎たちの座敷に向かう。

その頃、時次郎は、お目当ての駒菊から酌をしてもらい、すっかり「月形半平太」になった夢を見ていた。

そこに、新撰組が近づいてくる。

時次郎が、龍馬の名前を使って座敷に上がった事を知った駒菊は、女将は新撰組の味方だから、すぐに逃げろとせかす。

しかし、そこにやって来た土方は、相手が馬屋番と知り、どうするべきか近藤勇に尋ねるが、自分たちの敵は西郷や坂本たちだと考えている隊長は、馬屋番など相手にしない事にする。

ほっとして寺に帰る途中だった時次郎と珍念は、道で苦しんでいる侍と、それを開放している娘を発見、訳を聞くと、兄が急に病気になって難儀していると言う。

寺が近いと言うので、時次郎は侍を背負って連れて帰る。

何とか横になった侍だったが、この寺が自分たちが目指していた証城寺だと知ると、自分は日下寅次郎(久保明)、娘はゆき(磯村みどり)だと自己紹介した後、自分たちは坂本龍馬に桂小五郎からの密書を持って来たので会わせてくれと言う。

そうした話を、寺の外に忍び込んでいた駒菊が闇にまぎれて聞いていた。

坂本龍馬がいない事を知った日下は、江戸屋敷を出立した西郷隆盛は、尾張の宮で10日に龍馬と会うはずだと言うので、時次郎は、それなら自分がその日までに密書を持って行ってやると言い出す。

その言葉に感謝した日下は、合い言葉として「セ」と行ってくれと頼む。

龍馬はそれに対し「パ」と答えるはずだと言う。

翌朝、雪に見送られ、時次郎と珍念は密書を持って寺を出立する。

「人生劇場」を気持ち良く歌いながら歩いていた時次郎は、時ならぬ女の悲鳴を聞き、浪人たちに追われていた鳥追い姿の娘を助ける。

すると、その娘は駒菊ではないか。

事情を聞くと、父親の病気見舞いに、尾張の宮まで行くと言うので、奇遇と感じた時次郎は一緒に旅をしようと誘い、駒菊の方も、妙に馴れ馴れしく時次郎の腕にすがりついてくる。

面白くないのは、のけ者にされた珍念、もっと太っ腹の男と旅がしたかったと愚痴り、時次郎から、それじゃあ別々に旅をしようと1両2分だけ路銀を分け与えられ、時次郎と駒菊は駕篭を拾ってさっさと出発してしまったので、それからは一人で旅をする事になる。

一人寂しく歌を歌う空想などしながら歩いていた珍念は、辻堂の所で休憩していた一人の旅人を発見、こいつを連れにしようと、お世辞を言いながら話しかけてみる。

すると、その男は上機嫌になり、自分は上州の大前田英五郎(伴淳三郎)と名乗って珍念を気に入ってはくれたが、無駄遣いが嫌いなのでここで泊まろうと辻堂をさす。

一方、先に宿に到着した時次郎は、すっかり駒菊と同室になった事で有頂天になり、先に風呂に入る事にする。

ところが、風呂から部屋に戻って来た時次郎は、駒菊がいなくなっている事に気づく。

女中に聞くと、一人で宿替えをしたと言うではないか。

さらに、自分が置いて行った密書が入った胴巻きまでなくなっていた。

翌朝、結局、一人で旅を続けていた珍念は、道ばたに干してあったわらの中から呼び止められる。

見ると、身ぐるみはがれた時次郎ではないか。

駒菊に裏切られて宿代もなくしたので、衣類を取られてしまったのだと恥ずかしそうに言う。

珍念は、密書なら、こういう事もあろうかとあらかじめすり替えて自分が身につけていたと教える。

その頃、待ち受けていた近藤勇に盗んで来た密書を渡した駒菊は、その中身が白紙の偽物だった事を知ると、先に尾張の宮に向かうと言い残しでかける。

渡し船の所にやって来た時次郎と珍念は、船賃が倍になって難儀をしている旅人があふれているのに気づき、自分たちも文無し状態なので川を渡れないと知る。

残っているのは、珍念が持っていた宿賃の残り百文だけ。

時次郎は、その百文を増やして来ようと言い出し、賭場を探し始める。

そこでばったり出会ったのがネズミ小僧(南利明)に聞くと、この辺にはたいした賭場はないが、桑名の樽蔵(鳳啓助)と言う親分がいると教えてくれる。

さっそくその家を探し当てると、女房のおむつ(京唄子)と共に、何やら喧嘩を始める準備をしている。

聞くと、これから村田屋と言う組と一騎打ちをするのだと言うではないか。

お調子者の時次郎は、前金1両渡そうとするおむつに、金はいらないから自分も助太刀させてもらうと身支度を始めると、子分たちの先頭に立って河原に向かう。

河原にやって来た村田屋佐吉と言うのは、娘らしき女に介添えされた身体を病んでいる老人(左卜全)だった。

時次郎が、その村田屋に向かって、義理のために喧嘩に参加する事になったと仁義を切ると、その態度にほれた村田屋は、今年22になるおけいと言う娘の婿になってくれないかと言い出す。

時次郎は、その娘と言うのは目の前にいる美女(伊東ゆかり)と気付き、舞い上がると、急に村田屋の助っ人になると樽蔵とおむつに伝える。

二人はその急変に驚き呆れるが、喧嘩は始まってしまう。

しかし、形勢は樽蔵一家の日向圧倒的に有利、それに気づいた時次郎は、さっさと斬られて死んだ振りをする。

そこに駆けつけたのが大前田英五郎。

彼の名を立てて、樽蔵一家と村田屋は手打ちをする事になる。

座敷に両組員をそろえた中、挨拶をする大前田英五郎は、幕府と天子様が対立している今、自分たちのような小さいものが縄張り争いをしているときではない。

自分は勤王党につこうと思っているので、その義援金を出してみないかと言う。

その話に感心した村田屋が5両差し出すと、それに負けじと、おむつは5両1分出す。

そこに現れたのが珍念、本当にその金を勤王党に渡すのかと怪しむと、西郷吉之助に渡すと大前田英五郎は明言する。

それを聞いた時次郎は、その西郷なら、尾張の宮にいると教えたので、早速会いに行こうと言う事になる。

そこに、新撰組が当地にやって来たと村田屋の子分源助(人見明)が知らせにくる。

時次郎は、旅立つ前に、御毛糸の縁談話について改めて聞きただすと、おけいは他に好きな人がいると言い出し、それは目の前にいる源助だと言うではないか。

他の人物ならいざ知らず、いかにも間抜け面の源助が好きと聞いた時次郎はがっくり。

時次郎たちと同行する事になった源助を船着き場で見送るおけい。

その様子を忌々しそうに横目で見ながら、船に乗り込もうとした時次郎、珍念は、証城寺で別れて以来、久々に龍馬に出会う。

これ幸いと、預かって来た密書を手渡した時次郎は、同行していた大前田英五郎を紹介するが、龍馬は密書にも、西郷さんに紹介してくれと頼む大前田英五郎にも関心がない様子で、西郷など知らんと言う始末。

一行は船で、尾張の宮に到着、先に様子を探りに行った源助が、茶店で待っていた時次郎や龍馬たちの所に戻って来て、宿には西郷さんらしき人物が二人泊まっているので、どちらが本物だか分からないと言う。

それを聞いた珍念が、本物の西郷さんは犬を連れているはずと言い、全員納得。

その犬を連れている男(谷啓)は、なぜかあんまに化けたネズミ小僧から肩をもんでもらっていた。

そこに、大前田英五郎が訪ねて来て、西郷さんですねと問いただすと、その男は、自分は東郷啓之助で、その犬も西郷さんが連れている柴犬ではなくてちんだと否定するが、密会のため嘘をついていると思い込んだ大前田英五郎は、義援金百両を差し出す。

すると、急に男は態度を変え、自分が西郷でごわすと言い出す。

そこで、時次郎と珍念が龍馬を西郷と対面させて、やれ大任を果たしたとほっとして自室に戻ってくる。

すると、そこへ、ゆきが早駕篭でやって来たと言うではないか。

ゆきは、兄がどうしても手紙の事を気にかけていたのでと説明し、ちゃんと「セとパ」の合い言葉は言ってくれたかと確認する。

それを聞いた時次郎、うっかり合い言葉を言い忘れていた事に気づく。

すぐに、西郷と一緒にいた龍馬の元へ戻り、「セ」と言ってみるが、相手は答えない。

手紙を返せと言うと、女からの手紙だと思い込んでいた偽龍馬はあっさり返してくれた。

しかし、偽龍馬に、入門料を返せと迫った時次郎だったが、もう全部使ってしまったと言われがっかり。

大前田英五郎も、渡した百両を返せと偽西郷に迫るが、こちらもなくなったと慌てている。

どうやらネズミ小僧に盗まれたらしい。

しかし、偽物二人が逃げ出したので、時次郎と珍念は、二人を追いかけ宿中をかけずり回る大騒ぎ。

逃げ回っていた偽物二人は、自分たちそっくりの二人が密談している部屋に飛び込むが、そのまま窓から外に逃げ出してしまう。

そこにやって来た時次郎たちは、座っていた龍馬(財津一郎-二役)と西郷(谷啓-二役)を偽物と一瞬疑い、飛びかかろうとするが、そいつらなら今逃げて行ったと聞かされると、念のため「セ」と言ってみる。

すると、その場にいた龍馬は「パ」と答え、本物だった事が分かる。

部屋の外に逃げ出した偽物二人は、駆けつけて来た新撰組と駒菊に包囲され、やけのやん八で斬り合いが始まるが、多勢に無勢、結局、先に偽西郷が降参し捕縛されてしまうと、偽龍馬もあきらめ、あっさり捕まってしまう。

人相書きから、二人を本物と認定した新撰組は、そのまま彼らを引き立てると帰ってしまう。

その様子を屋根瓦の上で見物していた時次郎と珍念に、どこから現れたのかネズミ小僧が近づいて来て、盗んだ義援金百両をそっくり返してくれる。

翌日、戻った義援金を西郷に渡し、桂小五郎からの密書を龍馬に渡した時次郎一行だったが、その密書はまたしても白紙。

頭をひねる龍馬だったが、珍念が、それは長州の事は御任せすると言う白紙委任状と言う事だろうと謎解きをしてみせる。

かくして、土佐、薩摩、長州はがっちり組みましょうと言う事になり、聞いていたゆきは、これでうちの人も喜ぶと漏らす。

それを聞いた時次郎は、あの兄と紹介された日下は、実はゆきの亭主だった事に気づき、またしてもがっくり。

しかし、西郷、龍馬、大前田英五郎たちに感謝されたので、あきらめて、また珍念と旅立つ事にするのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

東宝版「てなもんや」映画第二弾。

今回は幕末を舞台に、時次郎たちが、新撰組や西郷隆盛、坂本龍馬と言った有名人と共演する趣向になっている。

古沢憲吾監督らしく、全体の雰囲気は、「クレージー映画」や「若大将シリーズ」のように、唄あり、アクションありのバラエティ色豊かな内容になっている。

時次郎役の藤田まことや珍念役の白木みのる、ゲスト出演の伊東ゆかりなどが歌うのは分かるのだが、本作では、脇役イメージが強い人見明まで歌うシーンがあるのでびっくりしてしまう。

ここまでやるのだったら、財津一郎や谷啓、左卜全などにも唄ってほしかったような気もする。

夢のシーンで藤田まことが月形半平太の格好で出て来たり、唄のシーンで、白木みのるが小坊主ではなく、普通の子供の格好で登場したりするのも興味深い。

土方歳三役のいかりや長介はコント調で演じているのに、近藤勇役の芦屋雁之助はギャグを言わず、まじめに演じているのがちょっと物足りなかったりもするが、全体的にロケーションを多用した映画らしい展開は、それなりに見応えがある。

なお、本作のタイトルには「幕末」を頭に付けた「幕末 てなもんや大騒動」とした資料もあるが、映画に登場するタイトルには「幕末」の文字はない。