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丹下左膳

1953年、大映京都、林不忘原作、伊藤大輔+柳川真一脚本、マキノ雅弘監督作品。

続き物の前編に当たり、後編は「続丹下左膳」である。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

享保7年、江戸を離れる事107里、東北にある饗庭藩7万5千石の城主、饗庭主水正は、狂的な刀剣コレクターだった。

彼は、世に名高き妖剣、関の孫六の手になる乾雲、坤竜が手に入らない事にいらだっていた。
家臣達を集め、誰かこの妖刀を手に入れてきてくれないかと懇願するが、あまりの無理難題に誰も返事をしかねている。

そんな中、一人の家臣が声をあげる。

隻眼、隻手の丹下左膳(大河内伝次郎)であった。

場面は変わって、江戸は小野塚鉄斎の道場。
鉄斎所有の乾雲、坤竜の二刀を譲り受ける事と、彼の一人娘、弥生の婿決定の意味も兼ねた同門内での試合が開催されていた。

しかし、かねてより、弥生が思いを寄せていた諏訪栄三郎は、その日、好調に勝ち進んでいた同門の鉄馬にもろくも破れさり、そのまま道場から逃げ出してしまう。

その時、道場に現れたのが、浪人姿になった丹下左膳。
日を改めてくれという鉄斎の言葉にも耳を貸さず、左膳は勝手に鉄馬に挑みかかり、あっさり打ち負かしてしまう。

その直後、飾ってあった乾雲を手にした左膳は、妖刀の魔力に取り付かれたのか、迫ってくる同門一党を片っ端に斬り倒して行くのだった。

弥生は、残る坤竜の剣を守るのに精一杯、父、鉄斎も左膳の手にかかって果ててしまう。

鉄斎の葬儀の後、弥生は戻ってきた栄三郎に坤竜の剣を託すのであったが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

戦前に作られた「新版大岡政談」をリメイクしたもの。

大岡越前守と丹下左膳の二役を、戦前版同様、大河内伝次郎が演じている。

本編を観る限り、丹下左膳は、時代劇ヒーローというより、「マスク」の主人公のように、「妖剣に取り付かれたモンスター」である。
乾雲、坤竜の二刀は、互いに離されると、百人の無辜の人の血を吸いながら元に戻ろうとする…という伝説があった。
それを証明するかのように、刀に魅入られた左膳は、夜な夜な出会った人間を容赦なくを斬り殺して行く殺人鬼のようになって行く。

一方の剣を託された諏訪栄三郎もまた、その魔力に取り付かれ、人間らしい気持ちを徐々に失っていくのであった。

そういう、一種の「怪奇事件」を、南町奉行の大岡越前が体験する…というお話なのである。

そんな左膳に惚れる櫛巻お藤に水戸光子、栄三郎の女房、お艶に山本富士子が扮し、各々、惚れた男と共に悲劇に巻き込まれて行く様が描かれて行く。

さらに、生まれつき顔に醜い痣があるコンプレックスから、異常に女性からの愛情に餓え、その気持ちをお艶へ向けて行く直参旗本、鈴川源十郎や、後編で傷付いた諏訪栄三郎を保護し、大岡越前とも懇意の間柄らしき謎の乞食坊主蒲生泰軒、お艶の兄でお藤の子分でもある鼓の与吉(田中春夫)など、個性的なキャラクターが登場する。

本作は、数奇な運命の後、大勢の捕り手たちに追われる事になった左膳と、栄三郎が橋のまん中で出会い、互いが持つ剣を奪う為に勝負し、左膳に斬られた栄三郎が川に落ちてしまう所で終わっている。