1945年、東宝教育映画、長谷部慶脚本、市川崑監督作品。
GHQの検閲により、永らく公開されなかった幻の人形劇映画であり、市川崑監督の本当のデビュー作でもある。
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黒い画面に白い花びらがハラハラ散る画面から始まる。
やがて、画面中央に長い石段が現れ、そこへ可愛い小坊主たちが踊り出てくる。
皆、個性豊かな顔つきで印象的。
近くで大きな鐘を作っている数名の職人達の姿。
その中に一人、整った顔だちの若者が一人。
その鐘作りの現場に、とちらも美しい娘が花の付いた小枝を片手に現れ、美貌の若者の方に視線を送る。
その時、にわかに、作りかけた鐘の根元付近からひび割れが生じ、あっという間に鐘は崩壊してしまう。
その後、巨大観音像の前には、かの娘が一人ひざまずき、青年の新しい鐘の完成をひたすら祈る姿があった。
観音像の背後から登る大きな月。
一方、その月を別な場所から見つめていた青年職人は、月から何かが飛び出したのを発見する。
そのまま、鐘を作っている現場に戻った青年、えいや!っとばかりに、炉に薪を投げ込むと、ア〜ラ不思議、見事な鐘が完成する。
その巨大鐘は一人でクルクルと空飛ぶ円盤のように空へ飛び上がったかと思うと、自分で鐘付き堂に納まってしまう。
寺の老住職と小坊主達が、鐘の供養とばかりに揃って集まり、鐘を打とうとするが音が出ない。
かの青年職人が近づき、その鐘を打つと、見事な音が辺りに響き渡るのだった。
喜んだ青年職人が観音像の所へ出かけると、そこにはすでに命を失った娘の姿を発見する…。
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映画はこの後、蘇った娘が踊りを披露するシーンとなるのだが、後半は様式的になってしまい、話としては一気に単調になってしまう。
全体的に、デフォルメされ造形的にも面白い脇役人形たちと、主役男女の整った造形の対比がまず面白い。
後年の市川崑監督を彷彿とさせるような陰影の使い方などにも興味が涌いた。
人形劇としては、かなり完成度が高い作品だと感じた。