1961年、大映、和戸夏十脚本、市川崑監督作品。
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VTVテレビ局の編成局風プロデューサー(船越英二)は、女性に対しては誰にでも優しい男。
そのため、局内には彼を慕っている何人もの女性たちがいて、互いに牽制しあっていた。
レストラン「カチューシャ」を自分で経営している妻(山本富士子)も、そうした夫の無責任さ、浮気性は先刻御承知。
付き合っている愛人達の人数もしっかり把握していたのである。
知らぬは、年若いコマーシャル・ガール(中村玉緒)や、テレビ局に出入りしていた印刷屋の未亡人(宮城まり子)ら、世間知らずの女性ばかり。
女優、石ノ下市子(岸恵子)や同じ編成局で働く後藤(岸田今日子)などは、自分達の置かれている状況を、どこか醒めた目で見ている様子。
すでに互いの気心が知れている市子と妻は、そんな風の事を殺してやろうかなどと、冗談で話していたのだが…。
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ブラックユーモアであぶり出す男と女の関係、また現代人への風刺劇ともいうべき内容。
ウィットに富んだ大人の寓話ともいえる。(かつては、日本映画もこうしたお洒落な大人の映画を作る事ができたのだ)
仕事では敏腕らしき風プロデューサーの、じつは薄っぺらな人間性が、おかしくも痛烈に浮き彫りにされていく。
男というものは、仕事という鎧を外してしまえば、いかにか弱く情けない生き物であるかといっているようにも見える。
また、そうした中身のない男というものに対し、各々形こそ違え、最後まで独占したがる女性たちの哀れとも恐ろしいとも感じられる性も、これまた鮮烈に描き出している。
危うく風プロデューサーの11人目の女になりかける、劇団「星くず」の新人女優、百瀬桃子を演じている森山加代子や、テレビ「大人の漫画」時代と思われるクレージーキャッツの初々しい姿に出会える貴重なシーンもある。(クレージーは、東宝「ニッポン無責任時代」よりも前の出演であり、これが映画初登場なのではないか?)
バービー人形のように愛くるしい時代の中村玉緒や、彼女が憧れる若きアナウンサー伊丹一三(=十三)の姿に出会えるのも嬉しい。
大人であれば、女性が観ても、男性が観ても、どちらにもクスクスと笑いながら楽しめる作品ではないだろうか。