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喜劇 とんかつ一代

1963年、東京映画、八住利雄原作、柳沢類寿脚本、川島雄三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

トンカツ屋「トンQ」の主人、五井久作(森繁久弥)、洋食屋、青龍軒のコック長、田巻伝次(加東大介)、屠殺業の禿山仙太郎(山茶花究)、フランスから日本食のお絞りや箸の研究のため、来日しているマリウス(岡田真澄)などの面々が、上野で行われていた豚の供養祭で顔を合わせる所から始まる。

久作は、伝次の妹、柿江(淡島千景)の夫であり、元々、青龍軒で働いていたのだが、伝次の息子の伸一(フランキー堺)に跡目を継がせようと、自らは率先して店を辞めて、トンカツ屋を始めた経緯があった。

伝次は元々、久作の腕に熱い信頼を寄せており、自分の後継者にと考えていたのだったが、そうした久作の気遣いに思い至らなかった為、裏切られたと感じており、いまだに二人の間にはしこりが残っていた。

ところが、当の伸一自身は、コック修行など向いていないとすぐにあきらめてしまい、今では、秘かに、伝次の古い恋敵で、いくつものホテルを持っている衣笠大陸(益田喜頓)の秘書のような事をしていた。
C調な伸一は、熱々の恋人関係である、禿山の娘、とり子(団令子)と濃厚なデートを重ねたり、時々、夫の遠山復二(三木のり平)がクロレラの研究をしている、姉の琴江(池内淳子)の家やトンQの店に遊びに行ったりする毎日であった。

物語は、知らぬ内に大陸が青龍軒の新しいオーナーになってしまい、その顛末に怒った伝次が店を辞めてしまう話。

伸一が、ホテルを一つ任せられている大陸の二号さん(都屋かつ江)のバカ娘、初子(横山道代)との結婚話が持ち上がる事。それに対し、恋人のとり子が嫉妬するどころか、逆に歓迎するような態度に出る事。

久作が気のある芸者、りんご(水谷良重)が、遠山所有の嘘発見器を使って、久作やもう一人のお相手、衣笠の本心を探ろうとするドタバタ。

その怪し気な町の研究者、遠山自身は、最終的に実績が認められ、思わぬ幸運を授かる…などの、いくつものエピソードが複雑にからみ合ったコメディになっている。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

人間関係も複雑で、自分の嫁の弟なので、義理の弟であるはずの伸一を、遠山が「義兄さん」と呼んでしまったり、それを正そうとした伸一が「あなたは、私のおばあさんに当たるんですよ」などと真顔で返したり、そのトンチンカンなやり取りがおかしい。

全体的には、主役であるはずの森繁が意外と活躍しない不満点などもあるのだが、前述のフランキー&のり平のとぼけた掛け合いや、バカ娘を演じる横山道代の弾け振りや、これまたとぼけたフランス人を演じるファンファンなどの活躍によって、細かな笑いがぎっしり詰まった楽しい作品に仕上がっている。

上野動物園や不忍池といった上野周辺の光景や遠山が研究している「夢の未来食」クロレラも懐かしいが、印刷物の上に円筒状のメカを置くと、そのメカの下部にあるレコード針が付いたアームが自動的に回転し、ソノシートの声が出るといった不可思議な装置が登場するシーンなども珍しい。

元々この企画は、プロデューサーである佐藤一郎がかなりのグルメであったうえ、当時の東京映画には板前の腕もある脚本家などもいたため、実現したもののようである。

監督の川島雄三も研究熱心で、かなりのリサーチを積んだたらしく、劇中で、とんかつの発祥地が、実は上野である事実などが紹介されている。

最後に、森繁はじめ全員が歌う「♪とんかつの〜、脂の滲む接吻をしようよ!〜♪」という「トンカツの唄(?)」が、何とも頓狂というか、小洒落ていて楽しい。