TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

火の鳥

1978年、火の鳥プロダクション+東宝、手塚治虫原作+アニメーション総指揮、谷川俊太郎脚本、市川崑監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

とある国境。

突進してくる猪を、弓で一発で倒した天弓彦(草刈正雄)に近づき、老いてきた女王ヒミコ(高峰三枝子)のために、その血を飲めば不老不死の身体になるという火の鳥を捕まえてくれたら、マツロの国には攻めないと依頼をするヤマタイ国のスクネ(大滝秀治)とスサノオ(江守徹)、その三人が突如出現した火の鳥を目撃する所から物語は始まる。

所は変わって、クマソの国の海岸に、一人の異国風の男が漂着しているのが発見される。

まじない師(伴淳三郎)の祈祷も空しく、クマソの長、カマムシ(加藤武)の娘、ヒナク(大原麗子)は病の床に付いていた。

ヒナクの夫、ウラジ(沖雅也)は、妻の病気を直したい一身で、火の鳥を捕らえようと出かけるが、鳥にしがみついてしまった為、前身大火傷をして死亡してしまう。

異国風の男グズリ(林隆三)は医者という事で、ヒナクの弟、ナギ(尾美トシノリ)に青かびを取って来させ、それをヒナクに飲ませる。

ヒナクの病は癒え、カマムシに気に入られたグズリは、ヒナクの新しい夫となる。

しかし、ナギは、そんなグズリが、ある夜、海に出現した大量の軍船をたいまつで誘き寄せる所を見てしまう。グズリはヤマタイ国のスパイだったのである。

船から降り立った猿田彦(若山富三郎)は、村を襲撃し、村人達を根こそぎ殺害すると、長であるカマムシも倒してしまう。

ただ、子供であったナギだけは殺さず、ヤマタイ国に連れて帰るのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

今回始めて気付いたのだが、多才な俳優達が出演してはいるが、本作の主人公は紛れもなく少年ナギであり、そのナギを演じているのが、子役時代の尾美トシノリであった事だ。

声変わりする前で、小学生くらいだと思う。
大物俳優たちとの共演にも物おじせず、実にのびのびと演技をしている。

もう一方の主役は若山富三郎で、何時しかナギと心を通わし、途中からは実の父親のようにナギに愛情を注ぐ猿田彦の姿は、子連れ狼を連想させる。
高天原の長、ジンギには仲代達矢、顔を醜く化粧して彼に捕らわれ、共に行動する踊子ウズメに由美かおる、ヒミコの妹で呪術師のイヨに草笛光子、ヒナクとグズリの息子タケルに田中健、男に化け、ナギと共にヒミコを暗殺しようとするオロに風吹ジュン、ヒミコに仕える女官たちに、ピーター、カルーセル麻紀、木原美知子、さらに音楽はミッシェル・ルグラン、衣装担当はコシノ・ジュンコ、特撮は中野昭慶…と、堂々の大作風である。

大作風…ではあるのだが、何故か、いくつものエピソードを羅列しただけの印象が強く、全体的なまとまりも画面的なスケール感にも乏しい。

物足りなさの原因の一つは、肝心の火の鳥がほとんどまともに描かれていない点にある。
絵をぼかしてみたり、作り物の羽を逆光で撮ってみたり、はっきりいって、ごまかしているとしか思えないのである。

ナギに襲い来るアニメの狼達が、突然ピンクレディの「UFO」を歌い出したり、初めて出会った馬という動物に乗ろうとして振り落とされたナギが、突然アニメの「鉄腕アトム」になったり…といった、ギャグが浮いて見えてしまうのも気になる。
アニメの技術は全体的に稚拙というしかなく、実写との合成には無理がある。
テレビの「バンパイア」以下のレベルではないか。

この作品当時、すでに60代であった市川崑監督のチャレンジ精神と感性の柔軟さには敬意を感じるものの、はっきりいって成功しているとは思えない。

酒に酔って暴れる江守徹の演技は、今観ると何故かパロディに思える所がおかしい。