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ポルターガイスト

あの名作といわれる「E.T.」と、同時進行で作られた作品。

現場に絶えず現れては、事細かにアドバイスを監督のフ−バーに与え、実質的には、ほとんど、スピルバーグが作ったといって良いような状態だったらしい。

「E.T.」がスピルバーグの営業用表向き映画だとすると、こちらは彼が本質的に大好きな本音映画。

お坊っちゃんが夢見るタイプの「モンスター&お化け映画」になっている。

裏「E.T.」とも呼べるような位置付けができるかも知れない。

こちらの方が、「E.T.」よりも、アイデア満載の大サービスである事からも、製作者たちのノリようがうかがえる。

当時、この作品の性格を良く知らないで観ていたら、意外にも「大特撮映画」だったので、大喜びした記憶がある。

正直な所、「E.T.」よりもこちらの方が好き。

エンドロールで、「スピルバーグ」の名前が出た時、劇場中から一斉に拍手が起こったのも、いかにこの作品が観客に受けたかという証として、いまだに強烈に頭に焼き付いている。

ILMが全力をあげてSFXを担当しているが、例えば、髪が逆立っている馬の骸骨のような幽霊が出現するシーンは、作り物を水中で撮影した素材を合成したもの。

部屋の壁を、人間が天井まで貼り付いたように転げ回るシーンは、「2001年〜」でも使用された、部屋自体を回転させるビックリハウスのような装置を作り、その中で撮影したもの。

キャメラの移動とズームを組み合わせ、母親が廊下を走っても走っても、向こう側が遠のいて見える、いわゆる「逆ズーム」(最初に使ったのは、ヒッチコックらしいが)も、効果的に使われている。

最後に、家が「内側に爆発するシーン」は、ミニチュアの家の各パーツ(屋根とか、壁とか、あらかじめ、いくつもの部分に分解するように作られた部品に、内側からピアノ線を何本も張っておき、その線の根元を一本に束ねたものを、黒いメガホン状の穴に通して、後ろから引っ張ったもの)

しかし、こうした凝った仕掛けの数々よりも、個人的には、母親が台所でさり気なく動くのに合わせ、一瞬キャメラが動いて、元の位置に戻った時、彼女の後ろにあったテーブルに、複雑に組み合わせた椅子の山が出現するシーンなどに驚いた記憶がある。

あらかじめ用意されている椅子の山を、キャメラが動いた数秒間の間に、スタッフ総掛かりでセッティングしただけだとは分かっても、下手なSFXよりも、その稚気に感心したのである。

女の子が霊界に捕らえられ、家の中に、その声だけが聞こえる…という辺りのアイデアは、ミステリィの女王アガサ・クリスティの古い怪奇小説にもある。

西洋ではポピュラーな怪奇ネタなのかも知れない。

アイデア&新旧取り混ぜた特撮大全集的娯楽映画の決定版。

老若男女誰が観ても楽しめる作品だと思う。