1956年、石原慎太郎原作+脚本、井手俊郎脚本、堀川弘通監督作品。
石原慎太郎東京都知事が作家としてのデビュー当時、原作、脚本、主演の3役をこなした話題作。
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裕福な家の次男坊、三島直樹(石原慎太郎)は、パパから買ってもらったバイクをぶっ飛ばし、ごきげん。
家で大好きなママ(三宅邦子)に注意されても、「じゃあ、まだ、これに乗ってろっていうの?」と、三輪車を取り出して、それに乗ってみせる甘え振り。
そんな直樹が最近イラついているのは、秀才の兄、正樹(平田昭彦)が、クラスメイトの吉沢の姉、妙子(若山セツ子)との婚約を一方的に解消した後、すぐ別の女性と婚約してしまった事。
原因は、吉沢姉弟の父親が事業に失敗した為だった。
直樹は、計算づくで結婚相手を選んでいる兄の姿勢に強い不快感を持っていただけではなく、最近パパとママの様子も空々しく、何だか家族全体の雰囲気がぎくしゃくしているのを感じ取っていたのだった。
直樹はそんなイライラ感を、学校でのサッカーにぶつけたり、恋人杏子(司葉子)とのデートや、不良仲間たちとのいかれた遊びで紛らわせていた。
そんな直樹の前に、一人の妖艶な大人の女性、節子(高峰三枝子)が現れる…。
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何不自由なく育ってきた青年が、一夏の内に、身近な人たちの醜い側面を次々と発見していき、人間不信に陥って行く様を描いている。
まだ幼さが残る石原慎太郎は、おせじにも演技がうまいとはいえないまでも、原作者が洒落で映画出演している…というような域を完全に越えていて、一役者としてきちんと演技しているのにまず驚かされる。
劇中、節子から「坊や」呼ばわりされている事からも分かるように、本作での慎太郎は、あけっぴろげな愛嬌を持つ裕次郎とは又違った、はにかみ屋独特の可愛らしいキャラクターを持っているのだ。
ちょっとした表情や仕種などは、今現在とほとんど同じなのもおかしい。
裕福な家の兄弟で、兄が秀才、弟がちょっと不良…とくれば、誰が考えても、これは石原兄弟とイメージを重ねるはずで、慎太郎はこの作品で、弟、裕次郎を演じているのである。
本作を観る限り、それはそれで不自然には感じられない。
慎太郎には、裕次郎とは又違った魅力と存在感があるからである。
もう少し、俳優としても、仕事を続けて欲しかったような気もする。
また、三島家のお手伝いさんを演じている千石規子や、直樹の不良仲間を演じる佐藤允の若々しさにも注目。
全体的に地味な印象はあるものの、青春ものとしては良く出来ていると思う。
