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けんかえれじい

1966年、日活、新藤兼人脚本、鈴木清順監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和10年頃の岡山が舞台。

中学生、南部麒六(高橋英樹)はカトリック信者であるにも拘らず、喧嘩修行に明け暮れる毎日。

喧嘩の師匠スッポン(川津祐介)に勧められ、硬派を旨とするOSMS(オスムス)団に入団、さらに男を磨く事になる。

そんな向う所敵なしのキロクが唯一弱いのが、下宿先の女学生、同じカトリック信者である道子(浅野順子)だった。
キロクは毎日、道子の事で頭が一杯なのだが、硬派というポーズを取っている手前、率直に気持ちを打ち明けられない。しかも、その道子からピアノを教わるはめになり、身も心もガチガチに…。

やがて、キロクは学校で問題を起こし、喜多方中学へ転校する事になる。

しかし、会津精神などともっともらしい御託を並べているばかりの御当地でも、キロクの喧嘩魂は健在。

本質は閉鎖的で底意地の悪い級友たちの本性を喝破し、地元の硬派相手に大立ち回り。

そんなキロクだったが、そこでも故郷にいる道子への思いは絶ちがたく、拙い筆で手紙をしたためるのだった。

やがて、そんな彼らにも、軍靴の響きは迫ってきていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

大柄で生真面目そうな高橋英樹が、元気と煩悩に振り回される、ちょっと頭が弱そうな中学生を懸命に演じている姿が楽しい。

当時の一般的な日本少年たちの気風というか、質実剛健、何やら日々、突っ張って生きる事のみを良しとしていた時代の雰囲気が、ユーモラスかつテンポ良く描かれている。

香港アクションなどを見慣れている今の眼で観れば、高橋英樹の動きはいかにも硬くて、ぎこちなく感じられないでもないが、冒頭部分のキロクの喧嘩修行の場面などは、何やら初期のジャッキー映画を彷彿とさせるし、道子へのたどたどしい恋情表現などは初期のブルース・リー映画を連想させる。

主人公のどこかとぼけたようなキャラクター、連続する邪気のない喧嘩シーンの爽快感など、クンフー映画との共通項は多い。

60年代頃の日本映画は香港映画などにも相当影響を与えているらしく、ひょっとすると、本作がブルース・リーやジャッキー映画などの原点なのでは?…とも思われる。

喜多方中学へ転向したキロクが、教室で初めて担任からクラスメイトたちに紹介されるシーンなど、画面の一方が突然黒く塗りつぶされ、それが画面左右にクルクル移動するなど、清順監督らしい遊びも顔を覗かせている。

理屈抜きで楽しめる青春活劇の痛快作。