1979年、にっかつ、中上健治原作、田村孟+渡辺千明脚本、藤田敏八監督作品。
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お茶の水ゼミという予備校の国立理科S科のテスト結果がはり出されている。
トップは釧路出身の有島桂(森下愛)、そしてビリは桑田敦夫(永島敏行)であった。
敦夫は下心を含んだ興味本位から桂に声をかけ、2人は夜の海へ出かける。
そこで2人が出会ったのは、暴走族に絡まれている一人のバイク青年であった。
その青年は、2人と同じ予備校の在校生で森本英介(小林薫)。
彼は暴走族に臆する事なく、相手のリーダーに、石を抱いたまま海の中にどれだけ進んでいけるか勝負しようと言い出す。
結果は英介の勝ち。
彼らが立ち去った後、敦夫と桂は、何気なく同じ行為をしてみる。
途中でしらけ出した敦夫、逆にどこまでも真剣な桂。
そんな2人の姿を見かけた散歩中の老人(小沢栄太郎)が心中と思い込み、自ら着物を脱ぐと海に飛び込み2人を助ける。
その老人は自宅で2人に黙って小切手を渡し別れる。
この珍事の後、2人は自殺ごっこに夢中になって行く…。
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ふとしたきっかけにより、ひたすら「死」を弄ぶようになる一組の男女、さらに彼らの疑似心中未遂事件をきっかけに知り合う事になるもうひと組の男女。
70年代という時代と、当時の受験生という両方に共通した不安定感、しらけ感、無気力感が前編を覆っている。
良い大学に入り、良い会社に入り、良い相手と結婚し、良い家庭を築き…といった、いわゆる「生きる道標」なんて、本当に自分が独自に見い出したものでもない。
では何故、自分は大学なんて目指しているのか?さらに、何故、自分は毎日生きているのか…、こういた問いかけは、青春期、誰でも一度はぶつかる壁であろう。
同じような苦悩を経験した者であれば、この作品の内容は絵空事ではない。ものすごくリアルであるとも言える。
本作に登場する若者たちの行為を、幼い愚かな行動と見るか、ある意味純粋で共感できると見るかは、観る人の年令、生きてきた道程によって分かれるものかも知れない。
森下愛と永島敏行も魅力的だが、新人時代の小林薫の存在感が印象的。
今の自分自身を見つめ直したくなる青春映画の秀作である。
