当初、ヒロイン役として撮影に入っていた藤谷美和子が、突如「プッツンして(?)」降番。
急遽、新ヒロインとして、当時全くの無名だった有森也実が大抜擢された現実のドラマチックさに比べ、本編自体は締まりが悪く、残念ながら、大味な「お涙頂戴もの」以上にはなっていなかった。
大船蒲田全盛期の撮影所風景を描いているのだが、こういう監督がいた、こういう事もあった…というような、かつてのエピソードの羅列と、小春(有森)の成長物語を両方平行して描いているだけで、作品としてのポイントが絞り切れておらず、散漫な感じが残る。
はっきりいえば、「昔は良かった」…という松竹と山田洋次監督自身の、多分に感傷を交えたエピソード集というしかない。
それに、渥美清扮する小春の父の姿が、あまりにも古くさい「泣かせ芝居」にしか見えないのも辛い。
つくづく「松竹が衰退した要因」そのままを、再確認させられたような内容であった。
それでも、映画好きにとっては、参考になったり、嬉しくなるような歴史的エピソードも描いてあり、それなりに楽しめない訳でもない。
大作に有りがちな「凡作」…と片付けるには惜しい気もするが…。
山田監督の才気が光る…とは、とても言えない作品であるのも、また確かであろう。