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影武者

1980年、黒澤プロ+東宝映画、井手雅人脚本、黒澤明脚本+監督作品。

「スターウォーズ」のルーカスや、「ジョーズ」のスピルバーグといった、当時世界的に注目されていた若手監督たちが、口をそろえて「黒澤明」の名を尊敬を込めて発言しているのを知った日本人たちは、改めて「世界の黒澤」の存在を注目するようになる。
元々、主役、信玄役には勝新太郎がピッタリ!と、企画されていたような部分があり、撮影途中で彼が降番した段階で、この作品の「核」が失われてしまった事は否めない事だと思う。
往年の黒澤作品のダイナミズムを期待した観客にとっては、「絵コンテ」そのままを再現しただけのような、絵画的、静的な演出には戸惑いを覚えた者も多かったのではないか。
やはり、カラー作品になって以降の黒澤は、「アクション」よりも「絵画的画面」に興味が移っていたようで、そうした作家的変貌と、観客の期待する「黒澤像」が、明らかにズレてきた時期の作品といえよう。
ストーリー的には起伏に乏しく、ショーケン(萩原健一)のセリフの聞き取り難さなど、気になる点も多いが、新人、隆大介演ずる信長や、一般から公募された素人役者たちの、妙な存在感など見所も少なくなく、全体として「傑作」とは言い難いながら、それなりに見ごたえはある作品といえよう。
仲代達矢も期待に答えようと、奮闘している様子は伺えるが、やはり、この作品での主役は「勝新」以外になかったように思える。
黒澤にとっても勝新にとっても、さらにいえば、邦画全体にとっても、「失うものが大きかった」作品だった…といえるのではないだろうか。