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獣人雪男

1955年、東宝、香山滋原作、村田武雄脚本、本多猪四郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

洞窟内から見た雪山の様子が絵で描かれ、ゆっくりキャメラが洞窟から外に出て、横にパンする感じで雪山の絵が移動して行く上のタイトル文字が重なる。

雨に振り込められたとある地方の駅の改札口に、一人の男が「K大の山岳部が降りて来たはずだが?」と、改札口にいた駅員(日方一夫)に尋ねる。

その駅員に教えられ待ち合い室に入って来た男は、コートを脱いで手近の机に掛けるが、そこに白い布に包まれ「武野」と記された遺骨箱があるのに気づき、慌ててその持主と思われる女性、武野道子(河内桃子)に詫びると、コートを引っ込める。

動物学者の小泉博士(中村伸郎)に気づいた自分はその男は名刺を渡し、自分は新聞記者だと打ち明けて、今回の山岳捜索の顛末を聞き出すとする。

小泉博士は、飯田君から話すのが順序だろうと水を向ける。

すると、その飯島と言う学生(宝田明)は、古びた手帖のようなものを記者に渡し、そんな事が現実にあるでしょうか…と、問いかける。

その武野が遺した手帖には、この世のものとも思えない怪物に会った…と記されてあった。

事の起こりは、正月の休暇中に遡る…と飯島は続ける。

雪山にスキーに訪れていた武野(岡部正)と梶(山田彰)は、残りの三人、飯島、武野の妹道子、中田(堺左千夫)をヒュッテに向わせると、自分達二人は、源じいさんの家に寄ってからヒュッテに行くと、グループから離れて先に滑って行く。

その後、目的地のヒュッテに到着した飯島の姿を見た山番、松井(瀬良明)は、ちょうど良い時にやって来た、もうすぐ嵐になると教える。

その後、吹雪いてきた山の様子を心配しながら武野と梶を待つ三人だったが、二人がやって来る気配はない。

心配して、松井が源じいさんの家に電話をするが、どうした訳か誰もでない。

その後も、飯島が何度も電話してみるが、全く応答がない。

そんな中、兄たちを案じて、窓の外を凝視していた道子が獣のような陰を見かけ悲鳴をあげる。

しかし、ヒュッテに入って来たのは、毛皮を着込んだ一人の女性で、山が荒れて来たので少し休ませてくれと言う。

彼女は、この辺では顔見知りらしく、食事を誘う松井だったが、女はいらないと断わり、だいぶん落ちていると言う。

その女の仲間たちの表現で、「雪崩」の事を言っているらしい。

どの辺かと松井が問うと、源じいさんの家との途中にある「炭焼き地獄」辺りだと言う。

夜中の12時半まで待ったが何の進展もないので、今夜はどうしようもないと、ヒュッテにいた全員があきらめかけた時、いきなり電話が鳴り響く。

すぐさまその電話を取った道子が受話器に「お兄さん?」と呼び掛けると、相手から、この世のものとも思えない悲鳴が聞こえて来る。

さらに銃声が電話の向こうから聞こえたので、代わりに受話器を受取った飯島は、又しても悲鳴を聞く。

唯事ではないと気づいた松井は、表に下げてある鐘を打ち鳴らすが、その隙に、先ほどの女はヒュッテを抜け出して雪の中に消えて行った。

翌日、嵐がおさまったので、地元の警察隊に同行してもらい、源じいさんの家にやって来た一行は、荒された室内で死んでいる源じいさんの身体を発見する。

さらに、打ち破られた扉の下の雪には、何とも知れない巨大な足跡が遺されていた。

松井たちは、取りあえず、火を焚き始め、中田は、梶の遺品を発見する。

道子は、兄のヤッケがかかっているのを発見し、二人はこの家に到着していた事が判明する。

さらに破壊された入口付近に、得体の知れない動物の毛が付着している事を発見。

そんな所に、梶の遺体を発見したと、警察隊が運び込んで来る。
どうやら、雪崩に巻き込まれ絶命したようだ。

その後、一昼夜に渡り、武野の捜索が行われたが、その姿は発見されず、こうなったら春の雪解けを待つしかないと全員感じていた。

画面は、現在の駅に戻る。

小泉は、発見された毛は、現在日本に生息するいかなる動物のものとも違う事が分かったと、記者に説明する。

さらに、記者に渡して見せたのは、源じいさんの家に遺されていた謎の足跡の写真と、ヒマラヤの雪男の足跡とされる写真だった。

記者は、では、この日本にも雪男が存在するのかと尋ねる。

画面は、雪解けを迎えた山に戻る。

小泉博士、品川(山本廉)、飯島、中田、松井、道子に加え、今回の捜査には、道子の弟、信介(笠原健司)も参加していた。

途中の山小屋で冷たいものを注文して休息した一行の中、道子は、檻に飼われている小猿を発見する。

一方、その一行の姿を見て、慌てて別室にいた親方と呼ばれる男、動物ブローカーの大場(小杉義男)に報告しに行った男(谷晃)がいた。

実は彼らも、得体の知れない動物の事を嗅ぎ付け、先に生け捕ろうと山に登って来ていたのだった。

小泉博士たちの到着を知った大場は、この勝負に負けたら元もこもないと言い、すぐさま仲間を出発させる。

小泉博士一行は、とある谷間にベースキャンプを設営する。

その様子を、草陰から監視していた大葉は、子分に見張りの続行を命じて立ち去るのだった。

そのベースキャンプを中心に、さっそく周辺一帯の捜査に取りかかった一行だったが、全く、武野の遺体は発見できず、案内人たちは、ガラン谷に入り込んだのかも知れないと噂し始める。

その夜、のんきに歌を歌ってくつろぐ学生たちとは対称的に、案内人たちは、そこへ行った者で帰って来た者はいない、別称「人喰い谷」とも呼ばれるガラン谷にはとても怖くてこれ以上は入れないと、松井や小泉たちに説明していた。

これに対し、謎の動物発見に意気込む小泉博士は、捜査は徹底的にやるべきだと主張する。

そんなキャンプの様子を遠くから伺っていたのは、謎めいた白髪の老人ともう一人の男だった。

翌日、山に銃声が響き渡る。

驚いてその音の方に駆け寄って来た飯島たち一行は、何かいるとおびえ、銃を持った中田の姿を見つける。

草をかき分けてみると、そこに倒れていたのは熊だった。

しかし、その熊の死体を検分した小泉博士は、この傷は鉄砲のものではないと断定する。

その時、突然近くで落石が発生、周囲には聞いた事もない鳴き声とも悲鳴ともつかぬ声が響き渡る。

大学のメンバーたちは落石の難を逃れるが、袈裟次と呼ばれる案内人の一人が足に重傷を負ってしまう。

空の雲行きが怪しくなって雷鳴が響くその夜、一行はキャンプで話し合っていた。

小泉博士は、昼間の声からしても、怪物は存在し、武野はその怪物に連れ去られた可能性が他界と発言する。

問題は、捜査を続行するか、中止するかだ。

案内人たちは、全員、怪我をした袈裟次を担いで山を降りてしまった。

品川と道子は、もう止めようと言う。

しかし、飯島は独り続行を主張、その姿勢に品川も意見を翻し、小泉博士は今後は慎重に行こうと、取りあえずの続行が決まる。

その様子を、見張っていた大葉の配下の男二人が親分に報告に走る。

それを聞いた大場は、人のやらない事をしなければ、大場商会の沽券に関わると、意気込むのだった。

会議が終わった後、道子と信介は、一緒のテントで先に寝る事にする。

やがて、寝入った道子のテントに何者かの影が近づく。

窓から覗き込んだそれは、恐ろしい雪男(相良三四郎)であった。

雪男は、しばらく寝ている道子の様子を観察した後、テントに手を差し入れて、道子の顔を触ろうとする。

その気配に目覚めた道子は、間近に雪男の姿を見て絶叫する。

その声に異変を察知した、見張りの飯島は、深追いを止めようとする仲間たちの声も聞かず、銃を持って、逃げる雪男を追うが、途中で足を滑らせ、滑落してしまう。

テントでは、飯島に位置を知らせる叫び声を上げ続けるが、飯島は戻って来ない。

その頃、崖下に落ちて、意識朦朧と辺りを徘徊し始めた飯島は、大場たち興業師仲間が、大きな罠を仕掛けている所を目撃する。

観られたと知った大場の配下たちは、飯島を捕えようと、その場で殴り合いの喧嘩になるが、揉み合いの果てに、飯島は又しても、さらなる崖下へ落ちてしまうのだった。

帰って来ない飯島を案じた道子は、とても寝てなんかいられないと、まんじりともしないまま夜を明かす事になる。

翌朝、目覚めた飯島は、見知らぬ住まいの床に寝かされていた。

そこへ粥を持って入って来たのは、いつしかヒュッテで出会った山暮しの女チカ(根岸明美)だった。

しかし、続いて入って来た白髪の老人(高堂国典)によって、そのチカは外に連れ出される。

老人は、山の掟を忘れたか、チカの行為を叱りつけていた。

里の人がガラン谷に入って来たら、今後、自分達の仲間は、猟等出来なくなり生きて行けなくなると、仲間たちもチカを攻め立てる。

老人はチカに、山の主に持って行けと言って食料用の兎を三匹持たせる。

チカが出かけた後、山暮しの人々は、飯島の寝ている小屋に侵入して来る。

その後、とある洞窟に近づいたチカは、ホ〜!と声を上げ、獲物を入口付近に置くと立ち去る。

そのチカの声で、洞窟の奥から出て来た雪男と、その息子らしき子供雪男は、置かれてあった獲物を、当然のように取り上げるのだった。

やがて、山里に帰って来たチカは、寝ているはずの飯島の姿がいなくなっている事に気づき、お爺にどこへやったのかと聞きに行くが、お爺は、そんなチカを棒で打ち付けるだけだった。

その頃、ベースキャンプでは、クヌギ林の所で見つけたと、飯島が持っていた猟銃を見つけていた。

一方、当の飯島は、鳥が飛び交う谷のがけっぷちに、口を布で覆われ、後ろ手に縛られて釣り下げられていた。

そんな飯島を見つけようと、一人山中を捜していたチカに気づいた大場と部下の一人は、さり気なく近くに近づくと、チカは二人に、学生を知らないかと問いかけて来る。

すると、瞬時に知恵を働かせた大場、知っている、自分達の仲間だと答えると、でかい猿みたいな動物の居場所を教えてくれたら会わせてやると答える。

これにはさすがに躊躇するチカだったが、そんな迷いを見た大場は、自分が持っていた指輪を無理矢理チカに渡す。

すると、チカは、石を谷向こうの洞窟目掛けて投げた後、逃げるように立ち去る。

その頃、飯島が綱で谷に吊されていた崖の上に、仕留めたらしき鹿を背負った雪男が通りかかり、綱に気づくと、それをグイグイ手繰り寄せ、飯島の身体を崖の上まで持ち上げると、その場に横たえ、縛られていた綱を引きちぎってくれる。

意識もうろう状態の飯島は、又鹿を背負って、悠然と立ち去って行く雪男の様子を呆然と眺めていた。

その頃、チカに教えられた洞窟の外で様子を伺っていた大場たちの前に、洞窟の中から子供雪男が出て来てうろつき始める。

すぐに、草影から飛び出した仲間たちが、その子供を取り押さえにかかる。

集落に戻って来たチカは、お爺からもらった指輪を見せるように命じられていた。

何とか、渡すまいと抵抗するチカだったが、とうとう、手からこぼれ落ちた所を見つかってしまう。

さすがに度重なるチカの無分別な行動に怒ったお爺は、もう勘弁ならないと、強くチカを打ち据えるのだった。

洞窟に戻って来た雪男は、声を掛けて子供を呼ぶが返事がないのをいぶかっている様子。

そこへ入口の方から銃声が響き、その音で入口付近に出て来た雪男に、子供の鳴き声を聞かせる大場。

その声に引かれて、外に出て来た所を、木の上に仕掛けていた網を落下させ、雪男の動きを封じた大場の仲間たちは、すぐさま眠り薬の仕込んだ布を雪男の顔に押し付け眠らせてしまう。

この大捕り物の最中、縛っていた子供雪男は、自力で綱を切って逃げ出していた。

そこへ、「何をしている!」と怒鳴って迫って来たのは、お爺を先頭にした山暮らしの人々。

しかし、問答無用で銃を発砲した大場の銃弾がお爺の腹に当たり、驚いて駆け寄ったチカに、えらい事をしてくれた、村はこれでお終いだと虫の息のお爺は答える。

その後、捕まえた雪男の手には手錠をはめ、そのままトラックの荷台に積んだ檻に入れた一行は、仲間を乗せたジープを従え、山道を降り始める。

その様子を木の上から見ていたのが、子供雪男。

彼は、真下に、檻を乗せたトラックが近づいた瞬間、檻の上に飛び下りて、檻の中で眠っている雪男を起こそうと、檻の外から手を差し伸べる。

この様子に気づいたのが、後ろを走っていたジープの連中。

何とか、その子供を捕まえようと、後ろからロープを投げ付けたり、前のトラックに知らせようと声を上げたりしていたが、その異変に気づいたトラックの大場が運転席で気づき、車を止めさせる。

難なく捕まえた子供も、檻の中に入れて走り出したトラックの運転席では、獲物を捕えて上機嫌の大場が、アメリカ中を興業して廻ろうとか、その後はイギリスやフランスだ。何でも、フランス女は優しいんだとよ、と軽口を運転手相手に叩き始める。

そんな中、麻酔から目覚めた雪男が、突然、檻から運転席に手を伸ばし、運転手の首を後ろから締め始める。

すぐに息絶えた運転手に続き、今度は大場の首も締め始めたので、慌てて銃を取り出すと発砲して、車を止める。

雪男は檻を難なく破って外に出てしまう。

その時、後ろを走っていたジープが崖から落下。

その騒ぎに声を上げていた子供を、大場は後ろからつい射殺してしまう。

これに怒った雪男は、トラックを持ち上げると、崖下に突き落としてしまう。

さらに、大場に近づくと、その身体を楽々と持ち上げて、崖下に投げ落とす。

そして、動かぬ子供の死体を哀し気に抱えると、山に戻って行くのだった。

子供の死体を洞窟内に安置した雪男は、怒りのまま、山の住民たちの集落を襲撃する。

そこには、銃の傷の手当てをして横たわっていたお爺やチカもいたが、辺りはたちまち、火炎に包まれて行く。

何とか、お爺を、倒れた住居から引き出そうとしたチカだったが、もうお爺に力は残っていなかった。

その山奥の里が炎上する明かりは、ベースキャンプからも見えていた。

そこでは、戻って来た飯島が、不思議な動物に救われた話を、メンバーたちにしていた。

それを聞いた小泉博士は、その動物を獣人雪男と名付け、不思議な集落の存在と共に、大変な事態になったと案じるばかり。

そんなベースキャンプに、雪男は近づいて来る。

仲間は猟銃で撃とうとするが、飯島は撃つなと止める。

やがて、中田が襲われたという声が届き、メンバーたちが一斉にそちらに向おうとする中、ここを動いては行けないと、猟銃を信介に託して、道子と共にテントに残して行った飯島だったが、その信介が、ちょっと場所を離れた隙に、雪男は道子をさらっていってしまう。

翌日、さらわれた道子を追って、ガラン谷にやって来た飯島たちメンバーは、焼け落ちた集落の中で、独り祈りを捧げているチカを発見する。

近づいて訳を尋ねると、お爺は山の主に殺された、村の集は全員、沢の奥へ向ったと話し泣き崩れる。

そのチカを勇気づけ、雪男の住む洞窟に案内させた一行は、洞窟の中でを捜査しはじめるが、雪男も道子の姿もない。

やがて、洞窟の奥で人骨を発見、その傍にあった武野の遺品と手帖を発見する。

泣き崩れる弟の信介。

手帖には、怪物を追って雪山を走る内に雪崩れに襲われたと記してあった。

気がついたら、自分の身体はここに運ばれており、怪物は自分に親切にしてくれたが、やがて、自分は息を引取るだろうとも。

さらに、雪男の子供の死体も発見した一行は、岩に生えていたベニテングダケを発見。

小泉博士は、この毒きのこが、雪男一族を滅ぼした原因だろうと推測する。

何等かしらの偶然で生き残った雪男は、寂しさに耐えかね、源じいさんの家にやって来たのではないかとも。

雪男の子供の死体を調べていた一行は、銃で撃たれて死んだ事も知る。

そこへ帰って来たのが、道子を抱えた雪男だった。

それを思わず撃ってしまった信介を止め、雪男の動きに注視した一行だったが、道子を抱えた雪男は崖をよじ登ると、溶岩が煮え立つ沼の真上にある穴の縁に立って、こちらを伺い始める。

何とか、そこに近づいて、チカを救い出そうとする飯島だったが、それを止めたチカが、自分が行ってみると言い出す。

女が行った方が警戒しないし、あんたの為にやってみると飯島に話しかけたチカは、ゆっくり雪男に近づいて行く。

すると、それまで抱えていた道子を手放し、雪男はチカを捕えようとする。

抵抗するチカと雪男は、揉み合った形のまま、穴から落下してしまう。

話を聞き終わった記者は、夢から醒めたように、礼を言っていた。

そこへ「間もなく、汽車が来る」との駅員の声が響き、一斉に待ち合い室から立ち上がった一行に、記者は「雨があがったようですね」と声をかけるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

前半のミステリアスかつ怪奇味たっぷりの描写は期待を膨らませるのだが、如何せん、途中から雪男本人が姿を現してしまうと、単なる稀少動物哀歌みたいなサスペンス味の低い物語になってしまい、スペクタクルシーンの少なさもあって、凡庸な印象の作品になってしまっている。

見終わってみると、冒頭で、源じいさんが殺された理由が良く分からないままなのも気になる。

劇中で語る小泉博士の推論のように、雪男は寂しさに耐えかねて源じいさんの家に行ったのなら、いきなり相手を殺すと言うのもげせないし、人間側が雪男を怒らせるような行動に出たと言うなら、追って来て怪我をした武野を、雪男が親切にもねぐらの洞窟に運んで来て面倒を見るという行動が理解しにくくなる。

雪男の一族が、毒きのこで死滅したという説明もピンと来ない。
動物は本能的に、その手の毒には手を出さないと思われるからだ。

第一、一族がいたと言う事は、かなりの年月、その種族は生き抜いて来ていた訳で、毒きのこも古くからある植物で新種のものでもないので、そんなものを全員が不用心に食べると言う事自体がちょっと信じられない。

その他にも、山暮しの人々の描写も良く分からない。

下界の文明とは隔絶して生きているのなら、チカが、ヒュッテの松井に良く知られていると言うのがげせない。

松井は、明らかに、チカの仲間たちやその独特言葉遣いなどを知っている様子。

一方、捜査隊に加わった案内人たちは、ガラン谷の向こうの事は何も知らない様子。

少なくとも、松井は、谷の向こうにチカの仲間が住んでいる可能性に言及しなければおかしい。

大場たち、悪人の描き方もパターン以上のものではなく平板。

悪人の仲間の一人に、口の不自由な人間がいたりするのも、昔風のステレオタイプの悪人像であって、今見ると、確かに後味は悪い。

人物造形は、全体的に紋切り型で、それが、話の通俗性を強調してしまっているのが惜しまれる。

製作、田中友幸。脚本、香山滋。監督、本多猪四郎。監督助手、岡本喜八。特撮、円谷英二。主演、宝田明&河内桃子…まさに、歴史的名作「ゴジラ」(1654)の再現ともいうべき、最強のメンバーが再結集した1955年公開の異色作ではあるが、香山滋の脚本が古臭い上に凡庸で、等身大着ぐるみの雪男のインパクトも乏しく、さしもの本多監督も料理しあぐねた感が強い。

本格的な雪山ロケや、当時の東宝御自慢の広大なオープンセットなどを使用した、本格的な異境ロマンを目指しているのだが、さすがに山奥の設定ではダイナミックなアクションや、スピーディーな展開も望むベくもなく、盛り上がりに欠ける冗漫なドラマに仕上がってしまっている。

円谷の特撮も、雪崩シーンなど、白黒作品では、実写と区別がつき難い見事なカットがある反面、見慣れたミニチュア破壊シーンなど、いただけないカットも混在していて、特に見ごたえがある作品ともいえない。
雪男が大場を持ち上げるシーンのマット合成や、道子を抱いたまま崖を登るシーンはストップモーションのようにも見えるが、そうした特撮が、有効に使われているとも思えない。

今となっては、「山の一族」の表現など、一般に公開しにくい部分があるため、「封印された作品」と化しているが、この出来の悪さや後味の悪さを観てしまうと、それも仕方ないようにも思える。


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