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ゴー!ゴー!若大将

加山雄三主演「若大将シリーズ」第11作。
1967年、東宝作品。
スポーツあり、恋あり、歌あり…の純朴な青春ものながら、初期作品が、当時人気絶頂だった怪獣映画の併映として公開されていた事などもあり、子供たちから若い女性までを巻き込んだ、空前の若大将ブームが過熱していた頃の一本である。
すでに、シンガーソングライターとしても実績を持っていた加山の歌声が、タイトルバックから軽快に始まり、シリーズ絶頂期に作られた作品らしい、洗練された演出を感じる。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼


今回の若大将は陸上部に所属しているが、事故を起こして出場不能になった、自動車部の青大将(田中邦衛)の身替わりに、カーラリーに出場する事になる。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
本編の映像的な魅力は、このカーラリーの部分にあり、鈴鹿、京都、名古屋、飛騨高山などを車が走り抜ける「御当地もの」としても楽しめるように作られている所であろう。
一方、いつものように、若大将がひょんな事から知り合った澄ちゃん(星由里子)と、恋敵役、京奴こと浜木綿子との間の三角関係も相変わらず…といった風に描かれており、定番のストーリー自体に、特に目新しい部分はないと思える。
本編の芝居としての見所は、何といっても、事故で怪我を負いながらも、澄ちゃんに言い寄る青大将のバイタリティと、若大将の恋人と勘違いし、芸者の京奴にすっかり骨抜きにされてしまう親父役の有島一郎両名の芸達者振りにつきる。
二人とも、まだまだ元気一杯で、熟練したコメディリリーフ振りを発揮しており、ぶっきらぼうな演技しか出来ず、単調になりがちの若大将の芝居を補ってあまりある活躍を見せているのが嬉しい。
そうはいっても、例えば、澄ちゃんとのデート中、いきなり、踊る若者が周囲に脈絡もなく現れ、若大将が平然と歌い出す…というような、ミュージカルまがいの場面も、今見ると珍妙で、それはそれで楽しめないではないのだが…。
ラストはいつものパターン通り、正月恒例の駅伝で苦戦を強いられている若大将が、誤解が解けて応援しにきた澄ちゃんの姿に奮起し、勝利を手にする…というもので、個人競技という事もあるし、また前半のカーラリーシーンがあるだけに、締めの見せ場としてはやや地味な印象は否めない。
全体として、車、若者風俗、スポーツウエア、音楽…と、流行の変化が激しい素材を扱っているだけに、今見ると、さすがに古めかしく感じる部分は多いが、逆にいえば、60年代当時の雰囲気が興味深く、新鮮に感じられないでもない。
作品として、シリーズ中、特に抜きん出た面白さがある…というほどのものではないが、シリーズ作品特有の、お馴染みキャラクターのお馴染みの展開を楽しむには十分な作りになっており、若い時代の加山雄三や田中邦衛の魅力を知る手がかりにはなりえる作品だと思う。