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続姿三四郎

1945年、東宝、富田常雄原作、黒澤明脚本+監督作品。

黒澤明のデビュー作「姿三四郎」の続編。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

乗客のアメリカ人とトラブルを起こしてしまった車引きの左文字大三(石田鉱)と、2年間の旅から修道館へ戻る途中、偶然通りかかった姿三四郎(藤田進)が出会うシーンから物語は始まる。

喧嘩腰で向って来たアメリカの水兵を海に投げ飛ばした三四郎は、後刻、宿泊していた宿へ押し掛けて来た左文字から柔道を教えてくれと懇願され困り果てていた所へ、アメリカ領事館の布引好造(菅井一郎)という男の訪問を受ける。

日米親善の為、アメリカ人のスパーラー(拳闘)の選手と試合をやってくれないかというのであった。
固辞する三四郎であったが、一応見聞の為、試合会場に赴くと、そこでは、修道館の柔道に押されて食べられなくなった古いタイプの柔術家が、金の為にアメリカ人たちの慰みものになっている姿があった。

自分の為に生活の場を失って行く、そうした人間の存在を知り、またしても苦悩する三四郎の元へ、怪し気な2人組が訪れてくる。

檜垣源之助(月形龍之介)の2人の弟、空手家の源三郎(月形龍之介-二役)と鉄心(河野秋武)であった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

黒澤自身は続編の製作を嫌がったというが、見せ場の多い、娯楽色が前面に出た作りになっている。
新たなライバルの出現、今でいう「異種格闘技」である「他流試合」を描いたりしている所が、「新奇さ」あるいは「けれん味」になっているのだが、それに対する許容度で、本作の評価は変わってくるのではないか。

アメリカ人と戦うシーンがあるのは、戦時中に作られたため、 ナショナリズムを鼓舞するためであろう。
主人公が畑違いのプロレスラーと戦っていた「ロッキー3」や、ソ連選手と戦っていた「ロッキー4/炎の友情」などを連想させる。
もともと「人間ドラマ」として作られた作品も、スポーツを素材とする性格上、徐々に「見せ物」的要素が強くなってしまう…という事であろうか。

主演の藤田進は「書生さん」と呼ばれるには老けて見えるが、後半、雪の武州天狗峠へ果たし合いに向うため寺を後にする時、見送る小夜(轟夕起子)を何度も何度も振り返り、最後には迷いを吹っ切ったかのように、にこやかに破顔する…という所は爽やかで良い。

また、病身の身体で姿に会いに来た檜垣源之助が、帰宅時、かつて思いを寄せていた小夜とばったり再会してしまい、姿に、さりげなく車の幌を降ろさせるシーンなどは特に印象深い。

前作「姿三四郎」では、三四郎が脱ぎ捨てた下駄を使い、季節の変化を表現したシーンが有名だが、本作でも、柔道を習い始めた左文字が、段々上達して行く時間経過を、彼がキャメラに向い正座し、頭を下げる動作を繰り替えさせる事によって表現している所に注目したい。(最初はおどおどしていた態度が、徐々に余裕が出てくる)

続編ながら、これはこれで魅力が多い佳作だと思える。