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さらばラバウル

1954年、東宝、木村武+橋本忍+西島太脚本、本多猪四郎監督作品。

監督助手は古澤憲吾。

戦時中の有名な歌「さらばラバウル」から発想されたのではないかと思われる戦争映画。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

若林大尉(池部良)は、ラバウル航空部隊きっての撃墜王であると同時に、周囲からは「鬼」と呼ばれるほど厳格で冷徹な男であった。
しかし、同じ部隊には、その姿勢に反発する友人の片瀬大尉(三國連太郎)や、部下の野口(平田昭彦)がいた。

ある日の出撃で、その片瀬は負傷し、野口の盟友、葉山機は敵の勢力範囲内に不時着してしまい、「救出の見込みなし」と若林は上官に報告する。その言葉に悔しがる野口…。

新たに下士官から配属された若き島田(久保明)の機も、若林の目の前で燃料タンクを射抜かれ、そのまま墜落して行ってしまう。

しかし、飛行機が落ちるのは、操縦士の腕がないからだとというのが、常日頃の若林の持論であった。

そんな中、ラバウル航空隊の最大のライバルであった「イエロースネーク」というアメリカ機を、若林は撃墜する。

その機体から脱出して保護されたパイロット、トーマス・ハイン中尉は、若林の目の前で、人命軽視の思想で戦っているゼロ戦や日本軍の根本的な弱点を鋭く指摘する。
あまりにも冷静で正鵠を得た意見に愕然とする若林。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

敵を倒すには、長年の戦闘経験が必要だと認識していた若林は、相手がセールスマン上がりで、飛行経験がまだ1、2年たらずである事実にも衝撃を覚える。

戦後に作られた戦争映画だけに、かたくなな精神主義で凝り固まっていた一軍人の、微妙な心の変化を描く作品になっている。

片瀬大尉といい関係でもある現地の酒場の主人、道代を演ずる中北千枝子や、野口に思いを寄せているカナカ人の踊子キムを演じる根岸明美、また看護婦として接して行く内に、何時しか若林大尉に惹かれて行く小松澄子に扮する初々しい岡田茉莉子らが、各々の男たちの哀しい生きざまを間接的に浮き上がらせて行く。

ちなみに、本作で特撮を担当した円谷英二、印象的な野口を演じた平田昭彦、監督の本多猪四郎が続いて組んだ作品が、同年末発表された「ゴジラ」である。

本作では、円谷以外に、渡辺明、向山宏らも特撮を担当しているが、作品中には実写フイルムも多用されている。

巨大な米軍機の主翼の根元付近が破壊され、一瞬にして翼が空中で折れ曲がる近接映像などは、実写ならではの迫力で、こうしたリアルな映像の中では、正直、スケール感の小さなミニチュア特撮は見劣りしてしまうのも事実だが…。

病床で厭戦思想に取り付かれ、空爆され炎上する闇の中に彷徨い込み、やがて消えて行く片瀬大尉の末路も印象的である。