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無法松の一生('58)

1958年、東宝、岩下俊作「富島松五郎伝」原作、伊丹万作+稲垣浩脚本、稲垣浩監督作品。

阪東妻三郎主演の1943年版に続く、同じ稲垣監督によるリメイク作品で、ベネチア映画祭金獅子賞受賞作でもある。

三船敏郎が松五郎を演じている。

基本的には、ほとんど前作と同じように展開していくが、相違点としては、まず、前作冒頭で登場する宇和島屋の主人(杉狂児)が、本作では飯田蝶子扮する女主人になっている点。

吉岡小太郎(芥川比呂志)亡き後、松五郎が、敏雄の様子を見る為に小学校へ度々訪れる所。

学芸会で唱歌を歌う敏雄を、良子(高峰秀子)と一緒に見に行くシーン。

そして、何といっても、松五郎が祇園太鼓を打つ有名なシーンの後、松五郎が良子への恋慕の気持ちを恥じて別れを告げに訪れて以降、彼の孤独な死に至るまでのシーンが付け加えられている所であろう。

特に、この最後のシーンに関しては、戦時中の軍部によって阪妻版では削除されていた問題の部分の再現である。

監督としては、このリメイク版で完全な形に仕上げたという事なのであろうが、観ている側からすると、カットシーンの多い(不完全な)阪妻版の方がはるかに感銘度が深いのは何故なのだろうか?

阪妻版を観ず、本作だけを観れば、これはこれでしっかり作られた名品だと思う。

ただ、本作の方が、阪妻版よりはシーンが増えただけ、個々の演出に関しては、意外とサラリと撮られているような印象も受ける。

例えば、松五郎になついてきた敏雄が、松五郎の幼少期の逸話を聞くシーン。

阪妻版では、松五郎がすすめる「らっきょう」を、初めて食べるという敏雄がまずそうに口にするのだが、本作では意外に普通に食べている。

前作では、裕福に育てられた敏雄の、ちょっとわがままな子供らしい仕種から、松五郎の子供時代の話の厳しさへの落差が生まれていたように思えるのだが、本作では、そうした感覚が希薄になっている。

また、運動会でのシーン。

前作では、飛び入り参加した松五郎が、いざレースが始まると、特に走りに余裕がありそうに見えない。
だからこそ、後半の追い上げの興奮が生まれ、敏雄ならずとも、観客も又、彼を応援したくなるのであるが、三船の方は、最初からかなり走りに余裕があるように見えてしまう。

これはこれでユーモラスには描けているのだが、敏雄の初めての興奮を引き起こした…という風には見えにくいように感じる。

また、祇園太鼓のシーンでも、阪妻版では、松五郎が珍しい打ち方を披露し始める所で、他の演奏者たちが、驚いたように松五郎を見、これで、彼が覚えていた伝統的な技法の希少性が強調されていたのだが、本作の方では、見物客たちの群集シーンの描写の方に力点がおかれているように思える。

もちろん、これらはあくまでも、個人的な感じ方であって、両作とも同じ監督作品であるから、微妙な相違点に関しても、各々何かしら、監督自身の演出意図があるのだろう。

そうした所を探して観るのも一興かも知れない。


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