1986年、大映製作、松竹配給、筒井康隆原作、岡本喜八監督作品。
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1863年、リンカーンによる奴隷開放、南北戦争の終結…そんな時代のアメリカの地から物語は始まる。
黒人ジョーは自由を得たと喜ぶが、オレンジ園では何者かに銃撃され、空腹を満たす術もないまま放浪の旅の末、仲間たちと再会する。
兄のサム、いとこのルイ、叔父のボブらであった。
彼らは各々、楽器を持っていたので、ジョー提案の新しいメロディを練習しながら歩く道中でアマンド(ミッキー・カーティス)という怪し気な男に出会う。
彼に誘われた一行、インディアンなどに襲われながらもアフリカへ帰るといわれた船に乗り込むが、その船はアフリカとは真反対の西へと進んでいた。
途中、ボブは病死、彼の遺品である壊れたクラリネットを持って、他の三人は小舟に乗り込み、嵐の中、命からがら船を脱出する。
彼らが漂着したのは、幕末の駿河に位置する庵原(いおはら)藩という小藩の海岸であった。
その城主は、停滞した幕政にうんざりしていた海郷亮勝(古谷一行)であった。
彼は、うっとうしい日常から逃れるように、一人、篳篥などを吹いて慰みにしていたが、異国人漂着の報を聞き、猛烈に興味を抱く…。
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一種の実験小説のような筒井作品のストーリーを追っても、あまり意味はないかも知れない。
時代劇にジャズという現代音楽を組み合わせるという、一見とんでもない発想を、「血と砂」(1965)で「ジャズと戦争」という同じような趣向で、戦争の空しさを描いた事のある岡本監督が、様々な遊びの要素を取り入れ、楽しい作品に仕上げている。
前半部分では、まだ時代劇らしい体裁も残っているのだが、後半に移行するにつけ、 段々、ナンセンスさというか、ハチャメチャ度が増して行く。
幕末から明治に移り変わる時代を背景に、庵原藩の城の地下牢では、夜な夜な狂乱の演奏会が続いて行き…。
そこには、もはや理屈や常識などを超越した、一種悦楽の世界が広がっているのだ。
その世界にノレるか、ノレないかで、この作品への評価も大きく別れる事であろう。
亮勝の家臣を演ずる財津一郎、本田博太郎(怪演の萌芽が!)、殿山泰司、薩摩藩士を演ずる唐十郎、六平直政(これが映画デビューか?)、特別出演の細野晴臣、山下洋輔、タモリらの顔ぶれが楽しい。
亮勝の下の妹を演ずる新人、岡本真美の、男勝りのさばさばとした性格でありながら、どこか飄々としてとぼけたキャラクターが印象に残る。
頭で考えながら観るのではなく、五感、フィーリングで楽しむ映画というべきか。
