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音楽喜劇 ほろよひ人生

1933年、P.C.L.写真化学研究所、木村荘十二演出作品。

東宝の前身、P.C.L.の第一回作品であり、国産音楽映画の嚆矢とも思われる作品。
また、ビール会社とのタイアップ映画でもある。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「ようようえき(酔う酔う駅?)」でビールを売っているビアガール(?)エミ子(千葉早智子)は若く愛らしいので、同じ駅で働くアイスクリーム売りの徳吉(藤原鎌足)は、すっかり首ったけ。

徳吉、エミ子と結婚するつもりで、将来は自分でビアホールを経営するつもりだ、などと夢を話して聞かせるが、エミ子にはすでに好きなお相手がいた。
音楽学校に通っている山川アサオ(大川平太郎)である。

アサオは、エミ子とのデートの時、君のために作ったと「恋は魔術師」という歌を披露する。
感激するエミ子。

その歌はさっそく、ビコドールレコードより売り出され、たちまち500万枚の大ヒット。
しかし、その事が学校にばれ、伝統ある音楽学校生が都々逸まがいの通俗な歌を売り出したとして、教授会にかけられ、その場で退学を言い渡される。

父親と共に、ようようえきから、電車に乗って郷里へ帰るアサオ。
その姿を見送り、涙するエミ子。

そんな事情を知らない徳吉は、町で聞き覚えた「恋は魔術師」を、エミ子を慰めるつもりで歌って聞かせる。
ますます落ち込むエミ子。

仕事が手につかなくなったエミ子に、ビール屋の主人が言い寄ろうとする。
その様子を見た徳吉は、客を装い、エミ子から何杯もビールを買って、主人を追い払うが、自分の方も酔っぱらって仕事をさぼったために、首になってしまう。

川岸で魚釣りをしていた浮浪者を見て、その真似をしてみる事にした徳吉、川の中から、泥棒たちが誤って落とした盗品の宝石箱を釣り上げ、その中から巨大なダイヤモンドを発見する。

その宝石箱を探していた泥棒2人組にその様子を見られ、徳吉と浮浪者コンビは町中を追い掛けられるはめに。
しかし、徳吉らは偶然、そのダイヤを盗まれた宝石店に転がり込み、そのお礼に2万円という謝礼金を受け取る事になる。
たちまち、大金持ちになってしまった浮浪者と徳吉。

一方、山川アサオの方も、レコード会社から専属作曲家として招かれる事になる。
「恋は魔術師」の印税だけでも500万以上の収入を得、こちらも大金持ちに。

すっかり紳士の格好となり、意気揚々とエミ子に再会にいった徳吉を待ち受けていたのは…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ストーリーの流れとは無関係に、途中、ロッパ(古川緑波)が公園に登場、夜、歌いながら帰宅途中のレビューガールをからかってやろうと、自ら歌いかけ、それにレビューガールも乗って、歌を返し、さらにロッパが…と互いに何曲も歌いあって、終いに意気投合、腕を組んで去って行く…というお遊びシーンがあったり、全体的に楽しい音楽映画になっている。

音楽学校の校長とレコード会社の社長を兼ねている人物には、徳川夢声が扮している。

後半は、藤原鎌足が、愛するエミ子のために、何十人という泥棒たちを一人家で待ちぶせ、急ごしらえの仕掛けで戦う…という、まるで「ホーム・アローン」そっくりの展開が待っている。

黒澤作品などで有名な、あの藤原鎌足が、日本最初の音楽映画の主役だった…という事実にも驚かされるが、実は鎌足氏、エノケンと共に、浅草オペラの田谷力三氏のお弟子さんだった人らしい。

ラストは、思わずホロリとしてしまうようなエンディングまで用意されており、単なるドタバタ喜劇で終わっていない所がにくい。

音楽映画ファンのみならず、日本映画ファンには、機会があったら、一度は観て欲しい秀作である。