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どぶろくの辰('49)

1949年、大映、中江良夫原作+脚本、田坂具隆監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

北海道で炭坑道路の建設に当たる労働者たちの姿を描いている。

山を切り崩すきつい仕事を終えた労働者たちが飯場へ帰る途中、川で洗濯をしている身慣れぬ女の姿を発見、好奇心からそのまま飯場まで追い掛けて行く。

女は、飯場の飯炊きとして雇われた、北上しの(水戸光子)といった。
たえず、腰にどぶろくのとっくりを下げている辰(辰巳柳太郎)は、さっそく、しのにちょっかいを出そうとするが、彼女の凛々しいまなざしの前ではひるんでしまう。

荒くれ者の辰は、しのに心底惚れてしまったのである。

飯場には、そんな辰の喧嘩相手、舎熊(河津清三郎)や、復員してみたら、夫がすでに戦死したものと思い込んだ女房が他の男をこしらえていた事実を知り、絶望の末、この飯場に逃げ込んで、他の労働者たちをバカにしている舞阪(伊沢一郎)などがいた。

盆になり、しのの実家を訪れ勝手に上がり込んだ辰は、しのに襲いかかろうとするが、逆にしのに蔑まれ、結局何もできずに頭を下げて、みんなの前では、自分の女になった振りをしてくれと懇願する。

一方、そんな事とは知らない飲み屋の梅子(入江たか子)は、馴染み客である辰を一方的に惚れ込んでいた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

表面上は無軌道で無骨な男だが、心根はさっぱりしており、惚れた女にはめっぽう弱い…、そんな労働者を主人公にしている点で、「無法松の一生」や「ジャコ万と鉄」などを連想させるような男のドラマになっている。

新国劇出身の辰巳柳太郎が、そんな辰を見事に演じている。

辰巳は後年、「黒部の太陽」で頑固一徹な古いタイプの鉱夫を演じているが、おそらく、この作品の辰のイメージからキャスティングされたのではないか?
くしくも、「黒部の太陽」で主人公を演じていた三船敏郎は、リメイク版の「どぶろくの辰」で辰を演じている。

しかし、この作品で一番印象的な部分は、屈折した舞阪と、そんな彼を追って山まで訪ねてきた女房のしげ(飛鳥敏子)の苦悩を描いたクライマックスであろう。
盆の祭りの様子を暗示する、廻り灯ろうの影絵イメージも美しい。

工事の描写はなかなかリアルに描かれているし、後味も悪くなく、古典的な秀作の一本である。