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スラバヤ殿下

1955年、日活、佐藤武監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

徳川夢声のナレーションで語られる。
日本に帰る旅客機の中、一人の高名な原子物理学者が乗り合わせていた。
長宗我部(ちょうそかべ)久太郎博士(森繁久彌)であった。

その機内には、彼の研究を付け狙う二大国のスパイ、ドロマニア国のジョー(有島一郎)と、アカランド国のズルコフ(千葉信男)、さらに人気歌手の真野かおる(丹下キヨ子)らも同乗していた。

日本に付いた博士は、空港まで迎えに来ていた乳母のおきん(飯田蝶子)と、姪の直江(鰐淵晴子)と共に、物理学研究所を兼ねた自宅へと帰りつく。
大好きなダンスで舞台に立つのが夢である直江は、叔父の博士を「パパ」と呼んで慕っていた。
その後を追ってきた、ズルコフと彼の手下徳野、さらにジョーと彼の子分木村は、別々に研究所の中の様子を伺い始める。

一方その頃、ビキニ環礁沖を、一隻の船がマクロネシアの島から一人の日本人を乗せて、日本へと向っていた。

彼こそは、長宗我部博士の瓜二つの弟、英二(森繁-二役)であった。
彼は、ダイヤモンドが算出するある島で、そこの女王から愛されて長年自由気ままに暮していたのだが、密航がばれて、送還される事になったのである。(女王はじめ、島の女性たちは、当然、全員日本人が扮しているのだが、驚く事に全員トップレスである!)
途中、いきなり降り出した放射能雨を見ていた英二は、フと金儲けのアイデアを思い付く。
彼は、稀代のペテン師だった。

日本に帰り付いた英二は、さっそく、ビキニから持ち帰った大量の雨水と、北海道で収集した雨水から、各々「ビキニールA」「シベリアルS」なる怪し気な物質を抽出する事業を始める。(従業員の中に、若き宍戸錠がいる!)

途中、資金不足になった英二は、兄の元を訪れ、2、30万の借金を申し込もうとするのだが、あいにく、兄は不在で、おきんからけんもほろろに断られる。
顔を見せた直江も、英二の事を嫌っていた。

しかし、実はその直江、英二の娘なのであった。
直江は、その事を知らないのだ。

直江をさけるように、すごすごと研究所から帰宅する英二に、車に乗ったジョーが声をかける。
彼を博士と勘違いしているのだ。
それに気付いた英二は、持っていた鞄を、言葉巧みに、ジョーと、途中から間に割り込んで来たズルコフに値段を付けさせ、とうとう、50万円でズルコフに売ってしまう。

後で騙されたと気付いたズルコフとジョーは、博士を血眼になって捜しはじめる。

英二は、それから、全国各地を廻っては、博士の名を騙り、放射性物質が含まれている石を発見して、東京の研究所宛に送ってもらえれば大金になると、鉱石見本を売り付けたりするインチキ商売を始める。

その頃、以前キャバレーで出会っていた英二から、兄になりすませたまま、いつでも遊びに来てくれといわれていた歌手のかおるは、本当に研究所にいる博士を訪ねて、面喰らう博士をキャバレーに誘い出す。

そこへ現れたのは、表通りで地方からやって来ていたインチキ商売の被害者たちから偶然発見されて、追い掛けられていた英二であった。

キャバレー内は、売り二つの博士と英二を追い掛ける連中で大混乱。
英二は、何とか、そのキャバレーから脱出する。

それからしばらくして、御宿の海岸で南の島から漂着したと思われる筏に乗った珍妙な男が発見される。

何語なのか、さっぱり分からない言葉を話すその男は、物珍しさから、マスコミ連中からVIP扱いされるようになるが、ホテル内で一人ギター片手に歌っていたその男の言葉の断片から、彼はスラバヤという国の、身分の高い殿下らしいと騒がれはじめる。

やがて、スラバヤ殿下はマスコミの寵児となって行く。
テレビで歌っている彼の姿を偶然自室で見かけた長宗我部博士は、即座にその殿下が弟の英二である事を見抜き、彼がいるホテルを訪ねて行く。

スラバヤ殿下の正体を、偶然、隣の部屋に隠れて盗み聞きしていたかおるは、娘の事を思う英二に同情してしまう。

しかし、その時、殿下の事を偽者ではないかと疑っていた一部マスコミが、マクロネシアからの留学生数名を連れて来て、殿下と話をさせろと詰め寄る。

もはやこれまでと観念して、留学生たちと会った英二であったが、不思議な事に言葉が分かると言い出す学生(三木のり平)が現れたから、殿下は正真正銘の殿下だと完全に認められて、中央劇場で大々的なショーを執り行なうはめになっていく…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

1954年に起きた「第五福竜丸」事件をも取り込んだ、ナンセンスコメディである。
黒塗りの顔に南方風の衣装を着、怪し気な言葉をまくしあげる森繁が、歌い踊る、正に芸達者森繁の面目躍如といった観のある作品になっている。
歴史的には、エノケンとタモリの中間に位置する芸風とでもいうべきか。

兄弟が同じ画面に登場するシーンも多く、当然、巧みな合成技術が多用されている。

とにかく、全編サービス満点。
楽しくて楽しくてたまらない、知られざるコメディの傑作の一本である。