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乱れる

1964年、東宝、松山善三脚本、成瀬巳喜男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

舟木一夫のヒット曲「高校三年生」のメロディを流しながら、スーパー「清水屋」の宣伝カーが町を練り歩いている。半額サービスをするというのである。

それを聞いている商店街の食料店主人加賀(柳谷寛)が苦い顔をしている。
自分の所で一個11円で売っている卵を、清水屋では5円で売っているからであった。

商店街にあるバーでは、その清水屋の店員(藤木悠)たちが、ホステスたちに「ゆで卵」の大食い競争をさせて騒いでいた。
それをカウンター席から注意したのが、酒屋「森田屋」の息子、幸司(加山雄三)であった。
その事がきっかけになり、彼らは店で喧嘩をはじめてしまう。

後刻、その幸司を警察に貰い受けにいったのは、「森田屋」を一人で切り盛りしていた義姉の礼子(高峰秀子)であった。

幸司は礼子からもらった小遣いを手に、その足で商店街仲間と一緒に深夜まで麻雀をするが、翌日、そのメンバーの一人だった加賀が自殺をしてしまう。
清水屋の他にも、近く新しいスーパーができる噂を聞き、小売店の将来に悲観しての事だったらしい。

礼子も、森田屋の客離れに不安を持っていた。
彼女は18年前の19の年に、当時22だった幸司の兄のところへ嫁いで来たものの、半年でその兄は急逝、その後、女手一つで、森田屋を今のように大きくして来たのであった。

その間、長女の久子(草笛光子)、次女孝子(白石由美)らは無事嫁ぎ、今では老いた母親(三益愛子)と幸司とが森田屋に残っている。

そんな礼子を、母親や娘たちは、最近、どこかうとましく感じ始めていた。
再婚話などを持って来て、何とか円満に、この家から礼子に出て行ってもらいたいのだ。
しかし、礼子は、そんな話に全く感心を示さない。

一方、大学を出た幸司は一旦は就職したものの、すぐにそこを辞め、今では毎日ブラブラと遊び歩いているだけの男になっていた。
礼子はそんなだらしない生活をしている幸司に再三注意をしていたが、幸司は聞く耳を持たない。

今日も、素性の悪そうな女(浜美枝)と付き合っている事を知った礼子は、幸司に彼女と別れるよう説得する。
しかし、いつものように、幸司は返事をはぐらかすだけ。

幸司は、礼子には内緒で、店のスーパーへの転向を、静岡に住む久子の兄(北村和夫)と相談しあっていたのだ。

実は、幸司はかねがね、11才年上の義姉の礼子を秘かに愛していたのであった。
礼子と離れたくないがため、会社勤めを辞めたのであった。

幸司としては、店をスーパーにする以上、これまでの功績も踏まえ、その礼子には重役を約束するつもりだったのだが、その点で、姉たちとは意見が対立してしまう。

ある日、幸司は自分の気持ちを礼子に打ち明ける。
当惑する礼子。

やがて、それまで店の手伝いをしていた従業員の川俣(西条康彦)が辞めた事もあり、幸司は見違えるように店の手伝いに熱心になる。

しかし、幸司の告白を聞いてしまった礼子は、そんな幸司と毎日接する事自体に息苦しさを感じるようになり、とうとう家族たちの前で森田家から自分は出る事を言い出すのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

淡々とした描写の中に、複雑な立場にある女性の心の揺らめきを丁寧に描き出している。
高峰秀子の堂々たる演技に、若い加山も良く対峙している。

余談だが、次女孝子の娘として登場しているのは、テレビシリーズ「ウルトラQ」で「悪魔っ子」(1966年放映)を演じた少女坂部紀子である。
観た瞬間「悪魔っ子」だと分かり驚いたくらいだから、ほとんど同時期の出演だと思われる。