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どぶろくの辰

1962年、東宝、稲垣浩監督作品。

1949年、大映、田坂具隆監督、辰巳柳太郎主演版「どぶろくの辰」のリメイク。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

時代は昭和25、6年頃、山を切りくずし、道路工事をしている黒政組の現場の話。

いつも通り、ハッパを仕掛けて崖を崩している最中、大爆発が起こり、多数の死傷者が出る。
山肌に、戦時中の大砲の不発弾が埋まっていたのである。
他にも埋まっている可能性が高い。
しかし、ハッパを仕掛けなければ、到底期限までに工事は完成しない。

親方から現場を任されている荒くれ男「しゃぐま」(三橋達也)は、親方に個人的な待遇改善を要求し、急遽二番組のメンバー募集をする。

麓の町に集まってきた男たちは、皆一癖も二癖もありそうな連中ばかり(田島義文、堺左千夫、小杉義男、小川安三、田崎潤ら)。
ベテランの通称「追分」(有島一郎)は、インテリ風の男、前坂(野村浩三)の姿をいぶかしむ。
一方、メンバーの顔改めをしていた「しゃぐま」たちは、一人の傍若無人の男を発見する。
通称「どぶろくの辰」(三船敏郎)、とびっちょ(途中逃亡)の名人であった。

「しゃぐま」は辰に、男たちに借金取りにきた飲み屋「乃んき屋」の女将梅子(淡島千景)を引っ掛けてみろと目でけしかける。
辰は、嫌がる梅子を無理矢理抱え上げ、隣の部屋へ。

山の現場に連れてこられたメンバーたちには、早速「タコ部屋」の過酷な労働が待ち受けていた。
とびっちょを防ぐために、猟銃を手にした何人もの見張りがあちこちで目を見はらせている。

そこで飯と風呂の支度をしている女たちの中に、一人、あか抜けた若いおしの(池内淳子)がいた。
彼女は、何故か、現場の男たちに博打用の金を貸したりしては小銭をためている様子。
「しゃぐま」は、彼女に何度も迫ってははねのけられていたのだ。
初対面の辰も、彼女にちょっとちょっかいを出すが、やはり相手にされない。

数日後、さっそく、トロッコでとびっちょをはかった辰だったが、途中、山を登ってくる梅子の姿を発見、逃亡をあきらめて彼女と共に現場に戻ってくる。
梅子はすっかり、辰の女房気取り。

偶然同じ頃、とびっちょを見つかった通称「ぬまじり」(田崎潤)は、「しゃぐま」らから、手酷い拷問を受ける。ここは地獄なのだった。

梅子は、辰が気があると聞かされたおしのにライバル心を燃やし、花札勝負に出るが、全く歯が立たない。
とうとう、「乃んき屋」を抵当に金を作り、再度、山を登ってきては、おしのに勝負を挑むのだった。

一方、工事現場では、また不発弾が発見される。
ベテランの「追分」と辰がその信管を抜く。「追分」以外には、その技術がないからだった。

辰は、しつこくおしのに迫る「しゃぐま」から彼女を守るために、わざと俺と関係が出来たように芝居をしろとおしのに持ちかける。
実は、辰は梅子にも何にも手は出していなかったのである。
梅子は、そんな辰の純情振りに、勝手に惚れ込んでいたのだった。

後日、「乃んき屋」で無銭飲食をして逃亡した男が工事現場に姿を現す。
その男こそが、おしのの亭主木田(土屋嘉男)であった。
彼は、復員後、身体を壊し入院していた妻を助けるため犯罪を犯し、刑務所送りになっていたのであった。
しかし、ムショ帰りの彼は、今や肉体的にも精神的にも軟弱になっており、現場仕事に耐え切れず、おしのに逃亡を持ちかける。
しかし、ここらから逃げ出す事は不可能に近い。

そんな中、また出土した不発弾を処理していた「追分」と、辰の代わりに手伝っていた前坂が爆死。

梅子からおしのと夫の話を聞かされた辰は、二人を現場から逃がすために、自分が囮になって、命がけのとびっちょを決行する…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

正に「男臭いドラマ」の典型。
そんな中で、男勝りのバイタリティを見せる、池内淳子と淡島千景の役所が珍しい。
池内淳子は、顔の肌がパンパンに張り切っている時代。
「乃んき屋」には、中島そのみと塩沢ときが働いている。

しかし、何といっても、本作で一番印象深いのは、「追分」演じる有島一郎。
ギャグ一切なし。全編、ベテラン労働者らしい渋い演技をシリアスに演じている。

他にも、再三繰り替えされる三船対三橋の戦いなど、なかなか見どころの多い作品になっている。