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砂の女

1964年、勅使河原プロダクション、安部公房原作&脚本、勅使河原宏監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

学校教師の二木順平(岡田英次)は、珍しい昆虫を見つけるため、一人砂漠地帯に来ていた。

そんな二木は、「調査に来たのか?」と、いきなり背後から近付いて来た男(三井弘次)に声をかけられる。
どうやら、県庁の人間か何かと勘違いしているらしい。

そうではない事を知った男は、急に親切になり、最終バスはもう終わってしまったが、今日の宿はどうするのか…などと尋ねてくる。

結局、二木は、その男に勧められる形で、近くの集落に泊めてもらう事にする。

案内されたのは、砂漠に掘られた深い穴の底にある貧し気な家。
縄梯子を伝って降りてみると、その家には、一人の女(岸田今日子)が住んでいた。

夕食時、女は、天井から落下してくる砂を防ぐため、食卓の上に傘を広げ、砂に家が侵食される話などを色々話して聞かせる。
自分の夫と娘も、かつて襲って来た砂嵐で埋まってしまったなどという。
学のある二木には、にわかに信じられぬ内容ばかり、笑って話を聞き流している。

夜、女は外の砂かきを開始する。
穴の上に来た村人が、女が集めた砂を滑車で持ち上げている。
そうしないと、家が崩れ落ちてくる周囲の砂によって埋もれてしまうからだという。
手伝おうか…という二木に、「最初の日くらいしなくても良い」などと、意味ありげな言葉を返す女。

翌日、目覚めた二木は、全裸で熟睡している女を発見する。
幾許かの金を置き、さて帰ろうと外に出てみると、昨日あったはずの縄梯子が見当たらない。

女を起こし、問いつめてみるが、女ははっきりとした事を口にしない。

二木は、ここへ来てようやく、自分が「虜」になったのに気付く。

そのあまりの理不尽さに逆上した二木は、頑として、女の手伝いを拒否する。

しかし、水や食糧は、砂かきの仕事をしないと上からもらえないのだという。

咽の乾きに耐えかねた二木は、何時しか、女の手伝いをするようになって行く…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「ミステリーゾーン」のような、一種独特の、幻想的かつ不条理な世界をじっくりと描いた作品。

観客も又、何時しか、この世界観の虜になっている自分に気付く。

音楽は武満徹、タイトルデザインは粟津潔。

その観念的、閉鎖的な世界観で、なおかつ、かなり長めの作品なので、観客の反応は、ハマるか、拒絶するか、はっきり二分されるような感じがする。

個人的には、後半、大体の展開が読めた辺りで、ちょっと長く感じないでもなかったが、全体的にはすごく面白く観る事が出来た。

若い頃の岸田今日子が、結構、可愛かった事実に驚かされる。(失礼!)

万人向けとはいいにくいかも知れないが、幻想的なものが好きな人にとっては、必見の作品だと思う。

あまり語られない、日本映画の傑作の一本ではないだろうか。