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激動の昭和史 沖縄決戦

1971年、東宝、新藤兼人脚本、岡本喜八監督。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和17年、ガダルカナル戦。
昭和19年、サイパン玉砕。

日本軍にとって、アメリカの次なる動きは予測不可能であった。

沖縄には、いくつもの飛行場が、民間人も交えて建設されていたが、肝心の戦闘機などは一向に届かない。
大本営からの軍隊の移動指令も、沖縄より、台湾防衛の方に比重が置かれているかのようであった。

そんな沖縄を守る第三十ニ軍の指揮官には、前任者、渡辺中将(青野平義)に変わり、牛島中将(小林桂樹)が赴任する。

その下に付くのは、長参謀長(丹波哲郎)と八原高級参謀(仲代達矢)。
八原は沖縄に点在する洞窟を、指令室その他の避難所として使用するアイデアを出す。

沖縄県知事も、泉知事(浜村純)に変わり、新しく島田知事(神山繁)が任命される。

そんな三十ニ軍に、一般の散髪屋であった比喜(田中邦衛)が、嘱託の職人として参加してくる。

やがて、海上に姿を現したアメリカの艦隊からの一斉射撃が開始された。
その圧倒的な物量の前にあっては、三十二軍は、うかつに反撃さえできない状態に置かれる。

ほとんど無抵抗状態に近い沖縄に、アメリカ軍はやすやすと上陸を開始する。

次々に増える犠牲者の数…。

途中に休憩を挟む、全編二時間半にも及ぶ長篇であり、その大半で描かれているのは、なすすべもなく犠牲になって行く軍人たちと沖縄の人たち…、数多くの女性、子供、老人、そして少女、少年兵たちの姿である。

これでもか、これでもか…と、その酸鼻極まる地獄図が展開されて行く。

ある集落では、民間人が親族同士で身体を寄せ合い、手榴弾で集団自決をする。
洞窟内の野戦病院では、次から次へと運び込まれる重傷者の足を、疲れ切った軍医(岸田森)がノコで斬り落として行く。
鉄血勤皇隊と名付けられた中学生たちは、火薬箱を背中にしょって、迫りくる戦車に体当たりして行く。
「ひめゆり学徒隊」の女性徒らは、皆、毒をあおって倒れて行く…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

この作品には、きれい事など、どこにも存在しない。
フィクションも交えてあるとはいえ、その根本にあるのはほとんど実話の再現である。

特撮も若干使用されているが、大半は記録フイルムが挿入されており、画面は頻繁にカラーと白黒が交差する。

劇中、随所に若き特攻隊員たちの遺言や、当時の記録などが読み込まれて行く。

全編まさに、ドキュメンタリーに近いフィクション…とでもいうような、独特の体裁になっている。

池部良、加山雄三、滝田祐介、酒井和歌子、大空真弓、東野英治郎、川津祐介、高橋悦史、天本英世、地井武男…、俳優陣の多才さも見どころだが、この作品に関しては、描かれている事実の重さにかなうものはないように思える。

戦死者、約19万人、その内、民間人10万人…、言葉もない。

新藤兼人氏の工夫に富んだ脚本と、岡本喜八監督独特のパワフルな演出が相まった、心に突き刺さる大作である。


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