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火宅の人

1986年、東映京都、壇一雄原作、深作欣二監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

主人公、桂一雄(緒形拳)の少年時代の記憶から物語は始まる。
彼の父親(石橋蓮司)は病的な癇癪持ちで、絶えず、一雄の母親(壇ふみ)を虐げていた。
その母親は、若い男と恋に落ち、子供達を捨てて、その男の元へ去ってしまう。

それから40年が過ぎ、作家になっていた一雄は、同じ九州出身という事で知り合うようになった、新劇女優の卵、矢島圭子(原田三枝子)と不倫旅行へ旅立とうとしていた。

一雄の後妻、より子(いしだあゆみ)は、次男が病気から重い障害を持つ事になり、その心労から、怪し気な宗教にのめり込むようになって行く。
一雄は、そうした淀んだ生活から逃げ出そうと、家を飛び出し、愛人の圭子と一緒に生活する事になる。

やがて、その次男も、預けた施設で亡くなり、実家と愛人宅を行き来する一雄の態度に、だんだん圭子の心も冷めて行くのだった。

一雄は、やがて、一人放浪の旅をするようになるが、その旅先で十年ぶりで郷里の五島列島に帰るという一人の女性と出会う。
以前、東京で出会った事があるホステスの陽子(松坂慶子)であった。

一雄は陽子の実家がある野崎島に立ち寄って、一晩その家の世話になるが、翌日、その島での陽子の暗い過去を知る。

一雄は、そんな陽子と意気投合し、その後二人で自由気ままな放浪の旅を続ける事になる。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

主役、一雄は、同じ男の立場から観ると、臆病で弱い心の持ち主だとは思うが、正直な人間だとも感ずる。
自由業という事もあるのだろうが、世間体など考えず、自らの心のおもむくままに生きている。

妻より子は、女性の立場から、大人として、家庭人として、そんな無責任な一雄に愛想をつかしているが、いつしか、その心根を理解して、許すようになって行く。

一見、暗く重い話のように思えるが、一雄の子供達の愛らしさ、屈託のなさが、前半部分の雰囲気を救っているように思える。
後半は、不幸な境遇にありながらも、わざと無邪気で明るくふるまおうとする陽子の存在が物語に光を与えている。

観終わった後の後味は、決して悪くない。

特に、不幸な女を演じたら右に出る者がいない、いしだあゆみが、本作ではまさにはまり役で、見事な存在感を見せてくれる。

一雄の回想シーンで、真田広之が中原中也役で、岡田祐介現東映社長自らが太宰治として登場するのも、見どころ。