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エノケンの魔術師

1934年、P.C.L.映画製作所、木村荘十二監督作品、

世界的魔術師エノケン氏(榎本健一)が海外巡業より帰国し、東京のゴールデン劇場で、魔術をレビューと組み合わせた「グランドマジックオペラ」なる新しい試みを開催する事になる。

前評判は上々で、ゴールデン劇場の支配人秋山(藤原鎌足)はホクホク顔。

逆に、ライバル劇場バット座の支配人堀口(柳田貞一)は面白くない。
所属の踊子、バラ子(近江つや子)とロラ子(高清子)に、女好きのエノケンとそのマネージャー小原節太郎(中村是好)に近付かせ、バット座へ乗り換えさせるよう命ずるのだった。

そんな事とは知らないで、のんきに列車で上京するエノケンと小原氏、偶然を装い、彼らに近付いたバラ子たちにすっかりのぼせ上がり、彼女らに得意の魔術を披露する。

魔術で出した酒で自ら酔っぱらったエノケンに、バラ子は恋人になる誓約書に印鑑を押してくれとねだる。
じつはその誓約書は興行契約なのだが、気付かずに承諾したエノケンは自分の印鑑がなかなか見つからず、もたもたしている内に、列車は駅に到着、秋山支配人の娘令子(北村季佐子)とスターのマリ子(堤真佐子)がエノケンを迎えに来てしまい、バラ子たちは、目的を果たせぬままに逃げ出してしまう。

さらに、後日、エノケンが宿泊するアブサンホテルの隣室に部屋を取ったバラ子たち、誘いの手紙をエノケンの部屋の届けるが、そこへ現れたのが、再び、令子とマリ子、支配人の命令で、これから毎晩、エノケンらを世話するという。

喜んだエノケンと小原だったが、令子が取り出したのは、「人生は四十から」という真面目な本。
それを読んで聞かせる…というのである。
有り難迷惑だが、断るに断れないエノケンら。

こうして、バラ子たちの企みは又しても失敗。
エノケンらは、毎晩、その退屈な朗読でぐっすり寝入ってしまうのであった。

業を煮やしたバット座の支配人、ギャングの親分に、エノケン誘拐を依頼する。
ところが、これも、エノケンの魔術で失敗。

さらに、今度はギャング団に令子とマリ子を誘拐させるが、魔術師エノケンの活躍で彼女らも救出されてしまうのだが、その途中、エノケンは自分の宝である帽子を紛失してしまう。

さて、そのために、「グランドマジックオペラ」開催直前、エノケンは魔術の能力を失ってしまう。

ゴールデン座の劇団員たち、また、ギャング団らも総出で、その帽子を捜そうと奔走するのだが、町中から掻き集めた帽子は、ことごとく別物で、エノケンの魔術は一向に元に戻らなかった…。
客席では、ショーの開始を待ち受ける満員の観客たち…。
どうなるエノケン!

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

タイトルから想像できるように、全編、初歩的なトリック撮影を使った楽しい魔術のシーンが満載されており楽しめる。
特に、クライマックスのレビューのシーンでは、特撮を巧みに使用し、驚くほど複雑で華麗な合成空間を作り出しているのに圧倒される。

エノケンも中村是好も藤原鎌足も皆若々しく、全員30前後くらいではないだろうか。

ラストには、それまで実写だったエノケンが、突然、アニメのキャラクターになって踊り出す…という、いかにも洒落た演出も用意されており、サービス満点。

大人から子供まで喜ばれる、楽しい娯楽作品になっている。