「第五福竜丸」後半は、東京の病院に移された船員たちと、臨床医たちを中心とした療養生活が淡々と描かれて行きます。
アメリカとの補償交渉も難航します。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
ラストは、ほぼ事実そのままを描いていると思われますので、ここでは書きません。
正直、涙を禁じ得ません。
「ゴジラ」(1954)の劇中、何故、ゴジラに襲われた後の病院で、子供にガイガーカウンターを近付けるシーンがあるのか、何故、「平和を願う歌」を大勢の女学生たちが歌うシーンがあるのか、「GMK〜」で、何故、ゴジラが焼津港に出現し、そこで原子雲が立ち上るのか…、この作品を観ると良く分かるような気がします。
映画としても、実に良く出来た作品だと思います。
事件もの特有の、重く暗い感じはほとんどありませんし、独立プロ製作映画ながら、安っぽいイメージも全くありません。堂々たる力作になっています。
前半は明るい音楽と軽快なテンポで、のびのびとした「海洋もの」のような調子で描かれて行きます。
船内での、屈託のない、普通の若者たちの生態がていねいに描かれています。
焼津で騒ぎが起こりはじめる途中部分も、右往左往する人間たちの様子が、ちょっぴりユーモラスに描かれています。
後半は、博士役の千田是也(「大怪獣バラン」での杉本教授役)はじめ、白衣姿の学者たちが登場しはじめるので、何だか「怪獣映画」を観ているような雰囲気もあります。
役者陣も多彩で、第五福竜丸の漁猟長(?)には稲葉義男、船員の中には田中邦衛の姿もあります。
学者の一人は十朱久雄、医者の一人は原保美(SRI)、政治家の一人は小沢栄太郎、焼津の市役所の人間として殿山泰司…。
「ゴジラ」より後に作られた作品ですが、描かれている事件そのものは、まさに「ゴジラ」が作られる直前の出来事。
その当時の、事件に対する日本や世界中の反応がどうだったのかを伺い知る手がかりにはなります。
なお、問題の水爆遭遇シーンは、特段、特撮のような作りにはなっていません。
おそらく実写フイルムを使っているのだと思います。
そのフイルムに合わせるためか、それとも撮影上の都合からなのか、この水爆に遭遇する直前の船は昼間のように描かれています。
実際は、未明の出来事ですから、もっと暗い時間のはずなのですが…。
日本人は広島、長崎で「世界で最初の原爆犠牲者」になっただけではなく、この「第五福竜丸事件」で、「世界で最初の水爆犠牲者」にもなっていたのだ…という事実を、改めて思い知らされた貴重な作品でした。
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