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台所太平記

1963年、東京映画、谷崎潤一郎原作、豊田四郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

京都に住む、作家の千倉(森繁久彌)が回想する、歴代のお手伝いさんたちのバイタリティ溢れる生態の数々。

最初に登場するのは、梅(乙羽信子)、初(森光子)、駒(京塚昌子)の三人の娘たち。

千倉と妻、讃子(淡島千景)は、そろそろ年頃の初に身を固めさせようと、見合い話を持ちかける。
紹介者は呉服屋の新田(西村晃)、お相手は再婚の中年男、薬屋、花村(山茶花究)であった。

しかし、生来おとなしい初は今一つ乗り気ではない。
かえって、梅の方が他人の見合いを面白がり、初が手を出そうとしない用意の酒を、自分が勝手にがぶ飲みする始末。

台所でゴリラ踊りを披露し合っていた新田と駒の前に、飲み慣れない酒ですっかり酔っぱらった梅が現れ、突然、けいれんを起こして倒れてしまう。

千倉夫婦が不在のある日、初は姉の訪問を受ける。
郷里の和歌山に帰ってきて、二人の子持ちの男と身を固めないかというのである。

恩ある千倉夫妻からの勧めと、肉親からの勧めの間に立たされ迷う初。

結局、初は夫妻に詫びを入れ、郷里に帰ってしまう。
讃子はがっかりするが、千倉の方は、初が同じ京都に嫁げば、今後とも自分達にも気遣いをせねばならず、お手伝いさんを続けるのと同じような息苦しさがあったのだろう…と、彼女の気持ちを思いやるのだった。

おきゃんだった梅は、幼馴染みの漁師、安吉(フランキー堺)と結婚し、5人の子持ちとなる。

その後を継いだのが、小夜(淡路恵子)と節(水谷良重)の二人。

小夜は異様な雰囲気の女であった。
絶えず香水を自分に振り掛け、 猫のように音も立てずに歩き、無気味な低音で話しかける。
しかも、節とは同性愛の間柄。

千倉自身が昔作った歌を座右の銘のように自分の部屋の壁に貼っていたり、千倉の机を勝手に開け閉めしている…といったような偏執狂的振るまいに、さすがの千倉も閉口し、讃子に相談して東京の知人宅へ移ってもらう事にする。

その後を追うように、節も辞めてしまう。

ふくよかな身体とは裏腹に、性に対しては全くの「ネンネ状態」だった初も、他のお手伝いさんに比べかなり遅れてだったが、ペンフレンドの種村(松村達雄)と結ばれ、家を出て行く。

伊豆に住まいを移した千倉家にやってきたのは、互いの勝ち気な性格から、絶えず、男をめぐって仲たがいをしていた百合(団令子)と銀(大空真弓)、そして、マイペースの鈴(池内淳子)の三人。

早くからお手伝いさんの仕事を嫌っていた百合は、千倉に紹介してもらい「ダコちゃん」こと、 映画女優の高嶺飛騨子の付き人になった後、父の死をきっかけに郷里の九州へ帰ってしまう。

銀は、百合と取り合っていたヤクザなタクシー運転手、満雄(小沢昭一)と結ばれる。
鈴は、旅館の番頭、長谷川(三木のり平)から求愛され、こちらも百合と同時に結婚式をあげる事に。

そんな二人の結婚式の日、千倉家で留守番をしていたのは、まだ16才のお転婆娘、銀の妹、万里(中尾ミエ)であった。

しかし、その万里もお手伝いさんにはさらさら興味がないらしく、キャディになるといって、さっさと家を出てしまう…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

とにかく、次々に登場する女優陣のキャラクター合戦が面白い一品。
特に、淡路恵子が演ずる小夜のキャラクターは強烈!
野心に燃えながらも、結局、挫折して去る百合の悔しさ、哀しさを巧みに演じた団令子の存在感も忘れがたい。

それらの女優陣を受け止める、森繁独特のユーモアと好色振りも絶品!
さり気ない小さなエピソードの集積だが、丁寧な演出で、心に残る日本映画らしい名品となっているのが見事である。