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阿片戦争

1943年、東宝、マキノ正博監督作品。

戦時中に作られた国策映画であるため、登場するイギリス人(全て、日本人俳優が演じている)を完全な「悪」として描いているのが特長。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

今から、約百年前、インドから清に赴任してきた英国極東貿易局のチャールズ・エリオット(青山杉作)と、その弟で軍人の、キャプテン・ジョージ・エリオット(鈴木伝明)は、本国からの度重なる資金調達命令に答えるため、阿片で儲けている清の商人たちと近づきになる。

その頃の清では、阿片を取り締まる役目であるはずの役人が、阿片をさばく元締めだったりしていたのである。

そうした事態を憂えた時の施政者は、湖北総督だった林即徐(市川猿之助)を阿片取り締まり大臣に任命する。

林は、顔を知られていない強みを生かし、客として阿片の元締めであった役人に近づく。
その場で身分を明かし、さっそく手下たちに元締めたち一味を捕縛させた林であったが、本当に大量に阿片を所有しているのは、十三行にあるイギリス領事館である事を知っていた。
そこを壊滅させなければ、阿片から国を守る事はできない。

しかし、領事館に差し向けた林の配下の者に対し、チャールズは慇懃無礼な態度で、医療目的で規定量の阿片の売買は許されているはずだと嘯く。

そうした林側の動きに対し、弟ジョージは激昂し、威嚇のため、港に停泊中の軍艦から、市街地に向けて空砲を撃ち始める。

そうした中、目が不自由な妹、麗蘭(高峰秀子)の治療のため、阿片を求めて町を訪れていた姉の愛蘭(原節子)は、混乱のるつぼと化した町中で、妹とはぐれてしまう。

愛蘭は林の配下に救われるが、妹の麗蘭の方は阿片の商人の手に落ちてしまう。
その麗蘭は、一斉検挙された悪人たちと一緒に処刑場に連れて行かれる所を、偶然愛蘭に発見される。

林は、押収してある阿片までも金で買い戻そうとしていたエリオット兄弟も招いて一大パーティを執り行なう。
パーティたけなわの夜の8時、林はチャールズたちに特別の余興を用意してあると行って、客たちを窓辺に招く。
そこから見えていたのは、部下たちに命じて、遠くの山中で、集めた阿片を焼き捨てさせていた炎の光だった。

屈辱を味わったエリオット兄弟は、町に本当の攻撃をしかけはじめる。
阿片戦争の勃発であった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

いきなり冒頭から、はためくイギリス国旗に「海賊旗」と文字をかぶせている所が凄い。

エリオット兄弟はじめ、イギリス人の横柄さ、無礼さを誇張気味に描く事で、イギリス憎し、欧米人許すまじ…という制作意図が透けて見えるように作られている。

林が登場してきてからは、何だか、「火付け盗賊改め」ならぬ「阿片改め」版「鬼平犯科帳」みたいなノリになっている。
制作意図も意図だし、猿之助が中心に据えられている事もあってか、全体的に、歌舞伎を連想させるような、やや力んだ演出に感じられるのだ。

そうした事情もあって、ドラマとしては大味気味なのだが、映画としては実に見どころの多い作品である事が分かる。
とにかく、当時の市街地の様子を再現した巨大な屋外セット、何百人という群集、それに、円谷英二の手になる巧みなミニチュアワークや絵合成が加わり、日本映画としては信じられないくらいのスペクタクルを展開しているのだ。

イギリスの軍艦などは、本物の帆船のフイルム、実物大セットの甲板なども織りまぜて描かれているので、それらの砲撃シーンなど、よほど気を付けて観ていないと作り物と分からないくらい、特撮の完成度は高い。

さらにクライマックスとなる後半のパーティのシーンでは、華麗なミュージカル演出も見られる。

とにかく若々しい原節子と、高峰秀子という当時の二大スターが、各々、別の場面で歌を披露するサービスシーンもあり、驚かされる。

知られざる日本製特撮スペクタクル大作である事は確かであろう。