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続青い山脈

1949年、東宝&藤本プロ、石坂洋次郎原作、今井正監督作品。

「青い山脈」の後編に当たる。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

理事会が開かれ、沼田の発案により、父兄代表として、梅太郎と、六さんの友人、富永(伊豆肇)まで親に化け出席するはめに。

父兄に対し、事件の証拠物件である手紙を読み聞かせる岡本先生(藤原鎌足)。
「へんしい、へんしい…」と、珍妙な内容。

実は、執筆者の語学力不足のため、「恋しい」を「変しい」、「悩む」を「脳む」などと書かれていたのである。

色々討議の結果、民主的に投票しようと言う事になる。
その結果、島崎先生を支持する意見の方が多数を占める。
その直後、富永の偽父兄工作が露見しかかり、島崎先生側はピンチを迎えるが、梅太郎のとっさの機転で窮地を脱する事となる。

岡本先生が宿直の晩、校長室から妖し気な物音が聞こえてくる。
様子を探りに言った岡本先生は、そこで意外な人物に出くわす。

実は、理事会の後、すっかり状況が逆転し、完全に面目を失った形となった偽手紙の首謀者、松山浅子が、問題の手紙を盗み出しに来たのであった。
それを聞かされ、驚きながらも、そこまで浅子を追い込んでしまった自分を反省する島崎先生。

しかし、運動場では、当の松山浅子が、新子に詫びを入れていたのである。
新子は、浅子を騙して、目をつぶらせたまま自分の頬を叩かせ、これでお互いに借り貸しなしの友だちになった告げる。
号泣して抱き合う二人。

その後、新子と六さんは、晴れて付き合いはじめる。
今日も、二人で泳ぎに来たのだが、その現場を、井口の息のかかったヤクザ者に見つかり因縁を吹き掛けられ、喧嘩騒ぎとなる。
偶然、その場に通りかかった富永のおかげで、ヤクザは逃げ去るが、残された六さんは、自分の取ったあさはかな行動に自己嫌悪を感じ、心配して近付く新子を拒絶してしまう。
しかし、新子は、そんな六さんを好きだと叫ぶ。

有名な「青い山脈」のメロディに乗って、島崎先生、沼田校医、六さん、富永、笹井和子らは自転車に乗って海岸へとピクニックへ出かける。

そこで、沼田は、島崎先生に結婚を申し込む。
はにかみながらも、それを承知する島崎先生。

海辺では、六さんも新子の前で「新子さんが好きだ〜!」と叫ぶのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

作られた時代が時代なだけに、今のドラマとは、テンポがまるで違う。
この内容で、前後編、合わせて3時間…というのは、あまりにのんびりしている。
しかし、決して、観ていて退屈する事はない。

校医の沼田に秘かに思いを寄せながらも、島崎先生とであってしまうと、その美貌と人間性に感心し、自ら身を引く芸者、梅太郎や、丸眼鏡をかけ、三枚目的な女学生、和子を演じる若山セツ子、さらに、その和子と何となく良い仲になってしまう、どこか茫洋とした富永など、キャラクターの面白さが際立っているからである。

嫌な権力者、井口にすりよる、どこか腹黒い体育教師、田中らの描写には、どこか夏目漱石の「坊ちゃん」を彷彿とさせる要素も感じられて興味深い。

「坊ちゃん」と、その後のテレビの一連の学園ものシリーズなどを繋ぐ、中間期を代表する作品ではないだろうか。

伸びやかな肢体と心を持つ新子を演じる杉葉子、神々しいほどの美貌の原節子、色っぽい小暮実千代など、女優陣が光っている佳作である。