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私を愛したスパイ

この作品、イアン・フレミングの原作の方はポルノである。

ボンドは主人公たる女の回想の中にしか出てこない、とんでもない異色作。

これを、ロジャー・ムーアがボンドになって以降、何となく、作品自体もこじんまりとした出来のものばかりになり、人気も下降気味だったため、悩んだスタッフが思いきって、ショーン・コネリ−「007はニ度死ぬ」時代の、ド派手、荒唐無稽、お子ちゃま向けイメージに180度改変した作品がこれ。

内容も、完全に、全盛期の頃のシリーズのセルフパロディになっている。
今で言えば「オースティン・パワーズ」とか「トリプルX」のようなもの。

この作戦が大当たり!
分かりやすい敵役ジョーズや、ボンドカー、ロータス・エスプリの登場などもあり、スーパーカーブームまっただ中だった当時の子供達に大受け!シリーズ最高のメガヒットとなる。

例えば、アメリカの原潜を、巨大タンカーが口を開き飲み込むアイデアは、「二度死ぬ」の宇宙船強奪シーンそのままだし、クルト・ユンゲルスが住んでいる「アトランティス」の水族館風の内部は、「ドクター・ノオ」でのセットと同じ。

ボンドカーの水中アクションシーンは「サンダ−ボール作戦」だし、冒頭、バーバラ・バック演じるソ連の女スパイの恋人とのスキーアクションは「女王陛下の007」を連想させる。

かように、全編パロディだらけ。

ただし、派手な演出が多い割には、部分部分のサスペンスはどこか大味で、エジプトでのジョーズとの戦いなど、やや退屈としか言い様がない所も多い。
大人のファンには、イマイチ感があった。

しかし、有名なユニオンジャックのパラシュート部分(これは「トリプルX」でパクられている)や、ベッドに横たわるソ連の男が、かかってきた指令電話を取るかと思いきや、傍らの女性スパイの方が出る…など、面白いアイデアもないではなく、この次の作品「ムーンレイカー」よりは、まだましな出来と言える。

初期のシリーズ作を知らない人には、本作でそのエッセンスを全て観る事ができる「お徳感」はあるかも。