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子連れ狼・三途の川の乳母車

1972年、勝プロ、小池一雄原作&脚本、三隅研次監督作品。

小池一雄と小島剛夕コンビによる大ヒットコミックの映画化の二作目に当たり、冒頭からラストに至るまで、奇想に富んだアイデアとアクションが繰り広げられる。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

冒頭いきなり、拝一刀(若山富三郎)の元に走り寄ってくる虚無僧姿の刺客。
それを幹竹割りにする一刀。
その刀を真剣白刃取りで握りしめる虚無僧。
しかし、すでに刀の切っ先は虚無僧の額にめり込んでいる。

その背後から忍び寄ってきた、同じく虚無僧姿の男が、先の虚無僧の肩をジャンプ台にして、一刀に空中から斬り掛かる!
それを、慌てず、小刀で突き刺す一刀。

まさに、007映画でも観るのような奇抜な出だしである。

…というより、完全に007シリーズの時代劇版といった方が分かりやすいだろう。

本編が始まり、供の忍者たちを従えた黒鍬小角(小林昭二)が、明石柳生の柳生鞘香(松尾嘉代)に、一刀暗殺の相談をしている。

気の強い鞘香は、どこか用心深い小角の態度を嘲り笑う。
女だけの明石柳生の実力を見せるために、鞘香は小角に配下で一番腕利きの忍者と勝負させろという。
小角が前に出した忍者を、女たちはたちまちずたずたに切り裂き、肉塊に変えてしまう。

後日、阿波藩より、藩の貴重な収入源である藍玉作りの秘法を他藩に持ち出そうとする、幕屋忠左衛門という男を暗殺して欲しいとの依頼を受けた一刀は、道中、角兵衛獅子を披露していた女芸人たちに襲われる。
さらに、大根を川で洗っていた村娘たちからも…。

全て、鞘香が放った別式女(女ボディガード)たちであった。

やがて、明石港から出航した永楽丸に乗り込んだ一刀。
その船には、執拗に一刀を付け狙う鞘香のみならず、忠左衛門を護衛する弁天雷三兄弟、左弁馬(大木実)、左天馬(新田昌玄)、左来馬(岸田森)らも乗り込んでいた。

その船が、放火によって炎上しはじめる。
いち早く脱出する三兄弟。

一刀は、大五郎の乗った乳母車をそのまま海に放り出すと、自らも海に飛び込む。
それを海中から襲おうとする鞘香。

それを巧みに制した一刀は、陸にたどり着くと、大五郎、鞘香の濡れた衣服を剥ぎ取ると、自らも裸身となり、暖を取るために三人一緒に身を寄せ合う。
その最中にも、一刀の刀に手を伸ばそうとする鞘香であったが、大五郎がさわる自らの乳房の感触に、殺意を失わせて行くのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

全編、個性豊かな敵が次から次へと襲い来る、危機また危機、アクションに次ぐアクションの連続!
ストイックで圧倒的な強さを誇る拝一刀の立ち回り。
幼き大五郎の健気さ、愛らしさ。
乳母車に仕掛けられた小道具の数々!
暗殺者としての自分と、女である自分の間で揺れ動く鞘香の微妙な心。

…などなど、単なる娯楽活劇以上の見どころを満載した、まさに傑作の名に値する逸品である。
これだけの面白さが詰め込まれていれば、このシリーズが、海外でも大ヒットしたのも当然だと思われる。

現に、弁天雷三兄弟のキャラクターはそのまま、ジョン・カーペンター監督の「ゴーストハンターズ」(1986)に、「嵐の三人組」として流用されているほどの影響を与えている。

見なければ損をする…といいたいほど、日本映画が世界に誇る痛快娯楽時代劇の最高峰の一本!