TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

無宿人御子神の丈吉 黄昏に閃光が飛んだ

1973年、東京映画、笹沢左保原作、池広一夫監督作品。

「木枯し紋次郎」と並ぶ、笹沢左保原作の股旅小説の映画化。
三作作られたシリーズ最終作でもある。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

山中で一人、鳥を焼いて食べていた丈吉の側に、男女二人の旅人がヤクザものに追われて逃げ込んでくる。

身分違いの身でありながらも、駆け落ちをした二人らしい。
ヤクザものに脅されて、侍姿の男の方は、急に連れの女を殺して、自分は助かろうとする。
その態度に呆れたヤクザたちは侍を斬殺、女も手込めにしようとする。

成りゆき上、やむなく、ヤクザたちを斬り捨ててその場を立ち去ろうとした丈吉の後を、一人の鳥追い姿の女おりん(安田道代)が付いてくる。
どうして、最初から助けてやらなかったのか、こうなったら、あんたの最後を見届けてやる…という。

一方、一件の道中茶屋での出来事。

酔った侍が女をからかっている。
それを諌めるヤクザ風の男。

あまり侍がしつこいので、とうとう、男は懐から一本の包丁を取り出し、侍に勝負を挑む。
勝負はあっけなかった。
男が投げ放った包丁が、侍の肩に突き刺さる。

そのヤクザ風の男は、風車の小文治(夏八木勲)といい、国定忠治の命を受け、丈吉を倒すために旅をしていたのであった。包丁投げはその得意技であった。
先ほど、茶屋で助けた女は、七年前、村を出た時から彼が好きだった庄屋の娘だったのだ。
その小文治は、侍を倒した後、偶然にも、その丈吉とばったり出会ってしまう。

しかし、小文治は胸を患っていた。

丈吉は彼との勝負を約束した後、やむなく、彼を野津屋という宿へ連れ込んで寝かせる。
そこは、先ほど、茶屋で小文治が助けたお春が女主人を勤める宿であった。

しかし、付近を仕切るヤクザの親分、唐蔵の目を気にするお春は、決して、小文治の逗留を快く思っていなかった。
茶屋で用心棒を傷つけられ、小文治を捜しまわっていた唐蔵の子分、太助(石橋連司)は、野津屋の下女から小文治を匿っているとの話を聞き付け、さっそく親分の唐蔵に伝える。

唐蔵は、お春を誘拐し、小文治をおびき出そうとする。

それを知った病んだ身体のままの小文治は、まず、約束の丈吉との勝負を挑み、あっさり破れると、土下座して命乞いした後、そのまま、唐蔵の元へ、お春救出へ向かう。

それをおりんの口から知らされた丈吉も、しぶしぶながら小文治を捜しに戻る事に…。

唐蔵の屋敷に一人乗り込んだ小文治、しかし、助けるつもりだったお春の口から発せられた残酷な言葉は…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

この作品は、ほとんど、小文治の物語といって良い。
丈吉は、傍観者的立場である。

それだけに、小文治を演ずる夏八木勲の芝居は見ごたえがある。

逆にいえば、丈吉ものとしての最終話…という雰囲気は希薄である。
正直、その悲愴感溢れるラストの印象深さとは裏腹に、映画として、全体的に地味な印象は拭えず、興行的にも成功しなかったものと思える。

決して、悪い作品ではない。
時代劇ファンには、一見の価値はあるものだと思う。