TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

昆虫大戦争

1968年、松竹、二本松嘉瑞監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

水爆実験の映像から物語は始まる。

かつて、激烈な戦争の舞台であった亜南群島(その後、長年、日本の手からは離れていた…と説明がある)の上空を飛ぶ、水爆を搭載した西側某国(具体的な国名は出ないが、一目瞭然)爆撃機B-52内で、黒人兵チャーリ−(チコ・ローランド)が、機内に紛れ込んだ一匹の蜂の羽音に怯え出す。

彼は戦争で精神を病み、その後、麻薬常習者となっていたのだった。

錯乱状態の彼を他の乗務員が取り押さえようとしていた最中、その爆撃機は、突如、昆虫の群れに襲われ、墜落する。

その様子を、下の小島から見ていたのは、東京の大学からの依頼で、昆虫採集をして生計を立てている秋山譲治(川津祐介)と、ミス・アナベル(キャシー・ホーラン)。
二人は、無人島で、熱い抱擁を交わしている所だった。

墜落した爆撃機からパラシュートが4つ開く。
3つは、脱出した乗務員たち。
残る一つのパラシュートには水爆が付けられていた。

小島に降り立った3人は、洞窟を見つけ、一旦はその中に避難したが、後に、捜査中の警察官らにより、死体となった2人が、その中で発見される。
チャーリ−は、足を滑らせて落下したのか、崖下で気絶しており、島の病院で目覚めた彼は完全に記憶をなくしていた。

その頃、地元の漁師たちに、軍人用の腕時計を売り付けていた譲治に疑いの目が向けられる。
警察は、彼を軍人殺害の重要参考人として連行してしまう。

譲治の新妻であるゆかり(新藤恵美)は、大学の南雲(園井啓介)に電報を打ち、譲治救済を依頼する。
さっそく、島にやってきた南雲は、消えた水爆の捜査をするゴードン中佐(声-納谷悟郎)と対立しながらも、事件の謎を解こうと、独自の捜査を開始する。

やがて、東側のスパイたちが、島で暗躍している事実が判明しはじめる。
彼らは、島特有の毒虫を改良し、生物兵器として研究、繁殖させていたのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本では珍しい(ひょっとしたら、唯一の?)「動物パニック映画」。

その手の作品の嚆矢といわれる、ヒッチコックの「鳥」が公開されたのが1963年。

また、「ブロークン・アロー」つまり「折れた矢作戦」という言葉が、本作でも使用されている点にも注目。
実際に米軍内で使用されている「核兵器紛失」の暗号らしい。
1967年公開のSF洋画「魚が出てきた日」にも、どこか着想が似ているのは、偶然ではないだろう。

冷戦構造、核全面戦争の危険性への警告をテーマにした作品には、日本でも、東宝の「世界大戦争」(1961)などの先例もあるが、本作も、おそらく、前述の「鳥」や「魚が出てきた日」などに触発されて、そうしたテーマに挑んだ作品だと言える。

川上景司による特撮は、予算の少なさもあったのだろうが、今の目で観ると、かなり、ちゃちに感じられる部分があるのが残念だが、本作と同時期に公開された「吸血鬼ゴケミドロ」同様、一種独特の異様な雰囲気には、どこかしら捨てがたい魅力があり、救いようのないラストも長く心に残る。

同じ年の「2001年宇宙の旅」(1968)などにも相通ずるトリップ要素がある所が、共通の時代背景を感じさせて興味深い。

どこかしら「ゲテもの扱い」されているような雰囲気があるが、そろそろ再評価されても良い、隠れた名作ではないだろうか。