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新諸国物語 笛吹童子

1954年、東映京都、萩原遼監督作品。

三部から構成されており、一部「どくろの旗」、二部「妖術の斗争」、三部「満月城の凱歌」からなる。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

今から約500年の昔、応仁の乱の後、丹波の国、満月城は野武士の首領、赤柿玄蕃(月形龍之介)一党に攻め込まれ、城主、三輪首里之介は自害して果てた。

しかし、城主の遺児、萩丸(東千代之介)と菊丸(中村錦之助)兄弟は、各々、剣と面作りの修行のため明の国に留学中であった。

見事な笛を吹く事から「笛吹童子」と呼ばれていた菊丸は、師匠から不吉な話を聞かされる
白鳥の面とされこうべの面が互いに空中で戦い、白鳥の面が割れてしまったというのである。

父親の身を案じた菊丸は、さっそく、萩丸に異変を知らせ、二人は急ぎ帰国する事になる。
嵐の玄界灘に浮かぶ幽霊島に明かりを発見した菊丸は、その島に小舟を付け、かつての家臣であった上月右門(清川荘司)と出会う。右門は二人を呼びに明へ渡ろうと海へ出たものの遭難して、その島に漂着していたのであった。

帰国した三人を待ち受けていたのは、荒れ果てた都であった。
復讐心に燃え、城へ向かおうとする兄、萩丸に、菊丸は「戦いのない世界、武器のない平和な世界を望みたいので、自分は別の道を捜す」と言い残し、そこで別れる事になる。

無謀にも、右門と二人だけで城に乗り込んだ萩丸は、落とし穴に落とされたあげく、明の国から持って来たされこうべの面を顔に付けられてしまう。
一旦、顔に貼り付いたその仮面は、呪の力なのか、どうやっても剥がす事ができなかった。

一方、かろうじて秘密の抜け穴から城を脱出した右門捜査のため、その実家までやって来た玄蕃一味の一人、斑鳩隼人(楠本健二)は、家に隠れている右門に気付きながらも、武士の心で助けてしまう。

後日、その事が玄蕃の耳に入り、隼人は拷問を受ける。
その話を聞いた右門の娘、桔梗(田代百合子)は、先刻の恩義を返すために自分から城に出頭して、両名とも磔の刑に処せられる事になる。

その瞬間、一天、にわかにかき曇り、雷鳴轟く雲間から現れたるは一匹の龍!
それに乗っていたのは、霧の小次郎(大友柳太郎)であった。

ここで、一部は終了する。

二部では、長年生き別れになっている妹の胡蝶尼(高千穂ひづる)を捜すために、少女を誘拐しては「鬼」と恐れられるようになっていた霧の小次郎によって、大江山に連れてこられ、妖術をかけられた桔梗が、面作り用の木を捜しに山中に迷い込んで来た菊丸を捕らえようとするが、その吹く笛の音によって、小次郎を打ち負かすエピソード。

その後、小次郎によって白骨の谷に突き落とされた桔梗が、大鷲によってさらわれ、山麓の刀鍛冶の家に落とされたものの、再び、謎の黒い霧に連れ去られてしまうエピソード。

その黒い霧の正体は、黒髪山に住む妖術使い、堤婆(ダイバ=千石規子)であった。
彼女の元には、妖怪たちと遊ぶ一人の可愛い少女胡蝶尼がいた。
少し、妖術も使える胡蝶尼は、かつて、小次郎から捨てられた後、堤婆に捕らえられ、井戸にとじ込められていた隼人と桔梗を、山から助けてやるエピソードなどが描かれる。

その後、再会した小次郎から自分の妹だと知らされた胡蝶尼は、その事実を頑固に受け入れようとせず逃げ出そうとしたため、逆上した小次郎によって吊り橋を斬り落とされ、千尋の谷に落ちてしまう。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ここで、二部が終わる。

子供向けの添え物映画であったが、空前のヒットを記録し、現在の東映の礎になったといわれる作品で、東宝の「七人の侍」「ゴジラ」などと同年の作品でもある。
東映ヒーローものの原点ともいえる作品かも知れない。

今観ると、その御都合主義丸出しのストーリー展開や、稚拙な特撮技術、また肝心の主人公たる笛吹童子が意外と活躍しない不満点など、気になる箇所も多いのだが、戦後、娯楽が少なかった時代の子供達が夢中になった波乱万丈な要素は十二分に感じられる。

数百名のエキストラで描かれる戦乱のシーンなどは、子供向けとは思えないほど贅沢に作られている。

当時は、霧の小次郎が大人気だったらしいが、個人的には、お茶目な魔女っ子、胡蝶尼の愛らしいキャラクターが強く印象に残った。
演じる高千穂ひづるさんは、その後、「月光仮面」「隠密剣士」でお馴染みの大瀬康一氏の奥様になられた方である。