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大日本スリ集団

1969年、東宝、藤本義一原作、福田純監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

中国戦線なのか、戦場で声を掛け合う二人の兵隊。
一人は、スリの平平平平(ひらだいらへっぺい-三木のり平)、もう一人はスリ係りの刑事、船越富蔵(小林桂樹)であった。

それから20年、船越は大阪梅田署の刑事部長、平平は、元ストリッパーであった新妻、紙江(高橋紀子)と二人の幼子を養うスリ集団の組合長になっていた。
前妻との息子、平太郎(寺田農)が、ぐれてヤクザになっているのが、現在、平平、唯一の気掛かりであった。

そんな中、組合のメンバー、レンコン(古今亭志ん朝)が警察に捕まってしまう。

そのレンコンの妻に、組合からの慰労金を渡しに行った平平、帰り道で偶然帰宅途中の船越と出会う。
誘われるまま、船越の家に招かれた平平は、そこで、船越の一人娘、昭子(酒井和歌子)と出会う。
船越も又、妻に先立たれていたのであった。
昭子は、平平の正体を知らない。

そんな数日後、平平は、船越から奇妙な依頼を受ける。
娘のバッグの中から、封筒をスリ取ってくれと言うのである。

さっそく通勤途中の電車内でスリを実行した平平は、問題の封筒を船越と一緒に開封して、中身を確かめる。
そこには、1年ほど前の日付けが記された一通の婚姻届が入っていた。
女名は昭子、男名は城山なる聞き慣れぬ名前。

後日、船越は、その城山という男を突き止め、単身問いただしに行き、妻子持ちの相手から娘が弄ばれていたと感じ取る。しかし、その事を昭子にどうしても聞き出す事はできなかった。

ある日、組合員の一人で、平平の片腕的存在であったフランス(平田昭彦)が、船越の執拗な追跡から逃れる途中、車に轢かれて死んでしまう。

逆上した平平は、その仕返しのつもりで、昭子に先日の封筒を盗んだ事実を打ち明けに行く。
驚愕した昭子は、そのまま、父に黙って家を飛び出してしまう。

その事実を知って、平平の家に乗り込んで来た船越、近くの公園に平平を呼出し、そこで取っ組み合いの喧嘩となる。

そんな中、平平の息子、平一郎が刺されて入院する。

やがて、退院した平一郎をヤクザから足を洗わせようと白梅組に同行した平平、親分から息子の小指をつめるか、自分の右腕の人さし指を切れと迫られる。船越から、そう指図された…とも。

平一郎は自らの小指を、その場でつめる。

ヤクザの言葉を鵜呑みにし、完全に頭に血が登った平平、警察へ怒鳴り込む。
しかし、船越の目の前で、彼は倒れてしまう。脳硬塞であった。

若い妻、紙江は平一郎と逃げ出し、二人の幼子は施設へ入れられてしまった平平、不自由な身体のまま、外へ飛び出し、性懲りもなく、又スリをしようとする所を船越に発見される。

警察に連れて来た平平を、老人ホームへ入れる手続きをしてやった船越、その後で、港へ駆け付ける。
ブラジルへ渡る決心をしたと連絡して来た昭子の乗る船を見送るためであった。
しかし、出航の時間はとうにすぎていた。

最後まで、すれ違いであった、父と娘の寂しい姿がそこにあった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ペーソス溢れる人情ドラマの秀作である。

少年時代、行商人だった母親(菅井きん)がスリの餌食になっていた事から、スリを憎み、大人になってからは、仕事一筋、頑固一徹で、家庭を顧みる事もできなくなった不器用な男と、スリという職人芸に溺れてしまい、こちらも何かを見失ってしまった哀れな男の奇妙な友情関係が綴られている。

船越の部下で、昭子に気がある新米刑事、金貝を田中邦衛が演じている。

万博直前の当時の風俗、奥村チヨが歌う「恋の奴隷」のメロディや、スポーツ新聞に書かれた見出し「馬場、猪木、香港で吠える!」、映画の看板に書かれた「ザ・タイガース、夢の都を行く」…などが懐かしい。