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夜叉ケ池

1979年、松竹、泉鏡花原作、篠田正浩監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大正2年、夏、一人の植物学者、山澤(山崎努)が、福井と岐阜の県境で、龍が住むといわれる池を目指して今庄駅を降りた。

周辺は長年の日照りで砂漠状態、山澤の水筒も空になってしまう。
そんな彼がたどり着いた集落では、井戸も枯れ果て、死者が出ている様子。

しかし、やがて、山澤がたどり着いた山奥には、不思議な事に水が溢れていた。
「琴弾き谷」と呼ばれる場所に着いた山澤は、鐘突き堂に隣接する一軒家と一人の美しい女性に出会う。
百合(坂東玉三郎)と名乗るその娘は、一軒家で、白髪の男と暮していた。

山澤は、外からも気配で察せられるその家の男が、彼が探し求める、かつての親友、萩原あきら(加藤剛)ではないかと疑うが、おびえる百合の態度を見て、その場を立ち去る。

しかし、途中で降り出した雨で気が変わった白髪の男が、家を飛び出し山澤を追う。
やはり、その男こそ、各地の民話を収集する途中、長らく失踪していた萩原本人であったのだ。
白髪は身を隠すためのかつらであった。

萩原は、旧交を暖める間もなく、深夜、請われるままに、山澤を夜叉ケ池に案内する。
その道すがら、荻原は、朝夕、丑三つ時の計三回、鐘を鳴らさないと、池の水が溢れ、ふもとの集落が水没してしまう…という地元の伝説を守るために、自分は今でもそれを実行しているのだと、山澤に話して聞かせる。

しかし、山澤の方は、百合は魔性のものであるから、ただちに自分と一緒に逃げろと荻原を説得するのだった。

同じ頃、ふもとの集落では、米を持って凱旋帰郷した代議士が、雨乞いのため、生け贄を池に投じようと言い出す。
その白羽の矢が立てられたのは百合であった。

群集心理のおもむくまま、村人たちは琴弾き谷へ向かい、一人留守番をしていた百合を、強引に牛の背にくくり付けようとする。

やがて、その騒ぎに気付いた山澤と荻原が戻って来る…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

こうした、現実の進行と平行する形で、池の主、白雪様(坂東玉三郎-二役)や異形の妖怪たちの様子が描かれている。

村会議員(金田竜之助)の言いなりになる愚かな教師(矢崎滋)、神主(南原宏治)、ヤクザもの(唐十郎)、村民(山谷初男)ら…。
一方、妖怪を演ずる石井めぐみ(椿-これがデビュー作らしい)、三木のり平(なまずの黒和尚)、常田富士男(沢蟹の五郎)らのコミカルな演技が楽しい。

白雪姫を演ずる玉三郎は、歌舞伎でお馴染みの白塗り美貌振りなのだが、薄化粧状態の百合の方は、正直、中世的な存在以上のものに見えないのが若干惜しまれる。

クライマックスの特撮は、なかなか見ごたえがある。
スペクタクルの締めくくりは、「イグナスの滝」でのロケを使用した勇壮なものである。

現実的な描写と「戯画風」「様式的」な表現の並列を、どう評価するかで、本作全体の印象も変わると思う。
今改めて観てみると、それなりに楽しめる和製ファンタジーになっていると感じる。

冨田勲による、幽玄たる音楽も印象深い。