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サイコ

ものの本によれば、公開当時、この作品の衝撃度は並み大抵ではなかったという。

何せ、登場人物で、当時、多少なりとも知られていたのは、ジャネット・リ−くらい。
当然、観客は、彼女が主役だと思って物語を観ている。

彼女が盗み出した大金にも、キャメラが絶えず注視するような撮り方をしている。

彼女とその大金の行方は…。

ところが、これが全て「ひっかけ」、観客の思惑を巧みにそらすために、作者が観客に対して用意した「トリック」なのだから驚かされる。

これでは、当時の観客が度胆を抜かれたとしても当然であろう。
主役とばかり思い込んでいた唯一のスター女優が、途中であっさり殺されてしまうのだから…。

何でも、当時、作風の行き詰まりを指摘されていたヒッチコックが、起死回生を賭けて、テレビシリーズの「ヒッチコック劇場」のスタッフと組んで仕掛けた大バクチだったらしい。

確かに、本作はモノクロ作品と言うだけではなく、全体的に「低予算映画」そのものである。
話の進展も、60年代に人気のあったテレビサスペンスの雰囲気そのまま。
それが、アイデア次第で、映画としてもこれほどの傑作になるのだから、これはもう凄いと言うしかない。

ミステリーとして考えると、「アンフェア」ギリギリの演出もあるのだが、あまりにも衝撃的なラストを観てしまうと、そういう些細な事はもうどうでも良く感じてしまう。

あまりにも有名な作品だけに、観る前に、すでにあれこれ余計な情報を知ってしまっている不利さもあるが、虚心坦懐に観る事をお薦めしたい。

まさに、歴史的な名作の一本。