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黒蜥蜴

1968年、松竹、江戸川乱歩原作、三島由紀夫戯曲、深作欣二監督作品。

大映京都、井上梅次監督、京マチ子主演の「黒蜥蜴」に次ぐ、再映画化作品である。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

入口のラオコーン像の土台には「幻」という一文字が刻み込まれており、内部の壁面一杯には、ビアズレ−の「サロメ」の絵が大きく描かれ、ボディペインティングの女性たちが怪しい光の中で踊り狂っている秘密クラブに、一人の紳士が座っていた。

明智小五郎(木村功)である。

彼は、美貌の女性(丸山明宏)が酔いつぶれた一人の青年(川津祐介)を、そっと外へ連れ出すのを見ていた。

後日、明智は、知人(丹波哲郎)から紹介された宝石商、岩瀬(宇佐美淳也)の一人娘、早苗(松岡きっこ)を誘拐するという予告から彼女を守るよう依頼を受け、大阪のホテルにいた。

早苗は、緑川夫人(丸山明宏)という美貌の女性から声をかけられていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

この後の展開は、ほぼ、京マチ子版「黒蜥蜴」と一緒である。

目立った違いといえば、岩瀬の自宅で、護衛役として待機していた的場刑事(西村晃)が、怪し気な行動をする女中、ひな(小林トシ子)から、蛇を首に投げ付けられ窒息する…という、ちょっとグロテスクなシーンと、後半、結局、早苗が誘拐され、その身代金として黒蜥蜴(丸山明宏)から要求された宝石「エジプトの星」を奪還せんと、黒蜥蜴の乗る車を尾行しようとした明智側の車が、突如、屋外看板から飛び出してきた三台のバイクの出す煙幕で翻弄される…というアクションシーンが加わっているくらいである。

興味深いのは、早苗役を演ずる、かなり濃い顔つきの元ボンドガール松岡きっこ、彼女を誘拐するため利用される美貌の青年、雨宮潤一役の川津祐介、そして圧巻は、黒蜥蜴にはく製にされ、その熱いくちづけを受ける筋肉質の青年を演じている、戯曲原作者三島由紀夫本人の登場場面などであろう。

驚愕の顔を歪めた状態で、人形として静止したまま(微妙にプルプル動いているが)自慢の裸で我慢している三島の姿は、観ていて楽しい。

深作作品としての注目点は、秘密クラブで登場する大きなビアズレ−の壁画は、後年の角川映画「里見八犬伝」での巨大なクリムトの壁画として、また、丸山(美輪)明宏と三島の接吻シーンならびに、ラストで明智を襲おうとするひなの目に入れられた金色のコンタクトが、同じく角川映画「魔界転生」に流用されている点である。

しかし何といっても本作の目玉は、主役を演ずる丸山明宏の不思議な魅力に尽きる。
京マチ子は、どういう状態でも、女性にしか見えなかったが、丸山の場合は、正直、女装している時はあまり本当の女性には見えないし、逆に男装している時でも、本物の男性には見えない。
どう見ても「丸山明宏」という、特異な存在にしか見えない所が凄い…というしかない。