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蜘蛛男

1958年、新映画、江戸川乱歩原作、山本弘之監督作品。

「殺人鬼 蜘蛛男」と「蜘蛛男の逆襲」の二編からなる。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

事務員募集の新聞広告を観て、一人の若い女性がビルの一室を訪れる。
しかし、その部屋の主は、もう募集人員は決定したと断る。
ところが、不思議な事に、美しい女性、里見絹枝(八島恵子)が続いて訪れると、何故か採用されてしまう。

稲垣と名乗るその部屋の主人は、絹枝を自宅と称する屋敷に招き入れると、大きな浴室のある部屋で、彼女に襲いかかるのだった。

やがて、美術店やデッサンをしている教室に置かれた石膏像から、切断された人体が発見され大騒ぎとなる。

警察は、法医学の権威、畔柳博士(岡譲司)に、事件解決の協力をあおぐ。

その畔柳邸を一人の女性が訪れて、失踪した妹の捜査を依頼する。
里見絹枝の姉、芳枝(八島恵子ー二役)であった。

後日、芳枝も何者かに誘い出され行方不明になるに及んで、畔柳博士の助手、野崎(舟橋元)は当惑する。

さらに、人気映画女優、富士洋子(宮城千賀子)が、撮影中に堂々と誘拐されてしまう事件が発生。

その頃、警視庁を訪れた一人の男があった。
東南アジアを旅行中だと思われた、名探偵、明智小五郎(藤田進)である。

明智は、畔柳博士を怪しいと睨み、山中に彼を誘い出す…。

後編では、整形手術をして全く別の顔になった蜘蛛男こと、畔柳博士が、映画スタジオから、再び富士洋子を誘拐し、さらに、バレエ教室の20名の若い女性たちを、一斉に誘拐してしまう事件が描かれている。

畔柳博士は、彼女たちの身体を使って、巨大なパノラマ劇場を作ろうとしていたのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

冒頭部分は、蜘蛛男の狂気を暗示するために、彼が犯行に使用する鋏が袋からこぼれ落ちたりする描写で、恐怖感を高めている。
現在のサイコサスペンスのような演出が珍しい。

後編では、映画スタジオやパノラマ館を舞台に、怪人蜘蛛男の動きを「オペラ座の怪人」のような雰囲気で見せている。

惜しむらくは、ずんぐりむっくりの体型に、いかにも朴訥としたしゃべりの藤田進演ずる明智や、間抜けそのものといった刑事たち(演技自体も稚拙)、気のいい小太りの中年男にしか見えない野崎役の舟橋元など、男性陣に今一つ魅力がなく、一人、蜘蛛男役の岡譲二の熱演が浮いてしまっているのが惜しまれる。

それでも、明智の妹、淳子をはじめ、何人もの清楚で美しい女優陣の登場は、今観ても十分楽しめる。

他の作品で、明智小五郎、金田一耕助、由利先生など、名探偵役ばかり演じていた岡譲二が、本作では逆に、名探偵と対決する怪人役に扮しているのも興味深い。

ちっとも名探偵に見えない、もっさりとした藤田進版明智も、珍品として観れば、それなりに愉快。
富士洋子が最初に誘拐されるシーンで、天津敏が、無愛想な農民役で、ちらりと登場している。