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憲兵とバラバラ死美人

1957年、新東宝、並木鏡太郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和12年のある夜、妊娠した若い女性が、金持ちの女と結婚するために、自分を捨てようとしている兵隊(後ろ姿)に恨みをいっているシーンから物語は始まる。
兵隊姿の男は、ためらいながらも、女と結婚するといい、女はその言葉に喜んで、近くの草むらに男と共に横たわる…。

後日、仙台歩兵第四連隊にある井戸で、異臭騒ぎが起こる。
井戸をさらった結果、首と手足を切断された若い女性の死体が発見されたため、部隊中騒然となる。

連隊内では、早速、荻山憲兵曹長(細川俊夫)を長として、犯人捜しに乗り出すが、憲兵特有の特権意識を鼻にかけ、県警から捜査協力を要請しに来た定年間近の老刑事馬渡(久保春ニ)をけんもほろろの態度で追い返す始末。

しかし、一向に捜査の進展が見られぬまま時間ばかりが経過し、東京から腕利きの憲兵、小坂徳助(中山昭二)が派遣されて来る事になる。

二人は、地元の縄張り意識を最初から計算して、独自の捜査を開始する。
馬渡刑事も、小坂の人柄に惚れ、協力を約束する。

面白くないのは、荻山曹長たち。
事件の前夜、井戸の水音を聞いたという証言者が現れるに及び、一人の兵隊に目星をつける。
それは、かねてより女癖が悪いと評判の炊事班長、恒吉軍曹(天知茂)であった。

萩山は、自白を引き出すために、恒吉に徹底的な拷問を加えはじめる。

しかし、小坂は、独自の推理で、近所の病院の井戸から、被害者の首と手足を発見し、その歯の治療痕から、被害者の身元をあぶり出す事に成功した。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

タイトルからも明らかなように、作られた当時は「エログロ路線」を狙ったキワモノ作品だったのだろうが、今観ると、しごくまっとうな犯人捜しのミステリードラマだと感じる。

実話がベースになっているらしく、小坂の捜査手順は合理的である。
それだけでは、面白みが足りないと判断したのか、本作では、小坂が推理のヒントを得るシーンで、怪奇味(小坂だけの想像)が加えられていたり、小坂と高山と、彼らが宿泊する飲み屋の姉妹(高山の幼馴染み)との、ほのかな恋愛話がユーモラスに加えられているのが見どころ。

後半は、満州に話が飛び、黒のソフト帽と背広姿といった粋なスタイルの小坂が、拳銃片手に、「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長ばりに、真犯人を追い詰めるアクションシーンのサービスもあり、娯楽作品としてはそれなりにまとまっているのではないだろうか。

憲兵にしては、人柄が温厚で律儀、周りの人間からも慕われる小坂のキャラクターは、後年のキリヤマ隊長役ともダブり、中山昭二氏にとっては得な役柄だったと思える。

一方、後年は温厚な役柄が多かった細川俊夫氏の憎まれ役、さらに拷問を受けるだけの天知茂など、意外な役回りには、少々、戸惑いを感じないではないが…。

あまり「エログロ」「キワモノ」などという先入観で観ないようにすれば、それなりに楽しめる娯楽作だと思う。
登場する当時の女優陣の清楚な美しさを見るだけでも、十分価値はあるだろう。