TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

怪人二十面相

1954年、松竹大船、江戸川乱歩原作、小川正脚本、弓削進監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

第一部 人か魔か?

シルエットでひげとマスクを取る男の姿

警官が窓が開いている屋敷に気づき中をのぞくと、縛られて床に転がされた住民を発見、すぐに笛を吹く。

警官隊が出動し、新聞社でも取材していた記者(手代木国男)から電話がかかってくる。

それを受けたデスクが、怪人二十面相が現れたと聞き、今度は誰に化けたんだ?と聞くが、それが分かっていたらとっくに捕まってるよ!…と送話口を塞ぎながら、記者は呆れて罵倒する。

明智先生はアメリカに外遊中だった。

その間、僕たち少年探偵団でしっかりやろう!と小林少年(細谷一郎)が他の団員たちを前に演説をしていたとき、飛び込んで来た羽柴荘二(多々井雄三)少年が、兄さんが中京から帰って来るんだと知らせると、演説を邪魔をされたとふくれていた小林少年も喜び、皆で迎えに行こうと提案する。

そんな団員たちの様子を、明智の助手の高安玲子(藤乃高子)も、皆にお菓子を振る舞いながらにこやかに見つめていた。

羽柴博士(山形勲)の家には、銀座で美術商をしている竹馬の友の大鳥(日守新一)が遊びに来ていたが、そこに、博士の末娘の早苗ちゃん(熱海サチ子)が挨拶をしてやって来ると、母親(水上令子)から頼まれた壁にかかっていた長男荘一(沼尾釣)の写真を、大鳥に手伝ってもらって降ろすと、荘一の部屋を元通りに直していた母親の元に持って行く。

大鳥は、戦死したと思っていた羽柴博士の長男荘一が今日帰って来ることを知って、我がことのように喜んでいたが、用事があるのでと、歓迎会出席を断って帰って行く。

それを見送った羽柴博士は、玄関に飾ってある鎧に手紙が置かれているのに気づき、中を読むと、慌てたように出かけることにするが、運転手の松野(小林和雄)に車を用意するのが遅いと叱りつける。

それを見送った早苗ちゃんは、荘一兄さんが帰って来るのに、どうしてお父様は怒っていらっしゃるの?と聞く。

母親は、お忙しいからよと、困ったようになだめる。

原子力委員会の委員たちを呼び集めた羽柴博士は、怪人二十面相が、自分が発明した超原子炉の設計図を盗みに来るとの予告文を見せ、善後策を考えていたが、今、下手に設計図を移動するのはかえって危険であり、警備は党委員会の方で警察に連絡するので、羽柴博士は、普通通り、ご子息の歓迎パーティを開いてくれと言う結論になる。

小林少年ら少年探偵団は、羽柴博士が荘一と一緒に車に乗り自宅に帰って来るのを、音楽のテープを回して歓迎する。

パーティに参加した委員会の会長は、警視庁から呼び寄せた中村捜査係長(須賀不二男)を羽柴博士に紹介する。

荘一は、隣に座った玲子に飲み物のグラスを手渡そうとするが、玲子はうっかり取り落としてしまう。

その時、玄関ブザーが鳴り、召使いが出てみると、電報であった。

その電報を手渡した配達人(磯野秋雄)は、誰からの電報だと思う?怪人二十面相からだよと笑って帰る。

中村捜査係長が中を確認すると、「今夜12時 約束のものを受け取りに来る」と書かれてあったので、羽柴博士に、パーティの中止を依頼すると、非常警戒態勢を敷く。

松野は、俺がやっつけてやる!と張り切って、イスを振り上げ、床に叩き付け壊してしまったので、観ていた女中から呆れられる。

温室前に集合した少年探偵団たちは、モグラ取りを庭にしかけようと準備していたが、その様子を観に来た中村捜査係長は、今夜は探偵ごっこじゃないんだ。この屋敷の一室に集まっていなさいと注意する。

その頃、応援の警官隊や噂を嗅ぎ付けた新聞記者たちが、屋敷に集合して来ていた。

小林少年は、一応団員たちにモグラ取りを仕掛けさせると、すぐにここに集まるよう指示を出す。

羽柴博士と荘一は、一緒に、エジプトのミイラの棺なども飾られた、設計図が納められた金庫のある書斎で待機していたが、羽柴博士は、お前がいてくれるので頼もしいと喜んでいた。

温室前に再集合した少年探偵団たちは、ガレージ脇の部屋に移動し待機するが、小林少年と羽柴荘二は偵察に出かけることにする。

深夜の12時、書斎の電話が鳴り出すが、荘一は居眠りをしているようだったので、羽柴博士が怖々と取る。

すると、ただ今ちょうど12時です、約束のものをいただきますという声が聞こえて来たので、羽柴博士は戸惑うが、その時、目の前に立ち上がった荘一が「本当です」と言いながら、銃を向けて来る。

「荘一!気でも狂ったのか?!」と驚く羽柴博士に、「気が狂うのはそちらでしょう。日赤の送還名簿に載っていた名前は偽物です。荘一さんは、終戦後、河南省の東で戦死しました」と言いながら、変装を解いたのは、跳ね上がった太い眉に、右頬に大きなほくろがある怪人二十面相だった。

小林少年は、荘一少年に手伝ってもらい、二階の様子を覗いてみるが、その時、二十面相が羽柴博士に銃を突きつけている所を発見する。

荘二少年は、直ちに笛を吹いて異常事態を知らせる。

それに気づいた中村捜査係長が書斎に駆けつけると、イスに縛られていた羽柴博士を発見する。

一方、庭に降り、逃げかけていた二十面相は、少年探偵団が仕掛けたモグラ取りの一つに足を挟まれてしまい、足を引きづりながら逃げ惑うことになる。

小林少年と二手に別れて庭を探していた荘一少年は、二十面相に肩を撃たれ倒れてしまうが、その場に駆けつけて来た玲子によって救護される。

警官隊の照明が庭に当てられる。

小林少年は、危険な状態になったと判断、他の団員たちを一カ所に集合させる。

運転手の松野も張り切って庭を探していたが、その時、池に足を取られ、引きづりこまれてしまう。

警官たちは、塀にかかった縄梯子を発見するが、駆けつけて来た中村捜査係長は、池に落ちたと言い、濡れ鼠になった松野に気づくと、風邪でも引いたらいけないので、袱を着替えて来るように言う。

書斎では、苦心の設計図を盗まれた羽柴博士と、生きていたと思っていた息子の荘一が偽者だったことを知った妻が慰め合っていた。

そこへやって来た中村捜査係長は、大鳥と言う人物が今日のパーティに出席しなかったそうだが?と質問するが、羽柴博士は、彼は竹馬の友なので怪しいものではないと答える。

屋敷の外も警戒していた中、外へ逃げ出したとは思えなかったが、怪人二十面相はこつ然と姿を消し、どうしても朝まで見つからなかった。

中村捜査係長は、縄梯子を引きずっていた二十面相に会ったと言う松野の証言を聞いて、首を傾げていた。

小林少年は、一旦、団員たちを解散し、外で張っていた新聞記者たちも諦めて帰ることにする。

その後、荘二の怪我の様子を観に来た小林少年は、玲子と荘二を、松野運転手に頼んで病院まで送ってもらうことにする。

庭に出て来た中村捜査係長は、池の側で立っている小林少年に気づき、何をしているのかと聞くと、小林少年は、二十面相がかかったモグラ取りは、この池の中にあると思いますと言いながら目を凝らしていた。

その時、池の中から突き出ていた竹筒が動いたのに気づいたので、中村捜査課長に教え、警官たちが池をさらってみると、竹筒の下に、マスクをかぶらされ、縛られた松野が発見される。

中村は、先ほど、荘二と玲子を病院に送って行った松野が二十面相の変装だったことに気づき悔しがる。

その頃、病院で傷の手当をすませた荘二と玲子は、又、二十面相が化けた松野が運転する車に乗り込んでいたが、大した傷じゃなかったのに、皆に観られるのが恥ずかしいと言う荘二の頼みを聞いた玲子は、明智探偵事務所が入ったビルの前で自分だけ降ろしてもらう。

かくして、荘二は、松野に化けた二十面相に誘拐されてしまう。

その号外を売っていた少年探偵団員の一人大野君は、ステッキを持った怪しげなを紳士が、号外をもらってすぐに捨ててしまったので怪しみ、紳士が乗った車の後をタクシーに乗って付ける。

そして、車が停まった近くの公衆電話から、明智探偵事務所の小林少年に連絡する。

小林少年が、そのビルの場所を聞くと、何と、この明智探偵事務所があるビルだと言うではないか。

その言葉を裏付けるように、ステッキをついた紳士が事務所に入って来ると、応対した玲子に、明智先生に財産管理のことに付いてご相談したいと言う。

玲子は、今、明智先生は外遊中で、いつ戻られるか分からないと言うと、紳士は、机の上に置かれていた明智からの航空便を観て、シアトルからですねと言うと帰りかける。

その時、何気なく近づいた小林少年は、紳士が差し出したステッキに足を取られ転んでしまう。

紳士は、階段だったら危なかったですねなどと言いながら去って行くが、小林少年は、今のは間違いなく二十面相で、こちらの様子を探りに来たに違いないと断定する。

ビルを出ると、紳士の乗った車は走り去っていたが、そのバックナンバーを控えて近くにいた大野君がその番号を小林少年に見せる。

そのバックナンバーは、松野が運転していた、荘二君の家の車であることに小林少年は気づく。

その後、その車は羽柴家の門を塞ぐように停められると、運転手は、別の車で走り去ってしまう。

駆けつけて来た松野は、邪魔になる車を動かそうとするが、キーが付いていないことに気づく。

警官は、車に貼られた怪人二十面相からの手紙を発見する。

そこには、少年探偵団のために、足をけがしてしまったので、園仕返しとして荘二君を預かった。一時間後、ミイラを取りに来るので、門を開けておくことと書かれてあった。

中村捜査係長は、羽柴博士夫婦の元に駆けつけると、自分も3人の子供の父親なので、心中お察ししますと慰める。

小林少年は、トランシーバーを使って団員たちに捜査を指示していたが、心の中では、一日も早い、明智先生の帰還を待ち望んでいた。

その後、予告通り、日通のトラックが羽柴邸の門の前に停まると、3人の男が、布の固まりを通り出し、ずかずかと屋敷内に侵入すると、書斎からミイラの棺を持ち出してしまう。

それを観ながらどうすることもできない中村捜査係長だったが、トラックが走り去ると、警官の一人が、置きっぱなしになっていた布の中から荘二少年を発見、ただちにトラックの追跡が開始される。

ところが、トラックは、同じ会社のものが5台停まっていた所に合流し、計6台になって走り始めたので、追尾していたサイドカーの警官は迷ってしまう。

そこに、中村捜査係長の車が到着し、事情を聞くが、どのトラックが目的のものなのか誰も分からなかった。

そうした中、二十面相の子分が乗ったトラックは林の中に到着し、そこの木箱の中の電話で連絡すると、崖の一部が入口として開き、トラックはその中に消えて行く。

待ち受けていた二十面相は、トラックでミイラを運んで来た子分たちに金を掴ませる。

そして、ミイラの棺を前にした二十面相は、俺はどちらかと言えば、超原子炉の設計図よりお前の方が好きだ。設計図は欲しがる奴がいるので盗んだが、お前は俺の趣味に合っている。5000年の歴史を観て来たお前に魂があれば、その声を聞いてみたいものだと独り言を言っていた。

すると、突然、棺の中から「二十面相、手を上げろ」と言う声が聞こえたかと思うと、蓋が開き、中から、銃を構えた明智小五郎(若杉英二)が登場する。

二十面相は、お前はアメリカにいるはずでは?と驚くが、明智小五郎は、悪いことが起きれば、朝はアメリカにいても夜にはこうして日本にいるのだと言う。

そして明智は、超原子炉の設計図は、日本人全部のものだ。盗むことと国を売ることは別々にしたまえと諭す。

すると、その言葉に打たれたのか、二十面相は返すと言い出し、棚に仕舞っていた設計図を取り出すと明智に手渡す。

明智は、いずれ警視庁から迎えが来るだろうと言いながら後ずさりしていたが、二十面相が、手すりの飾りを回すと、明智が立っていた床が落ち、明智は落とし穴に落ちてしまう。

気がつくと、その地下室の一角から大量の水が溢れ出していた。

二十面相がバルブを開いて、明智を水攻めにしようとしているのだった。

第二部 巨人対怪人

小林少年は、雲の中を歩いている夢を観ていた。

どこかへ向かう明智先生を追っているのだった。

ふと夢から覚めると、無線機の前でうたた寝をしていたことに気づくが、無線機からモールス信号が聞こえて来るのに気づく。

明智先生からに緊急信号だった。

解読した小林少年は、明智先生が発信しているのは、高井戸の松林公園からだと知る。

それを知った玲子は、直ちに小林少年に警視庁へ連絡するよう頼む。

落とし穴の中で水攻めにあっていた明智小五郎は、いつの間にかビニールの防水服を着ていた。

小林少年からの電話を受けた警察は直ちに警官隊を出動させ、高井戸の屋敷にいた二十面相は、テレビ受像機で、到着した警官隊の様子を観ると、マイクを通じて、屋敷内にいた子分たちに配備に付くよう命ずる。

子分たちは、扉や窓をバリケードで塞ぐと、外に向かって銃を乱射し始める。

それに対し、警官隊は発煙筒を投げ、その煙幕にまぎれて、徐々に屋敷に近づく。

現場には小林少年と高安玲子も駆けつけていた。

屋敷の中にも催涙弾が投げ込まれ、二十面相や子分たちは苦しむ。

二十面相はもはやこれまでと観念したのか、第二のアジトへの引っ越しを命ずる。

二十面相は外に向かい、攻撃をやめないと明智の命がないぞと放送するが、それを聞いて躊躇した中村捜査係長に、小林少年は、明智先生は不死身なので攻撃を続行するように進言する。

中村捜査係長は屋敷内への突入を命じ、それに続いて、玲子や荘二少年、小林少年も続くが、3人は屋敷の中の一室に閉じ込められてしまう。

その間、怪人二十面相は急いで変装をしていた。

部屋を脱出した小林少年は、二十面相の書斎と思われる部屋に来ると、手すりの飾りをうっかり回してしまう。

すると、背後に立っていた荘二が落とし穴に落ちてしまう。

その中をのぞいた小林少年と玲子は、水に浸かった明智小五郎が、落ちて来た荘二少年を支えている所だった。

急いでロープを下ろし、まずは荘二の方を助けた小林少年と玲子は、続いて明智先生を助け出す。

その時、二十面相を捕まえたぞ〜!との声が聞こえたので駆けつけてみると、それは、身代わりになったコックを警官が捕まえていたことが、明智の指摘で分かる。

明智との再会を喜んだ中村捜査係長は、明智から超原子炉の設計図を渡されると驚く。

外に出た明智は、小林少年と荘二少年を車で屋敷まで送らせると、しばらく玲子と歩き始める。

そして、土産として、玲子にパールのネックレスをプレゼントするのだった。

喜んだ玲子だったが、近くの道を走り去る車を見とがめる。

明智もその車を怪しみ、指笛を吹くと、近くで待機していた運転手が明智の車を乗り付けて来る。

すぐさま、その運転手から運転を交代した明智は、単身、逃げる車を追跡する。

逃げる車は、やはり二十面相が運転しており、やがて、富士山が見える場所へ来ると、車を乗り捨て、草むらの中に逃げ込む。

その直後に到着した明智小五郎もその後を追い、滝壺の近くまで二十面相を追いつめる。

立ち止まって振り返った二十面相がポケットに手を入れたので、明智も油断なく、ポケットの中の拳銃を握りしめるが、二十面相がポケットから取り出したのは手帳だった。

明智小五郎!箱根で大事な仕事を妨害したのはお前だな?火星行きロケットの設計図事件を妨害したのもお前だな?と、過去の失敗例をメモしたものを読み上げる。

今回も又邪魔をした。俺はお前をやる為にわざとここへ連れて来たのだ。ここは地獄の一丁目だ!と言う二十面相に、明智はつかみかかって行く。

二人の格闘は続いていたが、やがて、滝壺の上に追いつめられた明智は、足を滑らせ、水の中に墜落してしまう。

その後、伊豆の修善寺に、明智小五郎が来訪したとの新聞記事が載る。

その情報を新聞社に流した旅館の主人が、庭で休んでいた明智に断りに来るが、明智は、こんなことをされては休養にならないなどと言いながらも特に強い抗議はしなかった。

不思議なことに、その明智の右頬には、大きなほくろがあった。

明智は、この近くに羽柴博士の研究所があるそうだね?と聞くが、旅館の主人は、地元の有力者しか知らないことだが、研究所ではなく、参考資料が保管されているだけらしいと教える。

その山間の廃工場のような場所を警護していた二人が、慌てたように管理人左門(竹田法一)の所に駆け寄って来て、二十面相が来ると言い出す。

何事かと、資料が保管されている倉庫の前に来た左門は、鍵がかかった扉に、二十面相からの予告状が貼ってあることに気づく。

驚いた左門は、新聞で読んだ明智小五郎が近くに逗留していることを思い出すと、早速、その張り紙を持って会いに出かける。

すぐに承知した明智は、その後、沼津署の近藤刑事と大川刑事と称する二人を伴なって
車で廃工場にやって来ると、資料が保管されている倉庫の前まで左門に案内させる。

明智は、刑事たちに中を見張ってもらうからと言い、左門に鍵を開けさせる。

中に入った刑事二人が、資料のは言った箱を持ち出して来たので、これはどう言うことかと左門が驚いていると、明智は、変装を解き、怪人二十面相の正体を明かすと、銃を突きつけて、左門と二人の見張りを倉庫の中に閉じ込めてしまう。

明智の自宅で卵焼きを焼いていた玲子は、表から車のクラクションの音が聞こえて来たので、明智先生が帰宅して来たことを知り、小林少年や荘二少年と一緒に飛び出す。

すると、やはり、元気そうな明智が、小林少年の誕生日用ケーキを取り出してみせる。

明智は、屋敷の近くで佇んでいる怪しげなバタ屋(磯野秋雄)に気がついていた。

小林少年、荘二少年、玲子と明智先生のささやかな誕生パーティが始まるが、明智先生は、今そこでうろついているバタ屋は怪しいと言い出す。

朝早くならともかく、こんなに暗くなってまだいるのは変だと言うのだ。

小林少年は、二十面相の手下ですか?と緊張するが、明智先生は子供たちを不安がらせないように、ピアノを自ら弾き始める。

やがて、バタ屋は、明智の自宅の玄関まで来て、明智のことを罵倒し始めたニコヨン風の男に注目する。

男は、出て来た明智にあれこれ文句を言っていたが、中に入ると、急に態度を変える。

実は、その男は、明智に頼まれた赤井寅三(大宮敏)だった。

赤井は、明智と目で合図をし合うと、又怒鳴り合う芝居をし、外に自分から放り出された芝居をする。

とぼとぼと帰る赤井に声をかけて来たバタ屋は、近くの墓に誘い込むと、どう言ういきさつか事情を聞く。

赤井は、明智のお陰で丸3年ムショにぶち込まれ、その間に女房には逃げられるし、子供はのたれ死にしたと噓の身の上話を聞かせる。

しかし、それを真に受けたバタ屋は、10万になる良い仕事があるから、今夜もう一度ここへ来いと誘う。

赤井は、急にバタ屋を親分!と持ち上げ、自分は夜までここで待っていると約束すると、バタ屋は自分が食べていたあんぱんの袋とタバコを手渡し帰るだった。

その頃、第二のアジトにいた二十面相は、情婦のサリー(草間百合子)に、これからは片っ端にやっつけるんだと息巻きながら、原子委員会のメンバーたち全員に送りつける脅迫状を準備させる一方、明智の秘書の高安玲子を生け捕りにする計画を打ち明けていた。

その後、車で明智の自宅にやって来たサリーは、依頼人を装い、明智と会うと、夫が原子力委員会の委員をやっており、二十面相から脅迫状が届いたので、これから一緒に自宅まで来てもらえないかと頼む。

明智は快諾し、サリーの車に乗り込むが、その車の後部バンパーには、小林少年が底に小さな穴を開けたペンキ館をぶら下げて待ち構えていた。

車が走り去った後、明智の自宅に戻った小林少年は、事務所の近くにいた大野君からかかって来た電話で、玲子姉さんが変な奴らと出かけたことを知る。

夜、墓に戻って来たバタ屋は、待っていた赤井に銃を手渡すと、一発でばらせよと命じ、10万円を手渡す。

そこに、明智を乗せたサリーの車が近づいて来たので、前に飛び出し車を停めた赤井は、明智を外に出すと、拳銃で殴りつける振りをする。

バタ屋が驚いて、やるんだと迫ると、赤井は殺しを10万では安すぎる。100万出せと銃を突きつけて来る。

その時、車に乗っていたサリーも赤いに銃を向けるが、物怖じしない赤井は、サリーの銃とバタ屋の銃も取り上げると、アジトに連れて行けと命じる。

一方、ペンキ缶から漏れた白いペンキの跡を追って来た小林少年や団員たちは、ペンキ缶が落ちていたのに気づき、仕掛けを見破られたかもしれないと不安がる。

その時、近くの木が揺れたので、少年たちは怯えるが、姿を見せたのは明智先生だった。

小林少年は、玲子姉さんがさらわれたことを教えると、ペンキ缶の仕掛けも失敗だったと悔しがる。

しかし、明智は落ち着いた様子で、敵の巣窟はすぐ分かるようになっている言い、子供たちを慰めるのだった。

赤井は、アジトの屋敷前まで来ると、10万と銃をバタ屋に返し、中に入れと命じると、一人帰ってしまう。

二十面相は、捕らえて来た玲子に、明智の所にいるよりも俺の所へ来ないか?パリでもロンドンでも好きな所で贅沢をさせてやるぞと口説いている所で、明日は、羽柴早苗も誘拐して来るんだとサリーに命じていたが、そこに戻って来たバタ屋が、あのニコヨンが明智の相棒だったんで作戦は失敗した。そもそもばらし賃が10万は安いと思ったんだなどと報告したので、怒った二十面相は、受け取った10万でバタ屋の頬をはたくと、第3のアジトへ引っ越しだと告げる。

世界一キャラメルの宣伝カーにキャンペーンガールに化け乗り込んでいたサリーは、景品をもらいに乗り込んで来た羽柴早苗を掴むと、そのまま宣伝カーを出発させる。

その周囲に集まっていた子供たちは、訳も分からず、さらわれて行く早苗ちゃんを見送るしかなかった。

第3のアジトに連れて来られた早苗ちゃんは、二十面相から、字は書けるだろう?手紙を書けと命じられるが、毅然と断る。

部屋に閉じ込められた早苗ちゃんだったが、その部屋に、縛られていた玲子姉さんの姿を見ると、喜んで近づき、縛られていた布をほどいてやる。

玲子姉さんは、怖くない?と心配するが、早苗ちゃんは、少年探偵団に入ったから怖くないと答える。

そんな早苗ちゃんに、隠し持っていた鳩を手渡した玲子は、手紙を鳩の足に結びつけると、窓の隙間から空に放つのだった。

飛び立って行く伝書鳩。

第三部 怪盗粉砕

第3のアジトから、サリーは無線を使って、明智小五郎に連絡をしていた。

設計図は防波堤の端に置け。時間は夜の10時半と言う連絡だった。

その通信の最中、小林少年は、鳩が戻って来たことに気づき、明智の元に持って来て、芝浦の付近と書かれた玲子の伝言文を教える。

その間、無線の返事が急に途絶えたことを不振に感じたサリーと二十面相は、故障か?故障だったら、直ちに修理せよとの指示を出し続けていた。

その間、明智と小林少年ら少年探偵団は、故障直った!と通信をしながらも、電波探知機を使いながら芝浦の海から小型艇に乗り込み、二十面相の第3のアジトの倉庫を突き止めていた。

岸壁に上がった小林少年たちは持って来た縄梯子を使い、二階の部屋に閉じ込められていた羽柴早苗ちゃんと高安玲子を無事外に救出すると、そのまま小型艇で岸壁を離れ、待ち受けていた警察の巡視艇に手旗信号で人質救出を知らせるのだった。

巡視艇が近づいて来たことを知った二十面相は、部屋に閉じ込めていたはずの人質の二人にまんまと逃げられたことにはじめて気づき悔しがると、屋上へ逃げる。

サリーも一緒に逃げようとするが、屋上のドアを閉めた二十面相は、裏の階段から逃げろと冷たいことを言い残す。

屋上からあがっていたいたアドバルーン広告を観た二十面相は、その下に吊り下がったゴンドラに乗り込むと、綱を切り、空へと逃亡する。

それに気づいた警官隊は、アドバルーンを追跡し、とある砂浜付近で落下したのに気づくとその場に駆けつけて来る。

しかし、ゴンドラの中にいたのは人形と置き手紙だけだった。

その手紙を読んだ警官は、二十面相は途中で落下傘を使って脱出していたことを知る。

置き手紙には、あくまでも超原子炉の秘密設計図はもらうぞ。黄金の塔もろともと書かれてあった。

中村捜査係長と明智小五郎は、ショーウィンドウに、超原子炉の設計図が隠してあると言う黄金の塔が飾ってある銀座の大鳥美術店の主人大鳥に事情を聞きに来るが、黄金の塔に近づこうとすると非常ベルが鳴る仕掛けが施してあるし、ウィンドウの鍵も、自分と親父の代から勤めている門野支配人(明石潮)の二人しか持っていないと説明する。

10月22日の日めくりカレンダーをめくる二十面相

その日、店員が大鳥美術店の表戸を外すと、ガラス戸に大きく「5」と言う文字が書かれてあることに気づく。

大鳥は門野に明智事務所に連絡をさせ、その電話を受けた明智は、何事かをメモに書き、側で控えていた玲子に見せる。

10月23日の日めくりをめくる二十面相

大鳥美術店のガラス戸には、その朝も「4」と言う数字が書かれていた。

新聞記者が明智探偵事務所に取材に来ている時、当の明智は警護の依頼に来た大鳥と面会していた。

しかし、明智は、原子力委員会の委員たちの人命を守ることを優先したいので、警護は警察に頼むのが本筋だと言い、断る。

落胆した大鳥は、今夜から自分が店に泊まり込むことにすると説明する。

そのことはすぐさま新聞に載り、その記事を読んだ二十面相は、今度こそ奴に一泡吹かせてやると喜ぶ。

その日、店に戻って来た大鳥は、行儀見習いの娘(御室蘭子)だと言い、一人の娘を店員たちに紹介する。

その娘にまかないを任せた店員たちは、徹夜の見張りを始める。

10月24日の日めくりをめくる二十面相

しかし、その日の朝、大鳥美術店のガラス戸には何も書かれていなかったので、喜んだ店員たちが、寝ていた大鳥に知らせに行くが、布団に起き上がった大鳥は、自分の右手のひらに「3」の書かれているのに気づき仰天する。

一方、荘二少年と共に靴磨きの姿に化けた小林少年は、銀座で仲間の団員たちに、空き家を探すように命じると、自分たちも大鳥美術店の裏道に様子を観に行く。

すると、明智先生が予想した通り、工事中の空き家があったので、二人はその場で外国人を呼び止めると靴磨きを始め、空き家の様子を監視し始める。

間もなく、土砂を中から運び出していた空き家から、見張り役らしき男が出て来たので、小林少年と荘二少年は、その場を一旦離れることにし、明智先生に、やはり穴を掘っている。先生の推理通りだったと報告する。

それを聞いた明智は、二十面相に負けるくらいなら、少年探偵団の小使いさんにしてもらうと言い笑わせるのだった。

大鳥の店にやって来た羽柴博士は、あの設計図はどうせ写しなので、盗まれるくらいなら焼き捨ててしまおうと言い出すが、そのときどこからともなく、あの黄金の塔だけでも、数百万の値打ちがあると言う声が聞こえて来る。

幻聴かと怯える羽柴博士だったが、大鳥の方は、これでも銀座で商売をやっているのだから、おめおめ泥棒などに負けられないと意地を見せる。

しかし、そんな大島も、壁にかかれた「2」の数字を発見すると驚き、門野を呼びつけると、例のものはできたかと聞く。

大鳥は羽柴博士に、実は今、黄金の塔の偽物を作らせており、本物は床下に隠し、ショーウィンドウには偽物を飾って行くつもりだと打ち明ける。

その頃、二十面相の手下たちは、裏の空き家から大鳥美術店の奥座敷の真下まで穴を掘り進めていた。

偽物の黄金の塔が完成し、店に持ち込まれた後、仕掛け屋が来て、黄金の塔が置いてある奥座敷の中のスイッチを入れると、鉄の扉が閉じることを大鳥に説明して帰る。

その後、大鳥は、門野と共に、本物の黄金の塔を床下に隠しかけていたが、そこにあの女中見習いが丼ものを二つもって入って来たので、大鳥はあわてて叱りつけ下がらせようとする。

その時、「火事だ!」と言う叫び声が聞こえ、台所から火の手が上がっていることを知った大鳥は、消化器を持って来いと叫ぶ。

門野と二人で奥座敷に戻って来た大鳥は、床下に、ちゃんと黄金の塔が置いてあるのを確認し安心するが、気がつくと、部屋においてある方の黄金の塔の上に「1」の数字が書かれた紙が置かれているのに気づく。

明智は小林少年に、忍者でもなければ、あの奥座敷に忍び込むことはできないはずだと説明していた。

それを聞いた小林少年は、先生、分かりました!と目を輝かせるのだった。

いよいよ、二十面相が予告をしていた10月25日になり、警視庁では、中村捜査係長が部下たちに檄を飛ばしていた。

その頃、アジトにいたサリーは、無線を使い、ヘリコプターや外国船の手配をしていた。

その電波は小林少年によって傍受されており、サリーが話した内容は、全て明智先生の知る所となる。

明智先生は、サリーが準備している道具立てから、設計図を奪った二十面相は、バイクを使いヘリコプターの所まで逃げ、そのヘリで外国船まで飛び、その船に乗って海外へ脱出するつもりなのだろうと予想する。

小林少年が、少年探偵団は全力を挙げて、二十面相の逃亡を妨害しますと決意を述べると、明智先生は、その通りと言い、微笑むのだった。

呼び集められた少年探偵団の団員たちは、ただちに、ヘリの待つ場所の周囲に、タイヤをパンクさせる剣山のような仕掛けを作って置いたり、落とし穴を作り始める。

その夜、大鳥、門野と共に、大鳥美術店の奥座敷で待機していた中村捜査係長は、予想された夜10時に後5分だと告げる。

すると、どこからともなく、二十面相に不可能はない。そこにあるのは偽物だろうと声がしたので、慌てて、門野に床下を開けさせてみると、中はもぬけの殻だった。

驚いて中を覗き込んでいた大鳥は、床下からサングラスをかけた男が出て来たので肝をつぶす。

しかし、サングラスを取ったその人は明智小五郎だった。

奥座敷に上がって来た明智は、飾ってある方の塔を、これが本物だと言い、屋根の一部を削ってみせる。

すると、それはまさしく本物の金だったので、大鳥は仰天する。

屋根を取り外すと、設計図が仕舞われていたので、まさしくこれこそ本物の塔だったことを知る。

明智は、この女中が、台所で火事騒ぎを起こし、皆が奥座敷から出て行った隙に、本物と偽物をすり替えておいたのだと説明する。

それを知った大鳥は感激し、明智さんから援助を断られた時は正直、腹が煮えくり返り、小林少年から女中を雇わされた時も悔しかったが、今こそ、自分が浅はかだったことを知ったと不明を恥じる。

明智は、とんでもないと大鳥をなだめると、門野に向かい、二十面相君、そろそろ正体を現したらどうかねと言い出す。

狼狽する門野支配人と大鳥。

気がつくと、女中の顔は、いつの間にか高安玲子に戻っていた。

腹話術は僕にもできるんだよと言いながら、明智は、どこからともなく、本物の門野君をどこに隠したと言う声を響かせると、仕掛けのスイッチを入れ、奥座敷の鉄扉を閉じてしまう。

そして、門野に飛びついた明智がかつらをはぎ取ると、その下から現れたのは怪人二十面相その人だった。

正体がばれた二十面相が床下に飛び込むと、明智も後を追う。

その頃、少年探偵団の団員たちは、協力して、ヘリコプター脇で待機していた操縦士を捕まえていた。

そうとも知らず、トラックでヘリコプターの待機場所に近づいて来た二十面相の子分たちは、少年団が仕掛けた罠でタイヤがパンク、慌てて逃げ出した所を、かねてより仕掛けてあった紐に引っかかったり、落とし穴に落ちて、全員捕まってしまう。

二十面相は、車でその場所にやって来るが、小林少年を後ろに乗せ、明智小五郎もバイクで駆けつけて来て二十面相を追いつける。

警官隊もその場所に集結して来る。

二十面相と明智は、取っ組み合いを始めるが、羽柴早苗ちゃんも加わった少年探偵団全員がヘリコプターの前に立ちふさがると、退路を断たれたと悟った二十面相は、子供らに銃弾を浴びせ始める。

団員の一人が、パチンコでその銃を弾き飛ばすと、二十面相はナイフを取り出す。

小林少年は、得意の投げ縄を二十面相に引っ掻け、二十面相は紐がついたまま海に飛び込んでしまう。

駆けつけた中村捜査係長が、その紐を引き上げるよう命じる。

バイクで明智が近づいて来ると、小林少年が二十面相を捕まえました!と報告する。

明智小五郎は、ごくろう少年探偵団万歳!と声を上げ、海面には、海の中の二十面相に繋がっているはずの紐が見えていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

お馴染みの「少年探偵団」ものだが、明智小五郎役には若杉英二が扮している。

全体的にテンポも良く、明智の助手、高安令子役の藤乃高子も清楚な美人なのだが、惜しむらくは、馬面の二十面相が今一つ迫力不足。

4、5人のちんぴら風の部下から「親分」と呼ばれ、情婦(?)サリーもいるという、ごく普通の下品なギャング以上の存在には見えないのだ。

変装なども、芸人が芝居のメイクをしているようにしか見えず、神秘感がまるでない。

小学生である探偵団に対し、本気で拳銃を撃って傷つけたり、ナイフをちらつかせたりするあたりの行動も、大人気ないというか何と言うか、小もの感丸出しである。

もぐら取りで、自身が怪我をさせられた事に対して、探偵団を恨む…などという展開も、情けないというしかない。

逆に、大人同士の対決、二十面相対明智の一騎討ちの場面では、迫力のないパンチの応酬しかなく、腰の引けた二十面相のアクション表現には興醒めしてしまう。

二十面相の本拠地で落とし穴に落とされ、さらに水攻めにされる明智が、何故かしっかり、ビニール製の防水服を持っていたり、同じく、二十面相の手先に捕ら えられた玲子が、これ又、どこから取り出したのか、伝書鳩を持っていたり…とか、御都合主義も極まれり…という辺りが御愛嬌というべきか。


無線を使って明智と取引条件を打ち合わせしているサリーや二十面相が、突然相手が返事をしなくなったことを怪しみ燃せず、故障か?故障か?を連発し、まんまと電波を逆探知した明智らに人質を奪い返されてしまう辺りは、あまりにも間抜けと言うか、滑稽な怪盗と言うしかない。

続編である「青銅の魔人」では、特撮シーンも満載で、怪獣めいた巨大生物まで登場するサービスを見せているのは、ひょっとすると、この作品の同時期に公開された「ゴジラ」に子供たちの話題をさらわれたことへの反省があったのかもしれない。


「バタ屋」とか「ニコヨン」と言った、今では死語になった戦後風俗語が登場する、いかにも古めかしい「子供騙し」映画として、鷹揚な気持ちで観るのが良いのかも知れない。