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江戸川乱歩の陰獣

1977年、松竹、江戸川乱歩原作、加藤泰脚本&監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

人気本格探偵作家、寒川光一郎(あおい輝彦)は、変格派と称して最近売れてきた同業者の大江春泥と名乗る作家を嫌っていた。

自作「湖畔亭事件」の映画化視察を兼ね、京都への講演旅行をすませた後、書店の前で、うなじに傷跡のある美貌の婦人と身体をぶつける。

その婦人は、小山田六郎(大友柳太郎)の妻、静子(香山美子)といい、寒川の大ファンであるという。
これをきっかけとし、急速に二人の間は接近して行くのだが、ある日、静子は、大江春泥なる人物は、自分が若い頃に付き合って別れた男であり、最近、しつこく脅迫を受けていると告白する。

寒川は、編集者の本田(若山富三郎)と協力し、何とか、人嫌いでほとんど世間に姿を現さない大江を捜しはじめる。

そうこうする内に、今度は、亭主の六郎を殺害するとの大江の手紙が静子の元へ。
家内の様子に精通している、その脅迫状の内容から察する所、大江は家の中に潜んでいるに違いないと静子はおびえる。

その言葉に従い、屋根裏を捜査してみた寒川は、屋根裏に足跡とちぎれた一つのボタンを発見する。

やがて、一銭渡船の乗り場に六郎の屍骸が浮かび上がる。
何故か、彼は裸で、しかも、頭にはかつらをかぶせられていた。

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

加藤泰監督独特の映像美が堪能できるなぞ解きもの。

寒川の独白から映画は始まるのだが、その声だけ聞いていると「あしたのジョ−」を思わず連想してしまう。(その主題歌でお馴染みの尾藤イサオも出演している)
主役を演ずるあおい輝彦は、本作の前年に大ヒットを記録した角川映画第一弾「犬神家の一族」での、有名なキャラクター佐清(すけきよ)&青沼静馬でもある。

同じく、若山富三郎は「犬神家の一族」では、磯川警部役。

そうしたキャスティングから考えても、本作の企画には「犬神家の一族」&横溝ミステリーブームに便乗したような部分もあったのかも知れない。

昭和初期の時代描写などにも、そういう意識は感じられるのだが、やはり、乱歩と横溝では、かなり雰囲気は違う。
市川崑版金田一ものでお馴染みの、分かりやすい残虐趣味などに比べ、本作は、全体的にゆったりしたテンポやけれん味の大人しさ、倒錯性癖趣味などの異質性もあって、公開当時は、あまり興行的に奮わなかったのではないか。

今、当時のブームなどとは離れて観てみると、地味ではあるが作品として決して悪い出来ではないように感じる。

細部にまで神経が行き届いた丁寧な仕事振りが楽しめる。
香山美子、野際陽子、加賀まり子、倍賞美津子ら、多才な女優陣の登場も見物。