TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

望楼の決死隊

1943年、東宝映画、山形雄策+八木隆一郎脚本、今井正監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和10年頃、朝鮮と満州の国境、甲緑江の朝鮮側を守る南山駐在所に、新任の浅野巡査(斉藤英雄)が赴任してくる。

満州の討伐隊が追い詰めている匪賊たちが、冬、凍結した川を渡って、こちらに侵入するのを防ぐため、地元民の協力を得て、駐在所の補強工事をしている最中だった。

日本人の杉山巡査(清水将夫)、熊沢巡査(鳥羽陽之介)、朝鮮人の金巡査(泰藁)、そして、高津主任(高田稔)も交えて、その夜は歓迎会のような夕餉となる。

しかし、その直後、警邏に出かけた金巡査は、王竜(菅井一郎)が経営する食堂双龍軒で三角巾で片腕を隠した見なれぬ客を発見、連行しようとしていきなり相手から発砲され、医療の心得のある高津主任の妻、由子(原節子)の看病も間に合わず帰らぬ人となる。

京城で学生生活を送っていた金巡査の妹英淑(金信哉)は、兄の墓参にやって来るが、唯一の肉親を失い途方にくれている姿を見兼ねた柳(沈影)が、自分の田地を売って、彼女を助ける決意を高津主任に告げる。今際の際の金巡査から、妹の事を頼むと言い残されていたからであった。

高津主任の元には、郷里の熊本に住む兄からの電報が届き、母親が危篤であるとの知らせを受けるが、匪族の侵入の危険性が増す結氷期を前にして内地に帰ることは出来なかった。

そんなある夜、望楼の見張りを終えた新任の浅野巡査が、ちょっとした気のゆるみから銃を暴発させてしまう。

それを知った高津主任は、懲罰の意味もこめて、杉山巡査との江岸警備に浅野巡査を付かせるが、当の浅野巡査は警備隊の激務に耐えかね、辞めると言い出すのだった。

そんな浅野を根気よく諌める高津主任であったが、明けて正月、いよいよ、河が凍り付いた頃、王竜の元に、長年家を出たまま帰らなかった息子の王虎(佐山亮)が突然舞い戻ってくる。

その王虎を尾行して来たらしき仲間の発砲で、王竜は死亡。
妹、王燕(三谷幸子)は、はじめて会った兄を恨む。

捕まえた王虎が匪賊の仲間らしいと察した高津主任は、万一のため、林巡査(田沢二)に弾薬補充と応援部隊を本庁に頼みに行かせたるが、その直後、恐れていた匪賊たちが氷った河を渡って大挙して村に押し寄せてくるのであった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

朝鮮を日本が植民地として支配していた時代のプロパガンダ映画である。

この作品で夜盗のように描かれている匪賊というのは、朝鮮側からいえば、独立闘争部隊の事である。

日本側の論理で作った作品だけに、植民地支配を正当化するため、この作品内で、日本人と地元の朝鮮人たちは仲良く理解し合えているように描いてある。

基本的に、日本人への不満分子はいないことになっているのだ。

地元の小学校では、朝鮮人の子供達に日本語を教えているし、地元民たちも、駐在所内では皆、日本語を話している。

柱に「国語常用」という貼り紙がしてあったりする。

一応、新任の浅野巡査が一人前の警備隊員として成長する様を縦軸として描いてあるが、実際には高津主任をはじめとする他の人物たちのエピソードの方が印象的なので、浅野巡査自身は意外と影が薄い。

原節子は、警官の妻らしく、献身的な働き者という役所。

朝鮮総督府の後援で作られているだけに、ロケは全て実際の朝鮮で撮られているようだ。

美しくのどかな朝鮮の風景が印象に残る。

クライマックスの攻防戦は、西部劇でも観ているような感じで描かれている。